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曽我物語外伝 奥州再乱  作者: かんから
兼任の戦い 文治五年(1189)秋末
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第三章 第二話

 ここで兼任は決断した。高館跡に全兵を集め、宣言した。



「これより、我らは多賀の国衙へ攻め入る。」



 苦渋の決断だった。国衙には鎌倉軍がいる。我らの数は一万、鎌倉は五万とも十万とも聞く。しかしかつて千に満たないころ、万以上の敵を打ち破ったのだ。それを繰り返せばよいこと。

兵糧も多賀には豊富にあるだろう。鎌倉の物を奪えばいい。


 兼任の決断によって、士気は最高潮に達した。しばらく戦とご無沙汰だった兵らは手柄を立てるべく、我先にと先陣を願い出た。

加えて、“不敗神話”もあった。大河様のすることはすべて当たってきた。外れることはない。


 十月一日、大河軍は平泉を出た。一万の騎馬武者だ。兼任は馬上にて思う。


 これで、秀衡公の恩に報いることができる。憎き鎌倉め、滅びる時だ。大河軍は、南へ進む。

隣には息子の兼友かねともが侍っている。同じく馬に乗り、実に勇ましい姿である。先日、元服したばかりだ。こいつは将来、奧州藤原氏を継いで、王となる。それゆえ、白鬚公の娘婿になると決まっている。未来は明るい。


 これまで川を越え山を越え、激しい嵐をも物ともせず、すべて味方にしてきた。王者とはこうあるべき。


 しかし、たり得なかった。

  

…………弦が響いた。



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