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第三章 第一話
平泉の大河兼任に報告がなされた。鎌倉軍が多賀の国衙に入ったと。国衙は軍事力を持たないため、そのまま抵抗せず降伏した。
本来であれば、このまま南下して鎌倉と激突するところだ。しかしそうもいかない。平泉は先の戦い……源頼朝が踏み荒らして以降、焼け野原のまま。奥州藤原の兵として、一応の再建は必要である。
また、“北の兵”がまだ来ていない。渡島に到着次第、安東水軍が船団に乗せて奧州に達する手はずになっていた。
が、思い通りにはいかず。
「……兵糧も、滞っております。」
一人の将が言った。
「後方からの知らせですと、今年は不作で拠出する分がないと。」
他の者が言う。
「それはおかしいだろう。夏は暑かったし、雨もしっかり降った。豊作のはずだぞ。」
「しかし……書状にはそう書かれております。」
彼らは、東日流や秋田をはじめ後方が鎌倉に寝返ったことを知らない。かといって後方も大河軍の力を認めていたので、直接戦おうとはしたくない。
そこで、大河軍へ順繰り送っていた兵糧を止めるという手段にでたのである。
「……このままでは、兵糧が尽きてしまいます…………。」




