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間話 袖を離さない理由
ミユナは、眠る前に音を数える。
外の足音。
風で鳴る木。
レンの足音は、すぐ分かる。
重いけど、急がない。
近づいてきても、体が固まらない。
ごはんを置くとき、
必ず一歩、下がる。
手を引くのが早い。
奪わない、触らない。
それを、毎日同じ動きでやる。
夜、黒いものが動く。
怖い。
でも、それはミユナを避ける。
レンの影だと、分かる。
前は、誰かが立つだけで息が止まった。
今は、レンが立つと、
外の音が遠くなる。
「明日も……帰ってくる?」
聞いたのは、約束が欲しかったからじゃない。
明日を考えても、いいか知りたかった。
「ああ」
短い音。
それで、今日は終われた。
ミユナは、レンの袖を握ったまま、眠った。




