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名も無い物語  作者: 天駆真龍
第一章 物語の始まり
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第六話 作者の間抜けな行動理由

 ……僕は悪くない。

楓「……オリジナル」

 ……なんだい。

楓「一度死んでくれないかな?」

 断る。断固拒否する。

楓「はぁ、アドリブでやってるとはいえこれはひどくないかな?」

 事実を書いただけだよ。後の展開にも響かない。だから僕は悪くない。

楓「全く、結末さえもノリで変えるようなことはしないでよ?」

 わかったわかった。あ、今更だけどルビ振りだっけ? それができないから不便だよ。使いこなせなかったり、説明見てなかったりしてるから自業自得だけど。


 楽しいことって羽目を外して後悔したりするよね?ね?

「目的かぁ、別にあるわけでもないけど、一応の理由としてハッピーエンドがみたいから? あと適当に『ぼくがつくったさいきょうのきゃらくたー』もどきがどう行動するか見たいから?」

 作者は飄々とそう言う。

 しかし、美伊奈はそうは思ってなかった。

 美伊奈は作者を名乗るこの人物を『作者』として考えている。

 実際に運命を不可侵領域から紡ぎ、この世界の人物を虚構の人物として創り、どんな不条理不可能をひっくり返す『作者』本人と。

 だからこそ解せないのだ。直接関わってくることも、協力してくることも。

 作者を真の意味で『作者』ではないと考えるならあの疑問も納得できるが、それではそれ以上の疑問が生まれてしまう。

 なぜ誰も知り得ぬ情報を知っている? そのうえ、この作者という人物は未来予知じみた、いや実際に未来予知をしていた。それもずれがなかった。

 単に未来予知者と結論づけるのはたやすいが、一度美伊奈たちが「龍を仲間にする」という予知を回避するためいっそ殺してしまおうと結論づけ、全力を出したのに、殺しきれず契約による隷属でしか押さえられなかったのだ。

 戦闘能力では絶対の自信がある美伊奈たちが殺しきれないのがどうしても筋書き、プロット通りと考えてしまう。

 そんな人物がわざわざ関わってくるのに、恐怖を感じているのだ。

「そんな訳だし、ただの気まぐれだよ。だから安心していい。君たちは迫る危機に全力で対応すればいい」

「……本当に? せめて現実的にどういう理由で美伊奈たちに関わってくるのか聞かせて」

 美伊奈が聞くと作者は渋々と理由を話し始めた。

「すっごい引かれると思うからやめたかっただけどなぁ。……えっと、はい。端的に、管理不足でした。なんか脇役でいいから『作者』を出してみたいと思ったら、敵役で物語の中核にくいこみました……」

 その言葉で上辺だけでも緊張していた美伊奈以外の面々も、モチロン全力で警戒して、先ほど質問の回答が大げさだが今後の展開を左右すると思っていた美伊奈も固まった。

「あ、いや、一番最初はほんとに脇役だったんだよ? 戦闘能力皆無、能力使用不可、あるのは情報だけなのに、すごい展開がぶれてそれも参考程度にしかならないってかんじで。なのにいつからか三次元の「作者」の多面性がどうとか、「作者」の精神世界でしたとか、それが合わさって『作者』という存在は複数いるとか、その中にはこの世界が三次元の虚構にすぎないことに不満がある、調整者としての『作者』がいるっていうのができて、複雑化して、それ止めようっていう『作者』が私なんだよ……。理解できないよね?」

 本気でなんて言ってくる度に全員がある思いで支配されていく。


 こいつ、ぽんこつだ、と


「……うんわかった」

 こんなやつに警戒しているしているのが馬鹿らしくなって警戒を解いた。

「理解してもらって複雑な気分だよ。これからこの世界に迷い込む者が増えるけど、敵対されない限り友好的に接してよ?」

 そう言われた後、誰かが作者の部屋に逃げるように駆け込んだ音が聞こえた。

 ……悪いことしたかな。

 心の奥で美伊奈はそう思った。

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