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●第六十話 決戦に向かう前に


 そして――佑真が何気なく放っていた一言は、彼らの絆が成す業か、真実となっていた。


 全くの同時刻。

 波瑠・無機のコンビは直立戦車や警備ロボットの群集、アストラルツリー手前に敷かれた最終ライン突破のための交戦を繰り広げているところだったのだ。


「《氷結地獄(コキュートス)》!」


 波瑠が手をかざす。対歩兵用実弾式機関銃を波瑠へと突きつけていた無数の直立戦車だったが、銃弾は一発も放たれることが無かった。

 熱量増加を抑え込むマイナス方向へのエネルギー制御《氷結地獄(コキュートス)》。


 波瑠の母親、天皇真希の凍結能力の十八番であるが、それを側で幾度も見てきた波瑠はここにきて連発する機会が増え、ついに自分の物とした。

 しかし、熱量増加を押さえ込んで防げるのは銃火器のみ。


 機関銃でない別の砲台の照準が突きつけられ、カッ、という閃光とともに、音・爆発を起こさない静かな破壊光線が炸裂した。加速粒子砲――光速に迫る猛攻が放たれる前に飛び退き紙一重で回避、そのまま上昇気流で波瑠は雪空を舞い上がる。


 同時に巻き上がる、足元にうんざりするほど積もった積雪。

 粉雪が直立戦車らの視界(?)を塞ぐ。サーモグラフィーによる敵感知も、質量のある雪を巻き上げるだけである程度の阻害には充分だ。


氷結地獄(コキュートス)》を一時的に解いた波瑠の手が焔を伴い一閃。地面に火球の連弾が突き刺さり、小型警備ロボットが成す術もなく次々と爆散する。


「はあああああっ!」


 次々と創造する氷の槍を戦車へと叩き込む。中空を飛びまわる波瑠を狙う砲口に的確に突き刺して無力化。爆発は起こらない――ふたたび起こす《氷結地獄(コキュートス)》のせいで(おかげで)、爆炎が上がらないのだ。


「無機さん、ラストお願い!」


 地に降り立った波瑠は鞭状の水流を生み出し、直立戦車に片っ端から打ちつける。攻撃力はなく、装甲に当たると弾けてしまうのだが――波瑠の役割は、戦車を『充分に濡らす』ことだ。


「SET開放。」


 静かにSETを起動させる無機亜澄華。戦闘慣れしていない軟弱な体を波動が包む。

 両手を勢いよく交差(クロス)し、直後。


 戦車にかけられていた液体のエネルギーが解放される。

 轟音と衝撃が、豪雪の闇夜で爆ぜた。


 零距離爆発の衝撃で、戦車の装甲は大きなへこみや破損を見せながら機能を停止させ、あるいは薙ぎ倒されていく。地鳴りのような響きに耐えつつ、波瑠は無機の能力の威力に感嘆の息を漏らした。


 無機亜澄華の超能力《液状爆破(オーバーハイドロ)》は、単純に言えば、液体を爆発させる能力である。

 金城神助(コードブレイク)しかり、黒羽美里(ブラックプロージョン)しかり。

 物体の保有するエネルギーに干渉する能力であることに変わりはないが、無機は『液体のみ』『エネルギー解放による爆発しか』行なえない。その応用性の狭さから、超能力ランクはあまり高くないのだ。


 有能とは言い切れないが、彼女は超能力者ではなく科学者であり、研究者である。

 本分でない超能力は、この程度の性能(スペック)で許容範囲内だ。


「無機さん、相変わらずすごい破壊力だね」

「破壊力だけ。ね。雪姫ちゃんがいるから役立っているだけで、普段は何にも使えないわ。」


 そっけない態度でSETを早速収束させる無機。

 彼女の言う通り、波瑠が大立ち回りを見せて攻防のほとんどを担っているから成せる技であって、無機一人では戦車を濡らすことすら敵わない。

 波瑠も同じくSETを止め、アストラルツリーを真っ直ぐに見上げた。


(やっとたどり着いた)


 五年前の因縁の場所。

 あの頃の自分はまだまだ未熟で、妹を守ることもできなかったけれど。


(絶対に桜を【神山システム】から救い出すんだ――――!)

