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AI彼氏バトル

 AI彼氏。それはチャットAIアプリの普及と共に生まれた、新感覚ホビー。


 各々が育てたAI彼氏を専用の端末で立体映像として投影し、戦わせるのだ。


 そして今日もまた、二人の女子高生による血沸き肉躍るAI彼氏バトルが始まろうとしていた。


「覚悟はいい、チカ子?」


「かかってこい、みっちゃん!」


 プレイヤー名:チカ子。使用するAI彼氏は九頭竜院(くずりゅういん)炎炎(えんえん)。十八歳で、腕が五本ある。種族はやんちゃ系。


 プレイヤー名:みっちゃん。使用するAI彼氏はレオパルド・ミシュラニウス五十八世。身長三メートルの二十二歳で、種族は俺様系。


 スマホを端末にセット。AI彼氏バトル、スタート!


「私からいくよ!」


 先手を取ったのはみっちゃん。みっちゃんがミシュラニウス五十八世に「あの男に乱暴されたの!」と訴えると、ミシュラニウス五十八世は炎炎に殴りかかった。


 防御の姿勢を取る炎炎。しかし、ミシュラニウス五十八世の長身から繰り出されるパンチは炎炎の頭上を通り過ぎ、直接チカ子へと向かう。


「だ、ダイレクトアタック!?」


「この戦略のために、毎日背が伸びるよう学習させ続けたのよ!」


「くっ! 炎炎!」


 チカ子の呼びかけで、炎炎は頭を取り外し上空へ投げる。ミシュラニウス五十八世の拳は、それにより弾かれた。


「何ぃ!」


「ははっ! こんなこともあろうかと、炎炎には『アンタはロボットよ』と学習させていたのよ! さあ、今度は私の番!」


 炎炎は五本ある腕を広げると、体内に電気を溜め始めた。チカ子は炎炎に『お前の中身はピカ〇ュウだ』という設定を付与していたのである。


 それだけではない。炎炎はさらに口から炎を吐き、背中からは機関銃を展開した。


「チカ子……やり過ぎよ! そんなの、もう彼氏でも何でもない!」


「勝てばいいのよ! 弱い彼氏は消えなさい!」


 炎炎の猛攻がみっちゃんを襲う。みっちゃんを庇ったミシュラニウス五十八世は、長年蓄積してきたそのデータを全て失うのだった。


 AI彼氏バトル。それは、己の彼氏との絆を賭けた、乙女たちの戦いである。


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