●第百二十七話 古泉激の桁が違う高速戦闘
『第六章‐始』もとい今回更新分はここまでです。
ようやくできた波瑠の復習回であり、第六章のご紹介みたいな回が最後になってしまいました
【11 東京、ある地域の公道】
現在時刻
2132年4月25日金曜日 午後4時00分
寮長の家に寄ったのは、単に挨拶をするためだけではない。
変装……とまではいかないものの、佑真と波瑠が仮に着ていた学生服から、いざという時の為に寮長の部屋に隠していた私服に着替えるためだ。
「野球帽、ショートパンツ、ニーハイ、パーカー、ポニーテールでスニーカー。波瑠の格好は完全にアウトドアスタイルだな」
ショートパンツとニーハイの間に存在する絶対領域が眩しいなあ、と切実に思う太ももフェチの格好は、逆に普段とほぼ同じ。赤いパーカーを羽織った両腕には、特殊兵装『梓弓』も巻かれていた。
「ふふん、今回の私はメガネ属性も付与されるのです」
伊達だけどね、と波瑠はちょっと得意げにメガネを持ち上げた。
愛らしい仕草で佑真をなごませる彼女は今、エアバイクのサイドカーに収まっている。青い流星をモチーフとした新型改造エアバイク。ハンドルを握るのはもちろん、ヘルメットで顔が隠れている佑真だ。
「いざという時のために私も免許取ったけど、運転ばっかりは佑真くんの方が圧倒的に上手いよね」
「波瑠と会う前からドライブ好きだったけど、会ってからは極端な運転技術を要求されまくったからな。おかげで雑技団もびっくりのドライビングテクニックが手に入ったぜ」
「免許取ってまだ一年経ってないのにね」
ちなみに佑真の『若葉マーク』は、七月二〇日のあの時も、【メガフロート】地区に乗り込んだあの時も、そして現在も車体に輝いていたりする。格好いい機体に格好悪い称号だが、世の中のルールは守るのが元不良としての筋なのだ。
「で、波瑠。とりあえずどこへ向かえばいい?」
「そうだね……一ヶ所、寄り道したいところがあるんだ。『西に行く』って言ったけど、一旦新宿方面に向かってもらっていいかな。ナビのセット、住所がうろ覚えだから時間かかるかも」
「了解。のんびり思い出してくれ」
パワードスーツに追われているわけでもないので、もいいいいん、とのんびりまったりエアバイクは進む。
東京は八王子市方面の一部を『人工的な緑』――人の手が加えられた自然として残しているが、他のほとんどは都市開発を経て、住居・商業施設・企業ビル・教育機関の四択状態だ。ナビをセットし終えた波瑠は、そんなコンクリートジャングルを眺めていた。
「大量に開発した国立自然公園や、道路をかざる街路樹。現代人に身近な『自然』はね、基本的に人間の手で作られ、管理されている『人工物』なんだよ」
「ほー……矛盾してないか?」
「そう、矛盾しているの。人工と自然は本来対義語なんだけど、『第三次』で主な大都市は焼き尽くされちゃったからね」
波瑠が見上げた街路樹には、カラスが何羽もとまっていた。
「二十年や三十年でふたたび『大都市』に戻すにあたって、人は完全な機能性よりも緑を残すことにしたんだよ。たとえ街路樹がクローン技術の産物でも、公園の木が機械によって成長を制御・管理されていても、憩いの場を作りたかったんだろうね」
「なるほどな。だからコンクリートジャングルの中にも立派な緑があるわけだ」
もし街路樹がなかったら、落ち葉を掃除する必要はないし、道路の幅も広くなる。
けれどなかったら、それはそれで寂しいだろう。
「公園とかしょっちゅう行ってるし、子供たちの遊び場もなくなっちまうもんな」
「うんうんっ。自然保護は大事だよっ」
赤信号で一旦エアバイクを止める。佑真がふと見上げた空には見覚えがあった。
