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●第百二話 「運がすごく悪いんですよ」

さくさくと話を動かしていきます。



 翌日より、早速授業は開幕した。

 A組では波瑠の運動神経の悪さが露見して意外と驚かれたり、H組では佑真の頭の悪さが露見して予想通りと納得されたり、新生活らしい活力に溢れた時間が過ぎる。

 あっという間に迎えた放課後――校内は、昨日とはまた違った賑わいに満ちていた。


「新入生部活動体験期間?」

「………いわゆる仮入部期間ってやつ」

「今日から来週末の第一回演習までの約二週間、新入生は自由に部活動を体験できるそうですよ。騒がしいのは先輩方が勧誘しているからだそうです」


 A組の教室に残る波瑠達の話題も自然と全校生徒の盛り上がる部活動体験期間の話になっていた。


「秋奈ちゃんは行きたい部活とかあるの?」

「………あたしは中学の頃と同じ弓道部かな。剣道は流石にそろそろ限界見えてる」

「弓道ですかぁ、かっこいいです」

「………それほどでも。千花は?」

「うーん、わたしも中学と同じで、どこかの部活のマネージャーですかね……運動も得意じゃないですし、特技もありませんし」

「またまたご謙遜を。少なくとも私よりは球技できるのに」

「………波瑠ちゃんが圧倒的なだけかと。ていうか波瑠ちゃんは? 部活とか考えてなかったでしょ?」


 秋奈の的確な指摘にうっと体を縮ませる。部活動という存在を今日まで忘れていたとは申し上げにくい。


「………ま、体験期間だから」

「そうですよ。二週間で入りたい部活を探せばいいんですし、合うのがなければ帰宅部だっていいじゃないですか」

「ん、そうだね。ちょっと色々回ってみるよ」


 中学校ではたった半年だったりそもそも生活に余裕がなかったりして、部活動どころの話ではなかった。ちょっとしたワクワクが胸を踊らせる。


「………せっかくだから、一緒に回る?」


 ――そんな波瑠を見ていたら、親友として思わず力になりたくなるものだ。


「え? でも秋奈ちゃん、弓道部に行くんじゃないの?」

「………別に中学でやってただけだから、他のも興味湧くかもしれない」

「じゃあわたしもご一緒していいですか? 一人で行くのは怖かったですし」

「……えへへ。二人ともありがとう」


 波瑠の嬉しそうな顔を見れれば、これくらいお釣りものだと思う二人だった。


 ちなみに。

 同級生たるキャリバン・ハーシェルさんは早々に上級生に回収されていたのでした。



   ☆ ☆ ☆



 グラウンドを野球部とサッカー部とラグビー部が同時使用し、部室棟は勧誘のいざこざで大騒ぎになり、中庭は書道部とダンス部という異色のコラボでパフォーマンスが繰り広げられ。

 しっちゃかめっちゃかな大騒ぎは、たとえここが超能力者育成を専門に掲げようと、高校だという証明に他ならない。


「はーい、こちら副会長の瀬田ですが……剣道部と柔道部が場所取りで揉めてる? 道場はローテ組んだんだから、部活連に問い合わせてルール守ってねー」

「流石にグラウンドを三つの部活同時は厳しい? いや部活連の会議で野球部もサッカー部もラグビー部も納得していただろう。変更は却下だ、我慢してくれ」


 問題が起こらないよう、生徒会は各自見回りをしたり生徒会室で待機したり、口論の仲裁をしたりと大忙しだ。

 風紀委員や生徒会メンバーからの連絡を同時に終えた会長、清水優子と副会長、瀬田七海はそろって苦笑いを交わした。


「去年もそうだったが、流石にこの時期は仕事が多くて疲れるな」

「一息入れましょうか」


 二人はこの高校に入学し、『清水』と『瀬田』で偶然席が前後だったことが出会い。付き合いの期間で言えばたったの二年間と浅い付き合いでしかない。

 しかし『東京大混乱』をはじめ数々の場面で武勲を得ている超能力者コンビとして有名である。盟星学園を率いる人材としてはこの上ない二人の絆は、時間では計れない以心伝心のものなのだ。


