第八話
カナは今回、さらに慎重に行動することを決めた。未来の記憶をたどり、レンが危険に近づく要因をすべて排除するつもりだった。そして、何が起きても彼を守ると誓った。
レンに気づかれないよう、村の外れで噂されている武装集団の情報を集める。今回はひとりで倉庫に向かうのではなく、村の周囲に注意を払う形で動いた。
その中で分かったのは、武装集団の標的が村の何かを奪うことであること、そしてレンが偶然にもその計画に巻き込まれることだった。
その夜、カナは一人でレンを救うための策を講じた。
「カナ、どうした?最近、元気ないけど……」
レンは優しい目でカナを見つめる。彼の言葉に心が揺れながらも、カナは笑顔を作った。
「大丈夫だよ、レン。ちょっと考えごとをしてただけ。」
彼に未来の記憶を話したい衝動を必死に抑えた。話してしまえば、変に未来を変えてしまい、レンが余計に危険な状況に首を突っ込むことになるかもしれない。それだけは避けたかった。
武装集団が動き出すという夜、カナはレンに何も告げずに行動を開始した。彼女は自ら囮となって集団を遠ざけることで、レンが危険に巻き込まれることを防ごうとしたのだ。最悪、レンさえ生きていれば良かったのだ。
銃声が鳴る前、先に広場に行き、なんとかしようとしていたのだが、計画は途中で狂った。
レンがカナの行動に気づき、彼女を追いかけてきたのだ。
「カナ!何をしてるんだ!」
「レン、来ないで!」
二人が叫ぶ間もなく、2人に気がついた集団の一人が銃口を向けた。その瞬間、レンはカナを庇うように飛び出し――またしても彼女の目の前で崩れ落ちた。
「レン……!」
カナの叫びが夜空に響いた。絶望の中で彼女はまた短剣を取り出し、涙を流しながら自らの命を断った。
目が覚めると、またあの部屋にいた。
「また……戻ったの?」
カナは目を覚ますと、見慣れた部屋を見渡した。三度目の死に戻り。彼女は鏡の中の自分の顔を見つめ、深い溜息をついた。
「どれだけやり直しても、レンを救えない……」
過去を知り、未来の悲劇を防ごうとしても、運命は揺るがないようだった。レンが村を救おうとする性格、そして彼の優しさがどうしても彼を危険な状況に導いてしまう。
カナは自分の頬を軽く叩き、決意を固めた。
「何度でもやる……レン、あなたを絶対に救ってみせる……!」
そして、また同じルートを辿り、例の日を迎えた。