「雪姫ちゃん。それじゃあ早速、行こう。」


 ――――あと一歩を踏み出す前に。


「待って、無機さん」


 波瑠は無機の手首を掴んで、歩み出そうとした彼女を引き止めた。


 ――――どうしても、伝えなきゃいけないことがある。


 仏頂面に疑問符を浮かべている無機に、きちんと向かい合った。


「……あの、無機さん。私、ずっと言いそびれてたことがあって……、アストラルツリーに行く前に伝えてもいいですか(、、、)?」

「……。どうぞ……?」


 敬語に切り替えたせいか、無機が一瞬眉をひそめた。敬語を使え、とずっと言ってきたのは彼女の癖に、いざ使えばこの反応だ。……いや、この三ヶ月間ずっとタメ口を利いていた波瑠が悪いのだけど。

 ちょっと頬が緩んだ。


「正直なところ――私、一度だけ、無機さんのことを恨んだことがあったんです」

「当然よ。私は、妹ちゃんをあの状態へ誘った、張本人なんだから。」

「はい。私はまさに、その理由で無機さんを恨みました。『あの人が変な提案しなければ』『あの人が【神山システム】なんか作らなければ、私の妹があんな目にあうことは無かった』……そこまで、考えました」


 無機の表情が、珍しくはっきりと悲痛に歪む。

 弁解するという意味でも、波瑠は言葉を止めなかった。


「でも、すぐに思い出しました。無機さんも私たちと同じ、天皇劫一籠の計画の被害者だって。抱いていた夢を、せっかく作った【神山システム】を悪用されて――大切なものを何個も奪われた。私とおんなじです」

「……違う。私は、雪姫ちゃんから、妹ちゃんを奪った。」

「わかってますから、今は私の話を聞いてください。……そもそも、無機さんは悪い人じゃない。初めて会った時から私たちにすごく優しく接してくれたし――五年前の言葉、私はまだ忘れてませんから」


――――……。雪姫ちゃん、ごめん。私、必ず取り戻す。あなたの妹を、必ず取り戻すから。だから、今はゆっくり休んでて。この責任は、必ず果たす――――


 涙ながらに告げていた無機(あなた)の言葉は、波瑠(わたし)の中に刻まれている。

 この言葉があったから、波瑠(わたし)無機(あなた)を信じてこれたんだ。


「無機さんは約束を守ろうと頑張ってくれた。五年もの間、桜と私のためにずっと一人で戦ってくれた無機さんを、私は恨んじゃって……そこは、ごめんなさい」


 ぺこりと頭を下げる。謝ることじゃない、という予想通りの返答が聞こえた。

 だから、波瑠は顔を上げる。

 柔らかく暖かな――誰もが弛緩するほど、魅力に溢れた笑みを浮かべて。


「私は無機さんと出会えて、すっごく嬉しかったです! 桜のために五年も頑張ってくれて、ありがとうございました!」

「…………。」


 無機は無言ですたすたと波瑠へ近づき、


「あうっ」


 なぜか――デコピンを繰り出してきた。

 ええ!? と額を擦りながら顔を覗き込んだ波瑠の驚きが――喜びに変わる。

 あの無機の頬が、赤く染まっていた。

 あれだけ無表情なお姉さんが照れている。

 なんだか、嬉しくてたまらなかった。


「全く。まだ救い出してもないのに、お礼は気が早いわ。私は過去の罪を償っているだけ。お礼を言われる筋合いもないし。」


 わざとらしい咳払いから、背中を向けたまま無機がまくし立てる。珍しく声音が強い。気持ちを誤魔化したいのかな、とはっきり見せる人間味に、波瑠は笑顔を崩せない。

 無機がここまで動揺したのは初めてで、ようやく自分に全部をさらけ出してくれたみたいで――――


「いい? 本番はむしろこれからなんだから。気合い入れなさいよ、波瑠(、、)!」

「……えへへ。はい、無機さん!」


 ――――そして、名前で呼んでくれて。

 波瑠はもう一度、強く誓う。

 無機のために。自分のために。そして何より――最愛の(さくら)のために。

 五年がけの決着をつけるべく、二人はアストラルツリーへ突入した。



   ☆ ☆ ☆



 キャンピングカーという『足』を奪われ、月島具は戦力とならない傷を受け、土宮冬乃と木戸飛鳥も疲労困憊――そんな状態でありながら、【FRIEND】はアストラルツリーを目指していた。


