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伍ノ話『The rule book』

-----璃庵との話を終えた爽はエシの元へと向かっていたー。


(“爽、お前は今からエシの所へ行け。そしてあいつにお前のライフの詳しい使い方を聞教えてもらえ。あいつはお前の調教師だからお前の事なら何でも知ってる…と、思う。…あいにく俺は忙しくて詳しい使い方まで教える暇がなくてな…。…多分あいつはこの城を出て、西に数分歩いたところにあるライフ・メーカー達の宿舎に居ると思う。…宿舎は数棟あって、そこには一棟10人程のライフ・メーカーが住んでいるんだ。…あ、勿論そこにはお前とエシの部屋もあるからな。…ちなみにお前らの部屋番号は、参号棟の310号室だ。…じゃあ行ってこいっ!!”)



『…って言われたけど……西ってどっちだよっ!』


爽は闇の中、方角が分からず道に迷い、立ち止まっていた。


『はぁ…やっぱりアイツと住むんだよなぁ…。』


その時爽の脳裏にエシの顔が浮かんだ。


『…いや…でも、一応…女と共同生活だろ…?ちょっと…イイかも…?』


爽は少しニヤけたあとにまた闇に向かって歩き出した。



{場面は変わり--宿舎、参号棟309号室--。}


「…遥瞳爽…、短髪で髪は銀髪でくせ毛…の17歳…。同い年…か。なる程…もう新入りの情報が出回っているのか…。」


電気を消した薄暗い部屋の中で、黒縁メガネをした優しい顔つきの長髪の男が、一冊の本を見つめ、独り言のように呟いた。


「隣の部屋は…。そう…エシさんの部屋だったな…。…その隣の部屋に遥瞳は来るのか…。…たしか、遥瞳のライフは刀…。……あいつのライフ、試して見るか…。」



言い終わると、男は不適な笑みを浮かべ、本を閉じた。するとその瞬間、本は指でつまめるようなサイズに変わり、男はそれを何も無かったかのようにポケットに入れ、部屋を出た。



{…一方その頃、爽は--…}


『ハァ…ハァ……。…何だぁ!?も…もう…30分は歩いてんぞ…?…ハァ…。しかもこの坂道…ッ…、暗闇でわかんねぇけど、コレ完全に山…、登ってるよな…。』



爽は道に迷った末、闇の中をさまよい、ある山のような場所にたどり着いていた。


『コレ…大丈夫か…?…ほんとに宿舎に着くのか…?』


「…どうした爽、道にでも迷ったのか?」


と、うなだれていた爽の後ろから、エシの声がした。


『…ッ!?…エシッ!?いつの間にっ…!!』


「…最初からここに居たが…?」


『…え?』


爽はすぐに周りを見回したが、宿舎らしきものは見当たらない。


『エシ…宿舎に居たんじゃ…??』


「あぁ、少し用があってここに来ていたのたが…。…まさかお前は宿舎を目指していたのか?…ここは城の真東に位置する場所だと言うのに…。相当な方向オンチだなお前は…。…いやしかし、まさかこんな所でお前に出くわすとはな。」


『…東…?…俺、宿舎と逆方向に向かって歩いてたのか…!?』


愕然とする爽に、ハッとひとつの疑問が浮かぶ。


『そ、そうだ。…ここは?ここで何してたんだ?』


「……ここは、ライフ・メーカー達の墓だ。…昔死んだ人達のな。まぁ墓参りみたいなものだ…。…死体は無いがな。…消滅するから…。」


『友達なのか…?』


「いや、……昔の恩人なんだ…。」


『そうか……。』


エシは少し悲しげな表情を浮かべると、スッと帽子で顔を隠した。


『…なぁエシ、今“昔”ッ…て言ったけどよ、お前、一体何歳だよ…?』


「私か…?私は、一応二十歳で死んだが…、此処に来たのは百年以上前かな…。」


『なっ…!?バッ…ババアじゃねぇかっ!!』


「…バッ!?…ババアッ!?」


エシは、驚きの表情を浮かべると、


「もう…絶対…部屋にいれないからなっ!!」


と、一言爽に言い放って、闇の中へ走り去っていった。



『…やべ…怒った…よな?…とりあえず追いかけねーと…。』


そして爽もエシを追い、闇の中へ走り出した。


(あいつ追いかけてたら多分宿舎に着くはず…!)


