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●第百九十三.五話 (とある死体、元正義の味方)

幕間です。内容的に前後両方ともに入れづらいのです


改ページ演出だと思っていただければ…笑




 金世杰(ジンシージェ)の遺体が大監獄島『黄泉比良坂(よもつひらさか)』から持ち出されて、すでに二十四時間が経とうとしていた。


神上の光(ゴッドブレス)》で復活させることのできなくなる、境界線。


 現在かの英雄の死体が安置されている場所に天皇波瑠が踏み入れる可能性は、ゼロ。とはいえ死体を託された魔術師、草壁(くさかべ)最理(さいり)は時間を計っていた。


 苦労してまで運び出した大戦力に、万が一は許されないのだ。


「にしても〝死者を操る魔術〟ねぇ。くわばらくわばら」


 そんな部屋に通された女人形師は、金世杰(ジンシージェ)から衣装をはぎながらため息をつく。


「人形師か。神崎(かんざき)の〝魔術〟に興味があるのか?」


「多少はなー。俺も似たような技術を持っている。もっとも俺の場合は、死者を操るんじゃなく死者の肉体を素材とするだけだけどよー」


「そちらの方が興味深いがな。〝死霊魔術(ネクロマンシア)〟ではないのだろう?」


「俺からすりゃ西洋(あっち)の〝死霊魔術(ネクロマンシア)〟ってほーが気味悪いぜ。死体が独りでに動き出すとか勘弁してくれよなー」


「日本にも〝黄泉醜女(よもつしこめ)〟を筆頭とした死霊魔術があるのだが……?」


 人形師は、硬直しつつある金世杰の死体を撫でた。


 胸元に小さな穴が一つ空いていて右腕を失った、綺麗な死体。うまく加工すれば利用価値のある素材となるだろうに、好きに扱えないのが惜しい……、と人形師はため息をついた。


「んで草壁さんよー、コイツをどうするんだ?」


「金世杰の死体は神崎に任せる。我々は時が熟するまで待機だ」


「りょーかい、ようは暇な時間が続くってワケね」


 件の『神崎』という魔術師は今、魔術の準備をするために席を外している。彼が戻ってくるまでなら大丈夫だろう、と人形師は勝手に金世杰の死体の分析を始めた。


 筋肉質、骨の太さなど、トップアスリートもかくやという程に恵まれている。


「流石は『世界級能力者』だ、この肉体改造し(いじくり)てー……!」


「余計な手は加えるなよ、人形師。翁が乱心しては困る」


「わかってるってー。ところで草壁さん、確かアンタは金世杰のファンだったな?」


「……ファンではないが、素性は他人より詳しく知っている」


「コイツって本当に『正義の味方(ヒーロー)』なのか?」


 手に入れたデータをリストバンド状の端末に打ち込みながら、人形師は顔も向けずに問いかける。草壁はようやく懐中時計から目を離すと、


「無論捉えようで変わるが――世界的に見れば『正義の味方』だろうな」


「本当にぃ?」


「芦ノ湖でのイメージが強いので仕方ないか。しかしアーティファクト・ギアや天皇涼介と名が並ぶ時点で、『正義の味方(ヒーロー)』だと呼ぶだけの格があるだろう」


「そういう実績じゃねーよ草壁さん。俺は感情論を聞きてー」


「む?」


「例えば天皇真希は俺の見立てじゃ『正義の味方(ヒーロー)』だ。メサイア・コンプレックスとはいえ『困っている人間を見逃せない』なんて性格は、どう考えても英雄だぜ」


「ふむ、結果ではなく人間性か。であれば金世杰は、半分が『正義の味方』で半分が『悪の大魔王』だろうな」


「……草壁さんもそういう言い回しすんのね」


「『悪の大魔王』はまさに芦ノ湖で見せた姿だな。端的に言えば身内に厳しい。義勇軍【ウラヌス】がそういう組織だったせいでもあるが……仲間を切り捨ててでも市民を守り、戦争を終わらせる男だ。これを裏返すと」


「裏返せば?」


「彼はどのような手段を使ってでも市民を守り、戦争を終わらせたいと望んでいた『正義の味方』なのだよ」




   ☆ ☆ ☆







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