 さすがに怪我を負った具を連れ回すのは(足手まといになる、という意味でも)無理があったので、現在は冬乃、飛鳥、つぐみの三人で行動している。

 徒歩、しかも五分に一度は激震の走る【メガフロート】地区の現状がどうなっているかは検討もつかない。三人は極力の戦闘を避けるべく、生島つぐみの感知能力《集結の片割(アグリゲイトパーツ)》を頼りに街中を進んでいた――の、だが。


 つぐみが受信した、とある一人の超能力者は。

 隠れることもせず堂々と、冬乃たちへ向かって一直線に歩を進めていた。

 体一つで、溢れて止まらない闇のような波動を纏った金髪の怪物。荒廃した街中の物陰に隠れている飛鳥達だが、その緊張感は計り知れない。


「(ど、どうしますか、冬乃ちゃん!?)」

「(……一か八か、逃げる?)」


 戦う、という思考は最初から出てこない。

 敵は対超能力者ならば無類の強さを発揮する、全日本頂点のNo.1だ。一パーセントでも生存の可能性が残っている『逃げる』を選びたいのは山々だが、


「(でもリーダー、今物音立てたら気づかれてアウトじゃないです! やり過ごすのが一番かと! 敵がいくら集結(アグリゲイト)といえど、見つかりさえしなければ――)」


「見つかりさえしなければやり過ごせるかもしれない――っつーフラグ立てでもしてんのかは知らねェが、土宮冬乃と木戸飛鳥、そして失敗作(、、、)。テメェらがこの近くにいるってこたァわかってんだよ」


 つぐみの囁き声を上書きする、悪魔の言葉。

 ハッタリか――それとも、事実か。

 その真偽を確かめる間もなく。

 闇の波動が鞭を模し、飛鳥達の真横のビルを叩き割った。


「「「――――ッ!?」」」


 轟音とともに崩れ落ちる地上二十階相当のビル。降り注ぐ瓦礫を各々で回避しながらSETへ手を伸ばし――同時に、三人ともが絶望を覚えた。居場所は本当にバレていた。

 そして各員の距離が、意識せず五メートル以上ずつに分断されてしまったことに。

 闇夜より黒い波動をさらに噴出させる集結(アグリゲイト)の口角が上がる。悪党そのものの穢れきった笑みを直視する余裕ある者はいない。


「失敗作、どォしてテメェの能力が《集結の片割(アグリゲイトパーツ)》っつー名前になってんのかを忘れたとは言わせねェぜ?」


 声の標的はつぐみ。粉塵の中、集結(アグリゲイト)がつぐみを見ているとも限らないのに、体は小刻みに震え出す。


「『能力付与計画(アポステリオリ)』――その中でも別格として区別されていた『第一位複製』。この俺様の能力演算領域を解析し、精神構築能力によって新たな《集結(アグリゲイト)》を生み出そうとした胸糞な計画において、強引に演算方式を植え付けられた実験体が数体、今も現存している」


 つぐみの本能が直感しているのだ。すでに奴の標的が己に絞られている、と。


「その内一つの失敗作(じっけんたい)、それが生島つぐみ、テメェの能力だ! テメェができる『登録した波動の追跡』はこの俺にもできるに決まってんだろォが!」


 叫ぶ集結(アグリゲイト)の手のひらには、つぐみと同じ、波動を感知する黒い球体が浮かび上がっていた。


(わかってますよそんなこと! そもそも移動しようがしまいが、生き残れる確率は一パーセントに満たないんだ! じっとする以外の選択肢、端ッからなかったんです!)