…その時だった。


「待て…、お前、遥瞳だな…?……銀髪…間違いないよな…。」


爽は闇の中、黒縁メガネの男に右肩を掴まれ、立ち止まった。


『なっ…何だお前っ?…誰かしらねぇけど、離せよ!』


爽は左手で肩を掴まれた手を振り払おうとしたが、振り払おうとしたその手をさらに掴まれ、背中に腕をひねられて身動きがとれなくなった。


『…何なんだよ…ッ!?お前っ!』


「俺は…、ライト…。…250人目のライフ・メーカー、希瀬輝(きせらいと)だ。…今から少し、お前を試さしてもらう。」


『…250人目のライフ・メーカー!?…試すって…何をだよ!?』


「…お前のライフを…いや、精神力、思考力、体力、全てを試す…。…つまりこうゆう事だ!“The rule book!”」


ライトがそう言い放った瞬間、ライトのポケットから急に辞書のような大きな本が出現し、同時に真っ黒のペンのような物も出現した。


『何だ…?…それは…ライフなのか…?』


「そうだ。これが俺のライフ、The rule bookだ。」


『そのライフで、何をする気だ…?』


「まぁ黙ってろって…。俺はお前を試すだけ。ただ、お前に“ルールを植え付ける”だけだ。」


『ルールを……植え付ける…?』


「説明するより、その身に受けた方が早そうだな。…刻め、The rule book!!」


ライトは出現した本に、同じく出現したペンで、何かを書き込み、そしてそのページをちぎり、それを爽の胸に強く押し当てた。


『なっ…何だよ…?…何すんだよ!?』


「黙ってな…。」


ライトが言ったその時だった。さっき爽に当てた本のページが、薄透明になったかと思うと、ゆっくりと爽の体の中に入っていった。


『…何だ…!?…コレッ!?何した!?』


「…俺の能力が発動しただけだ。…今、お前には3つのルールを植え付けた。一つ目は今から百歩までしか歩いてはいけない。ルールを破れば、“死ぬ”。2つ目は、30分以内に宿舎に行かなくてはならない。宿舎にたどり着けない場合、“死ぬ”。3つ目は、お前は“ゲーム中”、俺以外の人間からは“見えなくなる”。…それだけだ。」


『な…何、言ってんだ…?…死ぬ…?』


「…あぁ、死ぬ。…これはいわばゲームだ!…俺のライフの能力は、対象に、本に書いた3つまでのルールを植え付け、そのルール通りに対象を俺の“ゲーム空間”に引き入れる。ルールが守れなかったり、無理矢理破ろうとすればゲームのルール違反によるペナルティ、“死”が待つ。それが俺の能力、The rule bookだ。…ほら、もうゲームは始まっているぞ…?…30分以内に宿舎に行かないと死んでしまうんだぞ?」


『…ッ!!…お前…ッ!!頭イカれてんじゃねぇかっ!?…ここから宿舎までは、走ればギリギリ30分に間に合うかもしれねぇ…。でも、それを百歩で行けって…ッ!!どう考えても無理じゃねぇか!…まず、何の理由があってこんな事…ッ!』


「うるさいなぁ…。…だから遥瞳…、お前を“試す”だけの為にきたんだよ。…まぁ頑ギリギリまで足掻けよ。…設定は“easyモード”にしておいたからな。これで生き残れないようじゃ、お前はライフ・メーカーにむいてなかったって事だ。…一度死んだ命だろう?…それじゃあな。」


言うとライトは闇の中へ消えていった。


『……嘘…だろ…?…どうしろってんだよ……。』


(百歩…30分…“見えない”…?…助けが呼べないっていう事か…?)


『…くそ…ッ!時間が…ねぇ…ッ!』


≪残り時間、28分25秒----、残り歩数100歩≫



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