 七海が入れたお茶を口にした優子は、深く息を吐いた。


「はぁー……七海の入れる茶は美味いなぁ。仕事の癒しだよ。そういえば、今日もランク戦やってるんだって?」

「ええ。天堂佑真、小野寺誠コンビ対三日月達樹、佐藤歌穂の新入生によるタッグマッチが現在進行形で。新歓騒ぎプラス一年生同士ってことで、ほとんど注目されてないのよね」

「はっはっは、また天堂か。しかも誠君も」

「この時期は普通ならランク戦を申し込む人なんていないから、今朝申し込んで放課後には試合っていう無茶もできちゃうのよね。血気盛んというかやる気満々というか」

「今年の問題児候補は言わずもがな、天堂と誠君だな。なんにせよ、二人の『強くなりたい』という姿勢は同学年への刺激となるだろう」

「運営委員会はランク戦が増えるの嫌がってたけどね」 


 仕事が増えると嫌なのは生徒会も同じだ。佑真と誠を応援したい気もあるが、このままだと毎日やりそうだから、流石に一言生徒会長から言うべきかもしれない。


「というか、私達へは挑戦してくれないのか? 火道だけというのはズルいぞ」

「天堂君はともかく、小野寺君ならその内申し込んできそうなイメージだけど」

「お、そうか? 私も後学のために小野寺流剣術は見ておきたくてだな――」


 生徒会長の瞳に戦意がギラリとちらついた瞬間、生徒会室の扉が開かれた。巡回していた書記の寛政と、会計の二年生、黄金(こがね)愛花(あいか)が戻ってきたのだ。


「会長、七海、巡回交代だ」

「お疲れ様ー」

「む、もうそんな時間か。ついに今年も巡回の番が回ってきてしまったな、七海」

「気合い入れて行くわよー。できるだけ揉め事に首を突っ込まず、暴力沙汰だけは全力で避ける。今年こそ負傷者零で新歓期を乗りきってみせるわ!」


 腕章をつけなおした二人は、半ばヤケクソテンションで生徒会室を出ていった。部屋番をする生徒会二人が事実上の連絡係という休みなきローテーションだ。


「テンション高いですねー、かいちょー達。やる気満々ですか?」

「いや、覚えておけ愛花。あれが『楽しまないと乗り切れない』と悟った愚者の末路だ」


 学園の王子様だけに女子から次々と揉め事へ引っ張られていた寛政のため息は、やけに深いものだったという。


   ☆ ☆ ☆


 裏で行われるランク戦など気にもかけず、波瑠達ご一行はとりあえず屋外の部活から見て回ろう……としたのだが。


「あなたが天皇波瑠さんね! バレー興味ない、バレー!」

「水野さん、陸上で共に青春の汗を流そうよ!」

「ラクロスって知ってるかな? プレイヤー少ないからオススメだよ!」

「是非とも水泳部に入ってその水着姿を我らに披露してくだされえええ!」

「風紀委員さんこっちです」


 気づけば【七家】ブランドが余計な力を発揮して、たくさんの勧誘に囲まれてしまっていた。


「ひえっ、う、運動はちょっと苦手でしてぇ」

「………波瑠ちゃんはちょっとどころかかなりの運動音痴に加えてご覧の低身長。申し訳ない」

「秋奈ちゃん、真実だけど胸に突き刺さるよぉ」

「………効果的だからつい」


 根が優しい波瑠にはどうにも断りづらいのだが、年上だろうと遠慮なくぶったぎる秋奈のおかげで『部活へご招待』だけはなんとか逃れている。


「お、君も結構可愛いじゃん! どう、サッカー部のマネージャーやんない? 先輩イケメン揃いだぜ~?」

「いや野球部はどうだ? 共に甲子園を目指そうじゃないか!」

「こんなゴツい野郎だらけだが、ラグビー部もマネージャー、募集中だゾ!」

「あの、えとえと、ええと……」


 そんな二人と共に行動した千花も、勧誘祭りに巻き込まれていた。中学時代のことを見抜かれているのか、その辺の運動部が『マネージャーやんない?』一択で攻めてくる攻めてくる。