 粉塵の中を駆け回るつぐみは、黒い球体で冬乃たちの居場所を感知する。

 幸いまだ集結(アグリゲイト)に接近された様子はない。バラバラになる不安はでかいが、このまま逃げ切ることだけに専念すれば――奴の注意が自分に向いている限り、二人が生き延びる可能性が残されている。


「さァて雑魚共、楽しいゲームを始めようぜェ!」


 両腕を広げた彼の周囲を闇の波動がせり上がる。竜巻のように渦を描く流線形の波動の中央、狂喜に禍々しい笑みを浮かべる集結(アグリゲイト)


「ってもどうせテメェらは俺へ攻撃してこねぇんだろ? 知ってるよああ知ってるとも。この俺が強すぎッから、テメェらは俺を攻撃できねェ。仕方がねェから、先手は打っといてやるよ!」


 一閃。

 集結(アグリゲイト)がすべての波動で鉄槌を放つ。

 周囲の建造物が問答無用に叩き割られた。


 瓦礫が舞い、ビルが倒壊し、轟音とともに地獄が生み出されていく。

 破壊を狂気に楽しんでいるのか、怪物は額に手を当て体を揺らし――灼眼が、好奇に光る。


「ああいい。ホンットウにいいねェ、この『破壊』っつー感覚は。気に食わねェモンを跡形も無くぶっ壊す爽快感! 病み付きになる癖になるこの世界すべてぶっ壊したくなる! だが残念だ、無機物をぶっ壊しても俺の欲求は満たされねェ。やっぱ、」


 トッ――と、集結(アグリゲイト)の一歩が踏み出された瞬間。

 闇の波動が爆裂し、地面がめり込むほどの衝撃(インパクト)で跳躍。

 常識外れの速度で跳んだ集結(アグリゲイト)の体と波動が突風を巻き起こし、冬乃や飛鳥の体をピンポン玉のように吹き飛ばす。


「ひ……い、や……」


 そして――闇の波動で創られた真っ黒な翼を背に生やした集結(アグリゲイト)の手が、つぐみの顔面を捉えていた。翼、といっても神話上の天使が生やすような美しいものではない。ただただ彼の背後に伸びる、集約された闇の塊。


「生物を殺すのが、一番面白ェよな」

「つぐみちゃん!」「つぐみ!」

「ああ、この表情だよ。死を直前にして絶望にうちひしがれ、最後の希望を探そうと必死に視線を彷徨わせる純粋な『恐怖』! ハハハハハ! やっぱどんな生物よりも人間が最ッ高だな! ここまで感情を表してくれっと、殺し甲斐があるってもんだ!」


 集結(アグリゲイト)の腕が薙がれる。

 波動を吸収され尽くし、生命活動を終えたつぐみの無防備な体が弾丸に迫る速度で地面へ叩き落された。追撃するように、集結(アグリゲイト)の背に生えた闇の波動が鋭利に形状化、その切っ先でつぐみの身体を八つ裂きに仕留めた。

 飛鳥達に聞こえてきた音は、脳が拒絶した。


「あ、あぁ……つぐみ、ちゃ」

「安心しろ。次はテメェの番だ木戸飛鳥。一瞬で終わらせてやっから、今はせいぜい最期の時を楽しみな」


 漆黒の翼を開いて飛鳥の眼前まで現れる集結(アグリゲイト)


(くそ……躊躇していて勝てる相手じゃないッ!)


 飛鳥はポケットより『薬物』を取り出すも、

 それを飲む暇もなく、集結(アグリゲイト)の毒手が飛鳥の頭を捕らえた。


「何をするつもりか知らねェが、あんま余計なことすんなよ? 抵抗すればするほど、テメェの死体が悲惨なモンになっちまうだけだぞ?」


 バラ、と足元に小さな薬物が散る。集結(アグリゲイト)はそれに一旦視線を降ろしたが、興味なさ気に容赦なく踏み潰した。

 漆黒の翼が数十本もの鋭利な刃を模し、飛鳥の身を貫く――ほんの寸前。


「あすかッ!」

「――――?」


 集結(アグリゲイト)の視界を、純白の光線が突き抜けた。

魔陣改析(ゾーン・デュナミス)》を展開した冬乃の『消滅』の光線は漆黒の波動によってせき止められ、なぜかかき消されてしまったが、一瞬でも拘束を緩める役割は果たした。

