第一話 気の抜けたリスタート
お、おかしい。スマホで二回フリーズするなんて……。
楓「さすがに私でも同情を禁じ得ないよ。やっぱりオリジナルは薄幸少年だね」
リア友に「お前は不幸になる運命なんだ」とか何回も言われたことあるし……。あ、楓の登場時期遥か先なのに、もう楓関係の伏線が張ってあるといっておこう。
楓「強引に話題かえたね。ちなみに紅我は現代知識に疎いから、拳銃を『けんじゅう』って言うよ。それよりもう伏線があるってことは、私は作者に愛されているというわけだね」
愛されているのと勝てることは違うけどな。
それでは物語をお楽しみください。
さて、物語を書いていくが、私は始まりを書くことが嫌いだ。というより、苦手だ。
世界観から書いていくか、主人公の主観から書いていくか、それとも第三者からの視点から書いていくのか。
どれから始めても恐らくお綺麗な文章は書けないだろう。
ただ、この物語を3次元でふんぞり返る貴様らを喜ばせる虚構で終わらせるつもりはない。
☆
「ん……」
天をも貫く大樹がある世界でたった一つの家の中で、色無紅我は目覚めた。
総人口が今は六人のこの世界では、当然「とけい」や「がらす」などはない。
それなのに家があるのは、作者を名乗る人物が色々助言してくれたからだ。
紅我は寝ぼけ眼で「どあ」を開け、「りびんぐ」にある「いす」に座る。
「おー、紅我今日は起きるのが遅いね」
そう女のような男の声が誰もいない場所から聞こえた。
この声の主が作者だ。
「そう言うお前はいつもより起きるのが早いだろ」
「明日から色々忙しくなるからね。準備してるんだよ」
「何の準備してんだ?」
そう聞くと、うれしそうに「ちょっと待ってて」と作者が言う。
作者は問答無用で自らと触れた物質を透明化させる能力をもっているので、
「見てよこれ! これ一人で作ったんだぜ!?」
と、恐らくつき出されている何かを目視できないのだ。
その事に気づいたのか、「あー……」とか「……えっと」と口ごもりながら「てーぶる」に何かを置いた。
「なんだこれ?」
それは、長方形の小さな紙のような物だ。
紙よりは分厚いが、それでも大差ない分厚さだった。
それについて、作者が誇らしげに説明する。
「これは『スペルカード』っていって、自分の技を保存できるんだ」
「でも、それだけならいらねぇだろ?」
その意見に待ってましたと言わんばかりにテンションを上げながら作者は話を続ける。
「まず、空中では使えない技が使える、技の威力が、私の体感で1.25倍になる。余談だけど、クッソ硬いから乱暴に扱っても壊れないよ」
「それは便利だな」
と言いながら、いつも怠惰な生活を続けるコイツがこれ程仕事する状況を危惧していた。
まあ、東側にある五つの個人部屋の一つ、騒がしい魔法使いの「どあ」が開くまでだが。