表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
曽我物語外伝 奥州再乱  作者: かんから
工藤の企み 文治五年(1189)晩夏
10/77

第一章 第五話

 秋の初めごろ、高季ら東日流の諸将は十三福島城主の藤原秀栄ふじわらのひでひさに呼び出された。彼は旧主藤原泰衡公の伯父であらせられる。鎌倉の置いた代官が大河兼任おおかわかねとうに滅ぼされて以降、東日流では彼を中心としたまとまりが出来上がっていた。

 白鬚を蓄えた御姿は、亡き秀衡公を彷彿させる。その“白鬚公”は言った。


「すでに、お前達、存ずるだろうが……北からの、兵は……、一向に、期待できぬ。非常……に、言いにくき、ことであるが…………・」


 一人が応えた。


「わかっております。我ら全員、鎌倉の話を伺っておりますゆえ。」


 もう一人が応えた。

「鎌倉につけば自領安堵、大河殿は袋の鼠。心苦しいところはあるが、生き残るためだ。」


 皆、それぞれ頷いている。


「何も東日流だけではない。外ヶ浜や秋田も鎌倉に寝返るというではないか。ここは決まりだな。」




「ちょっと待て。」


 高季は止めた。


「兼任は無二の盟友である。ついさきほど、平泉だって奪還したではないか。多賀の国衙もこちら側についた。このままいけば、北の兵などいなくとも勝てる。我らの兵も加われば・・・。」



 白鬚公は憐みの顔。そして高季に言った。


「お前は、わしの娘の、婿になれ。そして、十三湊を、継げ。」

 



「はっ…………何をおっしゃる。」


 意味がわからない。


「兼任……は、滅ぶ。兼友……への、縁談も……なしじゃ。」



 傍らで家来の一人が言葉を被せる。


「丁度よかったではないか。安東殿には奥方がいらっしゃらない。」



 一同、大きく笑った。高季はこの様にこらえきれず、被せた奴を殴ろうとした。したのだが……できるはずがない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