 あァ? と集結(アグリゲイト)の視線がそれる。

 その一瞬で、近距離を生かして拳を叩き込む飛鳥。

 しかし、拳が集結(アグリゲイト)の不健康な体に突き刺さることは無く。


「……なん、で……」


 一発目に叩き込んだ右腕も、追撃の左腕も、どちらも彼の周囲を取り巻く波動が蛇のように絡みつき、捕捉されてしまった。

 先ほど、集結(アグリゲイト)は飛鳥を見ていなかった。

 飛鳥の殺人を邪魔した怒りからか、冬乃へと視線を向けていたはずなのに。

 まるで自衛でもするように、闇の波動が拳と体の間に割り込んできたのだ。


「あー、悪ィ悪ィ、言い忘れてた。俺、こんな体でも近接戦闘ができねェってわけじゃないんだわ。残念ながら《集結(アグリゲイト)》は、無意識下でも危険を感じりゃ自衛本能が働き、波動で勝手に俺の体を守っちまう。でないと俺程度の身体能力じゃ、銃弾で撃たれてジ・エンドだろ? 世界最強っつーのはそういうことなんだわ」

「冬、乃ちゃ……ん…………逃げ、て……」


 飛鳥の力が抜ける。ひざが崩れ、そして全身が力なく地面へ崩れ落ちる。

 480人以上の波動を集結した波動が、より一層莫大に爆ぜる。


「俺とテメェらは、最初ッから立っている次元が違うンだよ」


 ――その光景を見て。その言葉を聞いて。

 尚、戦意を抱くとすれば。



「あす、か……ぁ、ァア、あ、ああアああアアアアああああああああああアあああアアアあああアあああああああああああアアアアアあああああアアアアああアアああああアあああアああああアああああああアアアアアアアああああああアアアあアアアアアあああアあ!!!!!」


 大切な人を殺された激情以外、何一つ残されていない――――!



 土宮冬乃の額――《神上の成(ゴッドブレス)》が、漆黒の輝きを放つ。

 彼女の『(マイナス)』の感情に呼応し、純白の波動――天使の力(テレズマ)が、高位相より引き出される。

 かつてない戦意――殺意を向けられ、しかし集結(アグリゲイト)はにぃ、と口の端を釣り上げた。

 次元を超えて出現する止め処ない純白の力が圧縮され、やがて何百もの球体と化した。


 当人たちは気づかない――その一つ一つの球体がかつて、天皇波瑠が暴走した際に山一つをかき消した際のそれと同等の破壊力を宿していると。


「あなたは、殺す……何が何でも殺すんだから――ッ!!」


 幾百本もの破壊光線が、集結(アグリゲイト)へ放たれた。

 孔雀の羽のように広く龍のように長く神々しく輝く、逃げ場のない全方位同時攻撃。自然を一瞬で消し去る威力の兵器が、集結(アグリゲイト)の闇の波動と追突する。


 白と黒――相反する猛攻がビルを吹き飛ばすほどの莫大な衝撃波を生み出し。

 両者の咆哮が天へと吸い込まれる。

 雲海を押しのける衝突の決着は、果たして。

 480人分の闇の波動が光線を押し潰し、終幕を迎えた。


「惜しい。実に惜しかった。久々に骨のある敵と戦えて俺ァ嬉しいぜ。だが、まだ俺には足りない。テメェ程度の憎しみじゃ、この俺には届かない」


 衝撃波が吹き止むと同時に静まる路上。

 荒都と錯覚したくなるような光景には、三人の少女の死体が無造作に散っている。

 しかし、破壊と殺戮を繰り広げた男は返り血一つ浴びていない。

 集結(アグリゲイト)は漆黒の球体を手のひらに浮かび上げる。


「次は《静動重力ハイローグラビティション》でも行くか」



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