 気が弱い千花はひたすら押されるだけだ。


(………流石に二人は裁けない。せめてもう一人くらい援軍を……)


 と悩む秋奈の声を、天は――――




「危ないッ!」




 ――――想定し得る最悪の形で叶えてくれた。


 危ないという叫び。同時に秋奈の視界に入ったのは飛んできた野球ボールだ。それ自体は偶然にもラグビーのゴールポストに当たって明後日の方向へ転がっていくが、


(………ゴールポストが倒れる!?)


 巨大なゴールポストが根元よりへし折れ、よりにもよって人の集まったこちら側へ倒れこんできたのだ……!


 咄嗟にSETへ手を伸ばすが秋奈の能力を使うにも回りに人が多すぎる。波瑠を見れば同じくSETを起動させようとしていたが、逃げ惑う人に押されて倒れている。

 そして千花も倒れていた――秋奈の見切りが正しければ、ゴールポストの直撃する位置に。


「………千花ッ!」「千花ちゃん!」


 波瑠と秋奈は同時に、もはや反射的に体を動かしていた。その鉄槌が彼女の身体に当たれば命を落とす可能性すら存在する……! 絶望が心底から恐怖を駆り立て、全力で踏み込んだその時だった。


「伏せて!」


 という新たな声と共に、青白い火花が飛び散った。

 ガクン、とゴールポストが見えない紐で釣られたかのように空中で――千花に直撃する目の前で静止した。事実、巨大な金属棒は見えない紐に類似した超能力、磁力で釣り上げられているのだ。


「ギリッギリセーフってとこかしら……?」

「ふ、副会長さん!?」


 千花を庇うように、副会長の瀬田七海が超能力使用状態で割り込んでくれたのだ。

 へたり、と腰が抜けたように座り込んでしまう千花。七海はかざした手を横へ逸らし、誰もいない空間へゆっくりとゴールポストを降ろした。ざわめき、教員や風紀委員やラグビー部員たちが集まってくる中、SETを停止させた七海は千花へ手を差し伸べた。


「怪我はない? 立てるかしら?」

「…………は、はい」


 放心状態の千花は素直にその手を握り、ゆっくりと立ち上がる。


「千花ちゃん!」

「………よかった、直撃しなくて」


 駆け寄る波瑠と秋奈が千花を抱きしめる。

 そこでようやく放心から解けたのか、あるいは安心したのか。


「うえっ、ふえっ、こ、怖かった……怖かったよぅ……!」

「わわ、よしよし。助かってよかったねっ」


 千花の瞳からは、ポロポロと大粒の涙が零れ始めた。ギュッとより一層力をこめて抱きしめる。普通の女の子が抱いた至って普通な死への恐怖は《神上の光》にも癒せない。千花は波瑠に任せて、秋奈は七海へ頭を下げた。


「………助かりました。ありがとうございました」

「いえいえ、こちらこそ本っ当にごめんね。学校の備品は春休みに確認したはずなんだけど、ゴールポストなんて盲点すぎたわ。まさか野球ボール一球でぶっ壊れるなんて」


 なんて言う七海は、壊れた現実を信じられないといった表情をしていた。ラグビー部や教師達もゴールポストが壊れた事実を受け入れがたいと動揺している。秋奈にだって信じられない。ただ野球ボールが当たっただけで壊れるなんて、相当ダメになっていたとしか思えないのだ。

 そこで、涙を拭った千花が波瑠のお供つきで七海に頭を下げた。


「あ、あのっ、助けてくれて、ありがとうございました!」

「こう何度もお礼言われると照れくさいなぁ。ほんとに気にしないでね。こちとら怪我される方が困るわけだし、生徒の為に行動してこその生徒会だからさ。それより、本当に大丈夫?」

