n番煎じのバッドエンド
「死ぬ?死ぬ?死んだ?」
くすくす笑う少女。
可愛らしい顔が醜く歪む。
手には不釣り合いな大振りのナタ。
俺の血で真っ赤に染まったそれに俺の影が映っていた。
「ねぇねぇ、死んだの?死ぬのー?」
ツンツンと俺の体をナタでつつく。
何でこんな事になったんだっけな。
体に力が入らない。
血を流しすぎたせいで力が入らないのだ。
俺は俺が作った血だまりの中で最期を迎えるのか。
無邪気な無邪気な邪悪な少女。
俺の血よりも綺麗な赤の髪が揺れる。
同じ色の瞳が俺を映して輝いていた。
憧れたのがいけなかったのか。
憧れすら持ってはいけないのか。
何で何で何で何で。
勇者なんていなくて、最強にはなれなくて、英雄には届かない。
俺が死んでもまた別の誰かが俺の代わりになる。
「つまんないの」
興が冷めたと言わんばかりに呟く少女。
俺に背中を向ける。
退屈そうに肩を落としながらナタを引き摺っている。
勇者にも英雄にもなれないならば、最強になれなくても一矢報いるくらいなら。
「…か、はっ」
綺麗な赤い少女は黒い黒い血を吐いた。
俺は笑う笑う。
これで最後だと。
ともに最期を迎えようと。
エンドロールには程遠い場所で。
銀のナイフを片手に握った俺は、それを振りかぶり再度その背に突き立てた。
黒に染まる衣服。
少女は赤の瞳を見開いて百八十度首を回転させた。
見た目は愛らしいのに、台無しじゃないか。
少女は少女ではなく、RPGでいうモンスター。
そして俺はn番煎じの偽勇者。
刺し違えてでも殺せばいい。
死んでも俺の代わりはいるんだから。
最期は笑って終わろうか。
赤と黒に染まった視界で俺は眠る。