ブタ3
その日は、朝からバタバタしていました。
「今日はアイツが来るかもしれない。長期戦になってもいいように、食料を集めておこう!」
「連絡が取り合えるように、鳥を確保しておかなくてわ!」
仔豚たちはあっちでブヒブヒ、こっちでブィブィと、大忙しです。
でも、そんなこんなで、なんとかお昼ぐらいには大体の準備が整いました。
すると、ブタ三が、
「ん?何か聞こえない?」
と、言いました。
ブタ一とブタ二は、ジッと耳をすませました。
「豚肉♪焼豚♪トンカツ♪酢豚♪豚バラ♪ローストビ〜フ♪♪」
と、遠くの方から奇妙な歌が聞こえてきました。
「「「アイツが来たぁぁ〜!!!」」」
仔豚たちは真っ青な顔をして慌てました。
「来た!来た!来た!?来たの!?えっ?誰が!?来たの?おばぁちゃん?わぁ〜迎えに行かなくちゃ☆」
「お、落ち着けブタ三!来たのは、おばぁちゃんなんかじゃない!しっかりしろ!!」
ブタ一は、急いでブタ三を現実に戻そうとしました。
その横でブタ二は、
「おばぁちゃんだったらどれだけよかったか。・・・・・あっ・・・。でも、おばぁちゃんもう亡くなってるから、迎えに行くどころかつれてかれちゃうよ。」
と、遠い目をしてボソボソと呟いています。
「弟達よ!落ち着くんだ!僕達には避難すべき、すばらしい家々があるじゃないか!」
ブタ二とブタ三は、その言葉に、ハッとしました。
「そ、そっか。ボク達には家があるんだ。」
「じゃ、じゃぁ早く家に入ろう!アイツが来てしまう!」
仔豚たちは、いそいそと家の中に入っていきました。
その頃、仔豚たちの方向へ向かっている影は、肩あたりで結ばれた髪を揺らしながら楽しそうに歩いていました。
足には、この場所には相応しくない、透明でキラキラした硝子の靴。
頭には、トレードマークの赤い頭巾。
もちろん、性別は女。名前を・・・・・・赤美。
そう、あの赤美ちゃんです。
今日は、赤美ちゃんの誕生日なのです。
赤美ちゃんは、今夜のご馳走の為に豚を狩に来たのです。
赤美ちゃんの手には、豚を縛る為のロープがしっかりと握り締められています。
「フッフッフッ。さぁ、今日は何匹捕まえようかしら。豚はやっぱり、丸焼きが一番美味しいから大きいのを1匹は捕まえないとね♪」
赤美ちゃんは、口の端を上げてニヤニヤしながら、ロープをバシバシ鳴らして仔豚たちのいる方へどんどん進んでいきました。
さて、仔豚たちの運命は・・・!?