●行間 十文字直覇さんによる前座のコーナー
ほんとお待たせしました!
間章【雪姫の追憶編】を更新していきます。一話目からこんなんですが、ふたたびよろしくお願いします!
※現在改稿作業中につき、この章のお話だけ設定に齟齬が存在してしまっています。実際に読む分にはほとんど支障はありませんが、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。飛ばしても問題ないかも……。
実質第三章のスタートでっせ!
やあやあどうも、読者の皆さんお久しぶりです。
え? ボクが誰かって?
やだなぁ。ボクだよ、十文字直覇だよ。ハルにゃんを救う過程で尊い犠牲となり太平洋へ墜落して、命を失った女子高生。ハジメマシテとは言わせないぜ。
――さて、わざわざメタな世界観を作り出して唐突にボクを登場させたことに、疑問を抱いている読者様も多いだろう。
ボクが登場した理由は一つ。
これから始まる短い物語について、少し説明を添えておかないといけないからだ。
誰が説明をするか? 三人称でいいのではないか? などと多くのアイデアがあったことは確かだ。こういうメタ演出を嫌う人はとても多いし、まして『これが奇跡の零能力者』はギャグ系ではない、ガッチガチのバトルもの。すべきでないことは作者も理解しているさ。
それでも、ボクが、愛するハルにゃんに関わる事例だと聞いて、頭を下げて出番をもらったんだから。このメタゾーンにも少し付き合ってくれ。ストーリーテラーだとでも思ってさ。
天皇家。
第三次世界大戦中において、超能力発動端末【SET】を開発し、全世界を上回る戦闘力を発揮。実質的に休戦まで導いた家、というのが表向きの評価だね。【太陽七家】でも特に中心核に存在し、おおげさかもしれないが、世界の大きな流れを掌握していると言えるかも知れない。
裏側では、十二種類の《神上》をはじめとした非科学の研究が主軸なわけだが、そこは割愛とさせていただこう。
我らが愛するヒロイン、ハルにゃんはそんな家に生まれた。
――少し話は逸れるが、《超能力》というものには、実は遺伝子が関係している。
SETによって導き出される《超能力》が同じ系統になる、という傾向にあるんだ。
あくまで傾向だけどね。
血筋において得意な能力系統が等しい家を、『名家』と呼んだりすることがある。
振動系能力に長ける『三日月家』や光操作に定評のある『神童家』など、上げればキリがない。【太陽七家】の各家も大体はこんな傾向にあるね。ま、脳を構成する細胞だって、突き詰めれば両親の受精卵――DNAからできているんだ。当たり前といえば当たり前だよ。
だが、超能力に恐るべき適応力を発揮した天皇家は、異端だったのさ。
各人、一つの能力が異常に長けている。
しかし、その系統に統一性は見出されなかった。
ボクなりに表現するならば、『共通点が一切ないという点において共通している』かな。
ハルにゃんの能力はいわずもがな、『エネルギー変換』という異常な応用範囲を持つ《氷山の豪炎舞》。
ボクの知り合いにいる天皇舞って人は、『流れを操る』という二癖はある能力《絶氷の風斬撃》。
少なくとも、ハルにゃんとの共通点はどこにも見出せないだろう?
舞ちゃんは今は置いておくとして。
ハルにゃんが初めて能力を使用したのは、わずか三歳の時。親に言われ、身につけたSETによって『凍結』を発動させたのさ。
しばらく実験的にいろんな形でハルにゃんの能力が解析され、そして『エネルギー変換』だと判明した直後から、ハルにゃんは「天才だ!」ともてはやされるようになったのさ。
そのままハルにゃんは順調に《氷山の豪炎舞》を自分のモノとしていくわけだけど……はてさて、そんなハルにゃんには、同じく天才能力者の血を継いだ妹がいる。
彼女の名は、天皇桜。
彼女は、本物の「能力者」だった。
本物ってどういうことだ、だって? 説明はちゃんとするから、ご静聴願いますよ。
――――《超能力》を発動するプロセスには、SETによって『超能力演算領域』を活性化させる、というプロセスが存在する。
ではもし。
もしも、『生まれつき超能力演算領域が活動している』場合、その人は常に《超能力》を使用することが、可能ではないだろうか?
これはイフの話をしているのではないことを、読者の皆さんに知ってもらおう。
生まれつき《超能力》を身に宿す、純度百パーセントの超能力者の存在。
現実に、そのような人間は、第三次世界大戦後、世界中で観測されるようになった。
『超能力演算領域を一度でも活性化させたことのある両親』――言い換えれば、超能力者を両親に持つ子供に、このような傾向が多く見られるようになったらしいぜ。
そのような子供は、『原典』と呼ばれている。
1000000人に1人の割合でしか生まれないそうだ。
天皇家は言わずもがな、全員が超能力使用経験を有している。
そんな両親を持った天皇桜が、「超能力を常に使える状態で誕生しても」、なんらおかしいことはない。
桜ちゃんは一歳の頃から、トレードマークであるアホ毛より青白い火花を弾かせるようになった。両手をかざせば稲妻が走り、電化製品を電磁力で破壊しては、砂鉄でオブジェを生み出して大人たちをも驚かせる。
電気を操る『原典』が、ハルにゃんの妹だった。
ハルにゃんは、そんな桜ちゃんの能力を、捻りもなくそのまんま名づけた。
《雷桜》
ハルにゃんと桜ちゃんは、いつだって天才だと言われ、いつだって将来を期待され、いつだって二人で支えあって、大人に向けられる視線と重圧を耐えてきた。
だいぶ仲が良かった姉妹だ――ハルにゃんは、そうボクに語っていたぜ。
シスコンだと言われても否定できないくらいにね。
そんなハルにゃんと桜ちゃんが生き別れるまでのお話が、今回の間章だ。
――――少女は思い出す。
幼き日、大切な妹を失った、とある出来事を――――
【これが奇跡の零能力者
間章 雪姫の追憶編】