「波瑠」
「ん? なに、佑真くん」
「ここ、オレとお前が初めて会ったところだ」
佑真は空を指さした。真夏の青い空を背景に、波瑠が放物線を描いて落っこちてきた交差点だ。九ヶ月も前の記憶を波瑠も蘇らせる。ここは佑真の地元だ。デートやら買い物やら、くだらない用事でも通ったはずなのに、口元は勝手に緩んでいた。
「……ふふっ。何回も通っているはずなのに、なんだか懐かしいね」
「オレは通るたびに思い出してんだけどなー。波瑠にとってはその程度でしかないのかーそうかそうか」
「えっ? えっ!?」
「冗談だよ。でも、オレにとっては特別なんだ。すべてが始まったのはこの」
前を向いたまま話していた佑真が言葉を止める。表情はヘルメットで見えなかったが、肝心な部分で発言を躊躇う理由があるはずだ。それも外的な何かが原因で。
絶対的信頼で咄嗟に前方を向いた波瑠は、対向車線を真っ直ぐに走るトラックに気付いた。
赤信号なのに真っ直ぐ走り続ける――トラックに。
「っ! SET開放!」
このままいけば青信号で走っている車に突っ込んでしまう。きっと止まる気なんてない。
自動ブレーキなんかよりも確実な方法――嫌な予感に従って超能力使用状態となった波瑠は、サイドカーで立ち上がって前方へ手をかざした。照準をトラックに正確に定め、《霧幻焔華》の基礎である『エネルギー変換』を発動する。
トラックが宿す運動エネルギーを右手で奪い取り、左手から上空へと運動エネルギーで放出する。波瑠の手のひらを中心に起こる激しいつむじ風は、トラックが止まる気がないという何よりの証拠だった。
ギギギギギ!!! とタイヤが不自然な摩擦を響かせる。
左から来ていた車が急ブレーキをかけてスリップし、それを発端にクラクションと急ブレーキが騒音の嵐を起こした。幸い追突事故はないようだが、騒ぎが一気に膨れ上がる。
トラックが静止したのは、交差点に跳び出して一メートルほどしたところだった。
波瑠が止めなければ、確実に突っ込んでいただろう暴走。
「……波瑠、嫌な予感がする。無茶苦茶な走り方をさせられるかもしれない」
「うん。能力はいつでも使えるよ。今の私は守られるだけの私じゃないよ」
「心強いな」
――――――佑真がヘルメットの下で口角を上げたのと、トラックの荷台が音を立てて展開されたのは、ほぼ同時だった。
『標的、天堂佑真。一番手――は佐々木消でしたが、私のこれはあくまで前哨戦です』
中から登場したのは、佑真のエアバイクと対照的に赤いボディの――バイクだった。
車輪で直径一メートルを超える巨大なタイヤ。リニアモーターカーに類する鋭いボディ。最適化されたジェットエンジン。ウイングは『反重力モーター』を搭載し、全自動で車体バランスを保つ。
全体を頑丈な装甲に覆われたそれは、二輪車であって駆動鎧であった。
光速車装『赤閃の鎧』
『第三次世界大戦で日本陸軍が使用した、着用型の兵装です。いかなる照準ミサイルでも捕えられなかった機動性を有し、最高速度は時速八〇〇〇キロを記録する文字通りの怪物マシーン』
駆動鎧に身を包むのは、黒髪の女性、古泉激。
『果たして王の眼鏡にかなう逸材なのか、お手並み拝見といきましょう』
長門憂の側近が、第一陣の幕開けを告げる爆音を轟かす。
【12 練馬区、大泉インターチェンジ付近】
現在時刻
2132年4月25日金曜日 午後4時11分
波瑠が作った氷のスロープで交差点を突破した佑真は、エアバイクのハンドルを握りしめた。
視界の端に画面が展開される。ヘルメットに映し出された後方の映像だ。
これと前方の両方を同時に見ながら運転する、マルチタスク走行の訓練こそ積んだが、佑真は後方側の映像に映った初っ端の映像に度肝を抜かれていた。