「は、はい。怪我はありません」

本当に(、、、)無傷でしたよ」


 波瑠の言い回しの意味を理解した七海は、ニカッと微笑んだ。


「そりゃ良かったわ。不幸中の幸いってやつかしらね」


 そんな何気ない言葉だったのだが。


「…………不幸、かぁ……」


 なんて千花が小さく呟いたのを、波瑠は聞き逃さなかった。


   ☆ ☆ ☆


 グラウンドでの部活動は一時中止となり、ゴールポストの引き下げが行われている。


「って七海先輩、一緒に来て大丈夫なんですか?」

「いいのいいの。見回りのルートと可愛い後輩たちの見学ルートが偶然被っただけだもん」


 そんな中、三人は七海を交えて移動し、部室棟を訪れていた。こちらもこちらで文化部たちがブースを作ったり体験コーナーを設けたりして盛り上がっている。まるで小規模な文化祭だ。


「そういえば、七海先輩の能力って《電磁狙撃(ライトキャスト)》っていう電熱線を撃ち出す能力じゃないでしたっけ?『東京大混乱』の時に見た気がするんですけど」

「あれは正確には『技』なのよ。わたしの能力は桜ちゃんと同じ《電子操作(エレクトロマスター)》の亜種。だからさっきみたいに磁力を生み出すことも、電気を使うこともできるのよ。ただ狙撃が得意だから電熱線を使った戦い方に落ち着いたってわけ」

「そうだったんですか」


 思い返せばただ電熱線を撃ち出せるだけでランクⅨになれるとは思えない。七海の超能力ランクは波瑠と同じく応用性の賜物のようだ。


「ま、わたしの能力は置いといて。三人は何か入りたい部活とかあるの? それとも当てもなく見学してたら上級生に捕まっちゃった感じ?」

「………ずばり後者だったりします」

「あらあら、大変だったのね。上級生も初日で躍起になってるのよ、許してくれると嬉しいわ」


 パチッと可憐にウインクを決めつつ振り返った七海は、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。


「………………あらあら、ほんの数秒目を離した隙に何があったのかしら」


 一年生三人娘が、いつの間にかびしょ濡れになっていたのだ。千花が漫画のように銀色のバケツを頭に被るおまけつき。


「バケツを抱えた美術部っぽい方が通って、」

「………普通にすれ違えるかと思ったら脇の机でスッ転んで、」

「バケツごと水が全部飛んできました」


 バケツを外しつつ涙目で嘆く三人娘は、制服もびしょびしょで肌に張り付いて気持ち悪い、と表情で物語っている。ちなみに秋奈の指さす先では、転んだ男子生徒がバケツも気にせず猛スピードで逃げていた。畜生である。


