リアルウンコ
小学校の帰り道。道端で何気なく拾ったチラシには『黒谷商会』と書かれていた。そこには見たことも聞いたこともない商品がたくさん載っていたが、お金のない俺には手が出せないものばかりだった。
唯一買えそうなものといえば、リアルウンコという三百円のものだけ。説明には『成功に生み出された限りなくリアルなウンコです』とだけ書かれている。
そういえば、Bにぱっと見た感じ本物に見えるウンコのおもちゃを机の引き出しに突っ込まれて驚かされたことがあったっけ。あの時の仕返しをする時が来たのかもしれない。
俺はQRコードから黒谷商会のページに飛んで、リアルウンコを購入した。
それから三日後。黒谷商会から黄色い箱がクール便で届いた。開けてみるとタッパーが入っていて、中には極太サイズのかりんとうのような物体が一本入っている。それは俺の期待通り、いや、期待以上に精巧に作られたウンコだった。
箱の内側に貼り付けられていた説明書きが目に止まる。
リアルウンコの説明
・リアルウンコは、極限まで本物に近付けたリアルなウンコです。これを見た人は、百人中百人がウンコだと思うでしょう。
・本製品は生ものです。冷凍、冷蔵での保管を推奨します。
・本製品は臭いも再現しております。人に迷惑のかかる場所での開封はおすすめいたしません。
・本製品は食べられません。
・廃棄する場合は、トイレに流してください。
説明書きの下部には『私が作りました』と全然知らないおじさんの顔写真が貼り付けられていた。
これは凄い。慌てふためくBの姿が、今から目に浮かんだ。
翌朝。俺はBの席に仕込みを行うため朝早くに家を出た。飛び込んだ教室にはまだ誰もおらず、何だか世界に自分一人だけになったような気持になる。
そんなことより、急がないと。俺はランドセルからタッパーを取り出す。蓋を開けると、悪臭が鼻を突いた。
いいぞ。誰がどう見ても完璧にウンコだ。俺はそれをBの椅子の座面にコロンと落とし、自分の席に着いた。Bか来るのを今か今かと待っているうちに、一抹の不安が頭を過る。
教室には俺一人。充満する悪臭。そして、Bの席にはリアルなウンコ。この状況を誰かに見られたら、俺がBの席でウンコをしたと思われるんじゃないだろうか。
精巧に作られた偽物だと言っても、これだけリアルなウンコなのだ。言い訳としか受け取ってもらえないんじゃないだろうか。
その時、教室のドアががらりと開いた。