表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

6/12

第六話

ある朝、レンが家を出た後、カナは街で情報を集めることを決めた。未来の記憶では、レンが命を落としたのはどこかの組織が、村を襲ったのが原因だった。ならば、その組織の動きを調べ、接触を防げばいいのではないか――そう考えたのだ。


市場で買い物を装いながら、周囲の噂話に耳を傾けるカナ。村の外れで何やら怪しい商人が出入りしているという話を聞くと、胸がざわついた。


「これかもしれない……」


その晩、レンが帰宅した後、カナは彼に何気ない顔で尋ねた。


「ねえレン、最近村の外れで何か怪しいことが起きてるらしいよ。何か知ってる?」


レンは目を丸くしたが、すぐに優しく笑った。


「いや、何も聞いてないけど。カナ、そんな噂話を信じる必要はないよ。大丈夫、俺がいるだろ?」


その言葉に安堵しながらも、カナの中には確信が芽生えていた。「レンが無関係だとしても、これが未来の悲劇の原因かもしれない。何が起きているのか確かめなくちゃ。」


次の日の夜、カナは意を決して村の外れへ向かった。月明かりの下、薄暗い道を歩いていると、遠くから低い話し声が聞こえてきた。音のする方へ近づくと、何人かの男たちが小声で何かを話している。


「……次の取引はこの週末だ。倉庫でな。」

「わかっている。そこまでバレなきゃいいんだろ?」

「あぁ祭りの日のためにな。」


カナは茂みの影に隠れ、息を殺して話を聞いた。何か良くないことが進行しているのは間違いない。この取引がレンにどう関係してくるのかは分からないが、未来のあの悲劇と無関係とは思えなかった。


家に戻ったカナは、未来の記憶を思い返した。レンが命を落とした原因は、その優しさが災いして何かに巻き込まれた結果だった。ならば、自分がその危険の芽を摘むしかない。


「レンに知られないように、私がやるしかない。」


カナは決意を新たにした。


その週末、カナは取引が行われるという倉庫に向かった。手には村の鍛冶屋で借りた小さな短剣を握りしめている。


倉庫の周囲は静かだったが、中からは話し声が漏れ聞こえてくる。カナは慎重に中を覗き込んだ。そこには怪しげな商人たちと、何箱もの荷物が並べられていた。


「……武器だ。これって、未来のあの事件の始まりじゃない?」


カナは唾を飲み込んだ。このまま放置すれば、この取引がきっかけで何か大きな問題が発生し、レンに影響を及ぼすかもしれない。


彼女は短剣を握りしめ、少しずつ倉庫の中へ足を踏み入れた。しかし、その瞬間、何かが後ろから彼女の手首を掴んだ。


「何をしているんだ?」


聞き覚えのある声に驚いて振り返ると、そこにはレンが立っていた。


「レン!どうしてここに?」


「カナ、君こそどうしてここにいるんだ?一人でこんな危険な場所に来るなんて!」


レンは鋭い目で彼女を見つめた。


「俺がいない時に、何か調べてると思ってたけど、こんなことをしていたなんて……説明してくれ。」


カナは口をつぐんだ。未来の話をするわけにはいかない。レンを巻き込むつもりもなかった。


「ただ……危ないことが起きそうだったから。」


それだけを絞り出したカナに、レンは深くため息をついた。


「俺を信用してほしい。何があっても、カナを守るのは俺の役目だ。でも、こういうことは一人で抱え込むな。分かったか?」


カナは言葉を失い、ただ頷くことしかできなかった。


二人で倉庫を離れる途中、レンがぼそりと呟いた。


「……危ないことが起きる、か。その勘、当たってるのかもな。」


彼の言葉に不安を覚えながらも、カナはレンの背中を見つめて決意を新たにした。


「未来は変えられる。絶対に、変える。」


しかしその夜、村の外れに現れた一人の影が、新たな危機を告げるかのように倉庫を見つめていた――。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