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名も無い物語  作者: 天駆真龍
第一章 物語の始まり
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第七話 迷い人と孤独な少女

 ……えっと。

楓「うん、作者。伏線は回収してよね?」


 楓救済フラグがかなり早い段階で建ちやがった!!


楓「いや~ここまで愛されるとはよ出せボケといいたいよ」

 くっそ、なぜここの楓はこんな毒舌なんだ……。

楓「いやいや、あれは本心だよ。ってか今後を考えるなら詠夜も愛されてるよね」

 ……もういい。ってか四分の一人前の俺にはもう大変。泣く表現なんてしらない。

楓「まだ何十章とあるからがんばれ!」

 うわぁ、われながらなんでこんなもんを……。

楓「妄想ではふわっふわな分多く想像できたんだろうね。ま、序の序の序だから諦めてくれないでよ?」

 五年はかかるなこれ……。


 人間には哀しい過去なんて必ずあるものだ。たとえそれが、他人からすればどれだけ小さなことだろうと。

 作者によって微妙な雰囲気になってしまったこの場は同じく作者によって元に戻された。

「まぁ、そんな理由だけど、事が起きるのは事実だし準備はした方がいいよ。あと、特異点関係で別世界から迷い込む者が増えるけど、宣戦布告されるまでは敵対しないように」

 私は先ほどの雰囲気に引きずられるなくその事を聞いていた。

 だが、準備なんて身体自体が兵器と同等の私たちが準備する必要性を理解できない。自らの世界でとはいえ最強を誇る私たちに負けなどないのだから。

「それじゃあ、ちょっと迷い人をお迎えにあがるとするから、まっててね?」

 しかし、それを問う前に作者は逃げるようにどこかへと音をたてて去って行ってしまった。


   ☆


『──逃げて、詠夜お兄ちゃん!』

 その声はどこで聞いた声だっただろうか?

 ……今の時代では古くさい自宅の日本屋敷だ。

 なのに、今いるのは全く理解できない夢うつつの空間に僕がいた。

「やあ、初めまして、というべきかな。霜月詠夜しもづきえいや)

 そこには独りの小さな女の子がいる。

 日本人本来の黒髪黒眼にベージュ色の肌、そして慣れないのに無理して着ているのがわかるほど雑な着物。

 髪は前髪ぱっつん、肩にとどくように切りそろえられたおかっぱ。目は感情が抜け落ちたと錯覚するが、確かに感情を宿す強い瞳だった。ただ、それらは可愛らしくも綺麗でもあったがベージュ色の肌にこべりついた、乾いた血の色が霞ませ、穢し、隠していた。着物にもその色はついていて、ところどころで破け裂けていることにより濃密な負を感じてしまう。

「話すこともないけど、ちょっとだけ話をしようよ?なにから話そうか──」

 だけれど、恐怖など、ましては忌避感など感じない。その目が好奇心に染まっていたのだから。無表情の奥に、無邪気な顔が浮かんでいたのだから。

 ……泣きそうな声で、話しかけてくるのだから。

「──ちゃんと話を聞いてよ! でね、それでね、おっきい木にみんなで登って、町を眺めたんだよ。なんか優越感に浸って、それじゃ降りようってなったんだけど、降りれなくて困ったんだよ。でも、最後には頑張って降りたんだよ!」

「そっか。よかったな、キレイだったか? 町」

「──すっごいキレイだったよ! ……うん。すごい綺麗だった」

 女の子は楽しそうに、哀しそうに、自分の事を語っていた。

 例えば友達と遊んだこと。例えば家族と旅行に行った事。例えば学校で修学旅行に行った事。

 「とても素晴らしかった」と言って笑う。

 しかし、女の子は決まって一つの話の最後にこう言うのだ。


 ──なのに、今思うとすごくつまらなくて価値が無いと思える、と。


 そんな女の子の頭を、ずっとなてでいた。安心させるように、優しく。

 女の子ののどからは嗚咽があふれ出し目には涙が溜まっていた。

 今までかみころしてきた分の嗚咽を、今まで流さなかった分の涙を、あふれ出そうとしていた。

「辛いなら泣けばいいさ。強くなんてなれないけど、溜め込んでちゃ、いざというときに漏れ出ちゃうだろ」

 不思議と言葉が出た。無意識に、けど確信をもってこれでよかったと思えた。

「ぅあ、ううぅぅ、ひっく、うう」

 詰まった声と涙はなかなか出ようとしない。

 僕は、ただ女の子の頭を優しくなでるだけだ。

「あぅ、ぅぅぅううう」

 けれど、女の子は嗚咽を、涙を出し続ける。

 そして、それは決壊する。


「──ぅぅぅぅぁぁあぁぁぁあぁああぁあああぁぁああああ!!」


 そんな女の子を見ながら、意識が薄らいでいく。

 あの女の子は、救われるのだろうか。

 もしかしたら死ぬかもしれないのに、名も知らない女の子を心配しながら意識はとぎれた。 

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