展開されたトラックの荷台から、赤い二輪車は飛び出した。
両翼の――おそらく『反重力モーター』と後方で炎を噴く『ジェットエンジン』を駆使して、空を飛んだのだ。交差点を左折して加速した蒼のエアバイクとの距離を、すぐさま詰める常軌を逸した走法で道路に着地した。
「なんだあのバケモンは!?」
「『赤閃の鎧』」
告げたのは、スニーカーを氷で固定して背後を完全に向いた波瑠だった。
「日本陸軍が開発した怪物マシーンだよ! 佑真くんも知っているはず!」
「『赤閃の鎧』だと!?」
佑真の驚愕を聞きながら、彼女はサイドカーの両脇についているレバーを引き出した。コードでサイドカーと繋がっているそれは、波瑠のバランスを保つためのものだ。
「地上で音を置き去りにする、通称『陸上戦闘機』……オレも一度だけVRのシミュレーションで乗ったことがあるが、アイツは人間が制御できる性能を超えていた! 少なくともシベリアとか広大な場所でないと横転か激突しちまう、街中で使う代物じゃねーぞ!」
「街中で使える人が乗っているってことなんじゃないの?」
「笑わせるぜ、初手から全力かよ」
バゴッ! と爆裂音が背後で轟いた。
『赤閃の鎧』のジェットエンジンがふたたび火を噴き、一気にほぼ真横まで接近された。
「速すぎる……飛ばすぞ!」
「了解!」
佑真は『反重力モーター』を躊躇なく全開にした。道路に突風並みの圧力を放ち、蒼いエアバイクの高度を徐々に上げていく。
その間に波瑠は凍結による迎撃を行おうとするのだが――凍結が、当たらない。
《霧幻焔華》は、波瑠が見た視界内での『座標』上にエネルギー変換を行う能力である。手をかざしたりするのは、その『座標』をイメージしやすくするためだ。
波瑠の『座標』設定速度では、『赤閃の鎧』の瞬発力を追い切れない。
猛スピードで左右に翻弄し、乱暴なドライビングを続ける『赤閃の鎧』。波瑠の凍結は無慈悲に空気中のすべてを絶対零度にするだけで、『赤閃の鎧』にはかすりもしない。
(誠くんに散々練習付き合ってもらったけど、本番で上手くいかなきゃ意味がない!)
『赤閃の鎧』を操る駆動鎧は、左手を離して拳銃を突きつけた。
ノータイムで放たれる銃弾は、エアバイクの周囲に張り巡らせた『凍結領域』で瞬く間に凍り付く。
一定距離まで詰めたが最後、ある『座標』を通過した瞬間、物理攻撃の纏う運動エネルギーと熱エネルギーを完膚なきまでに奪い去って完全静止させる技――『凍結領域』。
問答無用で凍り付かせる波瑠の世界が、すでに広がっていた。
波瑠の母親――『戦術級能力者』天皇真希が戦時中に使っていた戦法だ。同時に広域を対象にするのは波瑠の得意技でもあった。
「そのまま防御を続けてくれ! 迎撃は余裕が出てからだ!」
佑真が内装のレバーを捻ると、蒼いバイクの装甲から両翼が拡張される。
改造された佑真のエアバイクは、エアカー同様に自由な空中飛翔を可能とするオーバースペックマシーンだ。多数の『反重力モーター』を備え付け、翼をはじめとした『変形』を幾段階も用意している。
その分だけマシーンも大きくなっているが、頑丈さ、多芸さを得た上で機動力を確保した規格外を考えれば妥協も余裕。佑真の要望すべてに応えた最高マシーンだ。(ちなみに改造は【低能力者集団】の外法技術者・空野百合花先生の監修!)
蒼い流星はビル街の空へと舞い上がった。
だが『赤閃の鎧』もまた、ジェットエンジンと『反重力モーター』を駆使して空中を爆走する怪物だ。
むしろ向こうの方が戦闘に特化されている分、優位は高いだろう。逃げ切るビジョンが浮かばないが、アクセルをさらに踏み抜いた。
(追加演算!)
