ホビーマンション
僕の住む八階建てのマンションが七階建てに変わっていると気づいたのは、小学校から帰ってきた時だった。何だかいつもより低く感じて階数を数えてみたところ、何度数えても七階しかない。
僕の家は一番上の八階だ。なくなっていやしないかという焦りから慌ててエレベーターに駆け込むと、階数を示すボタンから『1』が消えていた。到着した最上階には、掠れたローマ字で書かれたうちの表札が確かにある。どうやら、消えてしまったのは一階のようだった。
翌朝になると、マンションの階数はさらにもう一つ下がっていた。目を擦り何度数え直しても、六階しかない。僕はこの話を学校で披露したが、誰も信じてはくれなかった。
夜になり、仕事から帰ってきた両親に僕はこのことを相談する。だが、仕事で疲れているんだと取り合ってもらえなかった。
次の日になると、マンションの階数は五階にまで減っていた。おかしい。僕以外の人が気づいてパニックになってもいいはずなのに、マンションの人も、周辺住民も誰一人この奇妙な現象を騒ぎ立てない。
そうして、マンションの階数は四階、三階、二階と日に日に下がっていった。
そしてついに、マンションは最上階だった僕の家のあるフロアだけが残される。エントランスから中に入ってすぐに八階と表示されているのは、妙な感覚だった。
僕はこの奇妙な現象の正体に気づいていた。これは、達磨落としなのだ。だから階数は下の階から順に減り、最後に八階が残された。
そしてきっと、この八階も今夜で消える。
何度訴えてもパパとママは「子どもの妄言だ」と僕の言い分を聞いてくれない。だから僕は仕方なく、その日の夜に家を出た。
翌朝。怖かったが、確認のためにマンションに戻る。おそるおそるマンションを見上げると、そこには元通り八階建てのマンションが聳えていた。
よかった。元通りになったんだ。いや、きっと僕は悪い夢を見ていたに違いない。マンションに入ろうとした時、僕はふと違和感に気づき、マンションの側面に回った。
すると、三階の中央が四角くくり抜かれていた。そして、くり抜かれた部分と思しきものがマンションの屋上に積まれている。
ああ。どうやら、次はジェンガが始まったようだ。