「ちっ、逃がしたか」七海は舌打ちしてから、「三人、今日は厄日なのかもしれないわね……。風邪ひくといけないわ。体育着とかある?」

「………幸い、今日は体育でジャージが支給されたばかり」

「なら着替えてきなさいな。制服は事務所に言えば乾かしてもらえるから」

「そうします……へくしっ」


 波瑠の可愛いくしゃみに、空気はほのかに和んだ。


   ☆ ☆ ☆


 流石に七海とも別れ、三人は普通科校舎に戻っていた。


「………リスポーンってやつか」

「あはは、戻ってきちゃいましたね」


 教室で体育着を回収し、三人が今いるのは女子更衣室だ。制服どころか下着まで濡れていて、秋奈は躊躇いなくブラジャーを外していた。


「………下着も何とかしてもらえるの?」

「脱いでから言う? でもこの上にジャージ着るのも嫌だよねぇ」


 むう、と下着姿で波瑠も顔をしかめる。ちなみに背中の魔法陣を見られないよう千花の真正面ぴったりのベンチに座るあたり、彼女の周到さが窺える。


「ていうか本当に運悪いよね。ゴールポストが倒れて水を被って。次は何が来るのかな?」

「………下着姿を佑真達に見られるとか?」

「あっはは、流石にそれはないって~」


 楽しそうに声を上げながらブラのホックへ手を回す波瑠。恥ずかしさより着心地を優先するのは女子としてどうなのかなー、と思いつつも気持ち悪さには勝てなかった。

 そんな中、千花はブラウスの前のボタンを外したっきり顔を伏せている。


「千花ちゃん、どうしたの?」

「あ、え、ええと……波瑠さん、秋奈さん、その、ごめんなさい」


 千花の唐突過ぎる謝罪に、波瑠と秋奈は顔を見合わせる。


「なんで千花ちゃんが謝るの?」

「………運悪いけど、別に千花が原因じゃないし」

「いえ……わたしが原因だと、思います」


 千花はギュッと自分を抱きしめるように袖を握った。


「変な話ですけど、その、わたし、運がすごく悪いんですよ。今までも実家が火事になったりとか、入試の日に電車が遅延したりとか、お二人と初めて会った時も、たくさん人がいた商店街で鞄をひったくられましたし……」


 そういえば、彼女との出会いはそんな事件だった。

 だけど、と波瑠は魔法陣になりふり構わず立ち上がった。


「千花ちゃんと私達が濡れたのは関係ないよ! 偶然だよっ」

「………ん。不幸な事故」

「不幸じゃないですかっ」

「秋奈ちゃん!」

「………しくじった」


 無表情のまま後頭部を掻く秋奈。その仕草が変なわけでもない。だけどなんだか可笑しくて――そろって笑いがこみ上げていた。


「あははっ、なんで突然シリアスになってんだろうね」

「す、すいません、なんか重い話にしちゃって」

「………平たく言えば千花が運悪くて巻き込まれただけの話。そしてこの不幸と千花が関係あるとしても、千花と一緒にいるのを望むのはあたし達の方だから謝る必要はない」

「そうだよ。私達の自業自得っ」

「ええっと、実は一日二回の『不幸』じゃ少ない方だったりしますけど、いいんですか?」

「待って普段はもっと不幸な目にあってるの!?」

「………千花恐るべし。逆に興味が湧く」


 なんて冗談です、とちろっと舌を見せながらブラウスに手をかけた千花が、何気なく脱ぎ降ろす。

 そんな、何気ない日常の一場面にも拘わらず。


「「………………ッ!?」」


 千花の胸元を見た波瑠と秋奈は、時間が止まったかの錯覚を得た。


(うそ、でしょ…………なんでそれが、そこに……あなたの、ところに……っ!?)


 唐突に、平穏な時がガラスのように粉々に砕け散った気がした。ドクンと全身の血液が脈動する。悪寒が背中を駆け抜け、冷や汗が頬を伝う。




 ――――――少女の心臓の、少し上の辺りだろうか。

 十二の星座の紋章と六芒星で構成される、漆黒の魔法陣。

《神上》が、少女の白い柔肌に焼き付けられていたのだ。




「……ん? どうしたんですか波瑠さん、秋奈さん?」


 彼女はそれを気にしてもいないのか、こてんと首を傾げている。どう聞けばいいものか、同じ疑問にぶつかった波瑠も秋奈も口を開けず、秋奈は二度目の正直と言わんばかりに誰かに助けを求めてみる。


 ――――そして繰り返される、神様からの超絶不幸なプレゼント。



 ズドガアッ! と突然女子更衣室の壁の一面が崩れ落ちて、


「…………あ、きな?」

「おぉ、こりゃ絶景」


 隣の男子更衣室で絶賛着替え中だった佑真&誠(パンツ一丁)が現れた。



「「SET開放ッッッ!!!」」

「問答無用でバトルモードかよテメェら! お、落ち着け! これには深い事情があって!」

「深い事情ってなに!? 壁壊してでも女子更衣室覗きたかったの!?」

「覗きなんてするつもりねえよ! こっちだって壁によりかかろうとしたら突然ぶっ壊れて、誠に引っ張られなかったら瓦礫に潰されるとこだったんだぞ!」

「………なぜよっかかろうとした?」

「よりかかるくらい許せや秋奈嬢ッ」

「ていうかこっち見てないでせめてあっち向いてぇ!」

「やっぱりついてないですよぅ……」


 とりあえず微妙な空気は払われたけど今後は他の方法でお願いします、と切に願う秋奈だった。



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