両手でレバーを握ってバランスを取る波瑠は、防御の『凍結領域』に加えて新たな能力を並列処理し始める。『赤閃の鎧』が纏う運動エネルギーを漠然と認識し、ジェットエンジンの火力を視界に捉え、それらを奪って、強力な向かい風に変換して真正面から吹き付ける。
一つの演算の中で、二重に仕組まれた加速妨害。
ガクン、と『赤閃の鎧』が速度を落とした。一瞬崩れたバランスは器用に持ち直すものの、加速を続けるエアバイクとの距離が開く。
「これでどう……!?」
期待半分に睨み付ける『赤閃の鎧』の装甲が音を立てた。一部が開かれ、そこから覗くは四の連装砲。一瞬の減速で狙いを定めた『赤閃の鎧』から、砲撃が放たれた。
「そりゃ遠距離攻撃もあるよね!」
波瑠はレバーを握る両腕を薙いだ。サファイアの瞳が捉えた砲弾を、ドライアイス弾で的確に迎撃し、空中で撃墜していく。
爆音と周囲の悲鳴は一瞬で遠くへ流れ去る。
『赤閃の鎧』とビル街で繰り広げるフライト・カーチェイスは、時速百キロに到達しようとしていた。波瑠は周囲への被害が非常に気になるところだが、被害を最小限に抑える『凍結』に限定するのも限界が近い。
「波瑠、垂直行くぞ!」
「はい! こんな早々にお披露目になるなんてね!」
「練習の甲斐あったってもんだろ、きっと!」
佑真は左手で別のハンドルを思いっきり引いた。空中走行時、バランスはジャイロセンサーが自動で取ってくれるが、佑真が意図的に体勢を変えたい時、飛行機の機首を上げ下げするのと同じレバーが運転席の下部に取り付けられている。
両翼とタイヤ位置の『反重力モーター』が向きを変え、エアバイクの頭が天を向く。そして佑真は、地上六十階はあろう都市部のビルへと突っ込んだ。
『反重力モーター』がビル壁を認識し、そこを疑似的な『床』と捉えて壁沿いを翔け上がる。
垂直急速上昇。
ビルを面にして地上と垂直に走るバイク、という光景を内側の者達はどう見ているのだろう。
波瑠は自分の服とエアバイクのサイドカーを、氷で連結させて固定した。
『赤閃の鎧』は勢い余ってビルに追突しそうになるも、急旋回すると地上側にジェットを殴りつけて、九十度の方向転換をして追跡してくる。
「チクショウ、垂直走法はこっちの専売特許だと思っていたのに! やっぱバケモンだあの野郎!!」
「迎撃来るよ! 衝撃用意!」
ふたたび四門の連装砲から鉄塊が射出された。迎え撃つ波瑠のドライアイス弾。ここが地球上である限り、尽きることなき無限の弾丸で爆発四散させる。
膨れ上がる爆煙を引き裂いて、計八つの砲弾が飛来した。煙の中だろうと『赤閃の鎧』には目眩ましにもならないらしい。波瑠は何度だってドライアイス弾で撃ち落とす。
連鎖する爆煙から飛び出した『赤閃の鎧』は、正面部分が展開されていた。突出するのは二連の線路。平行に連なる射線には一つの鉄鋼が乗っている。
軽・電磁加速砲。
電磁力をもって質量を超速で飛ばす兵器が、大都会を垂直に撃ち上がった。
「――――そういう攻撃は、私がいる限り届かないよ」
だが、迎撃するは《霧幻焔華》。それが『エネルギー』という概念に囚われた現実事象である限り、あらゆる攻撃に干渉の余地を許してしまう最強の超能力。
爆発的加速で貫かれた雷光は、彼女の『凍結』の餌食となった。
『…………流石はランクⅩ。波動切れの去年ならともかく、現在の彼女に、機械での真っ向勝負では歯が立たないですか』
『赤閃の鎧』を身につける古泉激は、蒼髪をなびかせる超能力者を観察していた。見た目だけはごく普通の少女が『第三次世界大戦』で活躍した兵器を、本領発揮といかないとはいえ制圧しきっている。
これが本来の天皇波瑠だ。
約五年間をたった一人で逃げ切った天才少女の名は、やはり伊達ではない。
『評判通りです。それでこそ、長門様の眼鏡にかなうというもの』
パワードスーツの下で淡々と告げる古泉。
二機のバイクが地面に見立てていたビルの壁が途切れ、蒼のエアバイクのハンドルを握る佑真は口角を上げた。
「さて、ここからが本当の『変形』だ。波瑠!」
佑真の声を聞いた波瑠は、『赤閃の鎧』から背後へ――上空へと視線を流し、手を一薙ぎした。
パキパキパキ、と空中の水蒸気が凍りつく。
アーチ状の氷のコースターが生み出され、蒼のエアバイクはその軌道をなぞって宙返りを決めた。
機首が向かうは大都会の地上――百八十度の方向転換、そして大地への急降下。
「ついてきやがれ、怪物兵器!」
『いいでしょう。その挑発、買った!』
『赤閃の鎧』も宙返りし、機首を地上へ向けてジェットエンジンを噴出した。重力プラス火力。ドライバーの度胸と一瞬の判断力が試される空中格闘技。
もはや赤と蒼の流星の動きは、戦闘機のそれと大差ない――。
((ここ!))
二機ともが、地上に止まる自動車の真上五メートルで直角に方向転換した。空を切る衝撃波が道路を席巻する。
『逃がしません』
後方へつく『赤閃の鎧』を振り切るべく急旋回を仕掛ける佑真だが、流石は怪物スペック。振り切るどころか真後ろを捉えられっぱなしだ。
幾重にも放たれる砲撃、銃撃こそ波瑠が高速戦闘の中でも防いでいるが、撒くには足りない。
(このままジリ貧じゃあ意味がねえ。考えろ、模索しろ!)
佑真の右足がアクセルを最大限まで押し込んだ。ジェットエンジンが全開で解放され、ブラストが『赤閃の鎧』を殴り付ける。以前ステファノに仕掛けた攻撃は牽制。
案の定『赤閃の鎧』が苦もなくブラストを真正面から切り裂いた、その瞬間に佑真は左右への激しい切り返しを、上昇しながら開始した。
急旋回上昇。しかし『赤閃の鎧』は背後を捉えて逃がさない。
『こちらは地上戦闘機ですよ。その程度の飛び方、音速を超えても行える!』
「だがこういう飛び方は、絶対できねえだろうがな」
二機がまたも連なるビルの屋上の高度を超えた、その時だった。
佑真のエアバイクが、急に減速した。
エンジンや佑真の腕に注視していた古泉激は、突然の、そして予想外の減速に対応しきれずに蒼のエアバイクを追い抜いていた。
ブレーキをかけた様子がなければ、ジェットの火力も落ちていない。それでいて、なぜ急に減速して『赤閃の鎧』の背後を取れたのか――
『エネルギー変換か!』
波瑠は自分たちのエアバイクが纏う『運動エネルギー』を、あえて奪って減速させたのだ。
他人から見るだけでは気づけないほど自然に、けれど現象としてはごくごく不自然に減速させる、超能力による事象の改変。
『天皇波瑠、あなたはッ!』
「ちなみに私の能力は『エネルギー変換』なので、エネルギーは出力先が必要なんだけど」
サイドカーに立つ波瑠の両腕が、ついに稲光を蓄えていた。
古泉激は全力で離脱する。追い抜いた――否、追い抜かさせられた蒼のエアバイクは真後ろ、即ち撃墜可能位置にいる。
「『赤閃の鎧』なら中の人は感電死しないだろうから、この攻撃も許してね」
赤い音速の鷲を、白い光速の稲妻が呑み込んだ。
今回出した用語はほとんどが創作で、本当に使われるのは『ブレイク』とか『シザーズ』とかその辺だったりします。にわかカーチェイス回でした。




