表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/12

第三話

カナは新たな決意を胸に秘め、行動を起こすことを決めた。未来を変えるには、この村を出るしかない。レンと二人で新しい生活を始めるために、準備を進める必要があった。だが、彼女たちが自立して生きるには、数多くの困難が待ち受けていることを、カナはよく分かっていた。


「レン、ちょっと話があるんだけど」


次の日の夕暮れ、カナはレンを呼び出した。場所は、二人のお気に入りの小さな川辺。ここは周囲から目立たず、二人だけの秘密の場所だった。


「どうした? 昨日の話の続きか?」


レンは首をかしげながらも、その目には真剣さが宿っていた。


「うん。村を出る準備をしようと思うの」


カナの言葉に、レンの表情が少し固まる。


「そんな急に? 俺たちまだ何も準備できてないぞ」


「だから、これから準備するの。お金とか、必要なものを集めるの。それに、どこに行くかもちゃんと考えないと」


レンは少し黙り込んだ。彼自身もこの村にいることが辛いと感じていたが、行動に移す勇気がなかったのだ。


「……分かった。お前が本気なら、俺も協力するよ」


その言葉に、カナはほっと胸をなでおろした。彼の協力がなければ、この計画は始まりすらしない。


次の日から、カナはレンとともに村を出るための計画を本格的に始めた。最初に必要だったのはお金だった。レンは畑仕事を手伝い、少しずつ報酬を得るようにした。カナも雑用を引き受け、わずかでも蓄えを増やそうと努めた。


村の人々は二人を快く思っていなかったが、彼らが働く姿を見て無下にはできなかった。


「お前ら、最近よく働いてるな」


ある日、村長が皮肉めいた声をかけてきた。


「この村を出るつもりなんじゃないのか?」


その言葉にカナは一瞬息を飲んだが、すぐに笑顔を作り返した。


「そんなわけないじゃないですか。ただ、少しでも役に立ちたいと思って」


村長は不信感を抱きながらも、それ以上は何も言わず立ち去った。カナは心の中で冷や汗をかきながら、レンに耳打ちした。


「バレるのも時間の問題かもしれないね」


「だったら急がないとな」


数ヵ月が過ぎた頃、二人の手元には最低限の資金が集まった。次の課題は行き先だ。


「行くなら、暖かい場所がいいな」


レンが冗談めかして言うが、カナは真剣に地図を見つめていた。未来の記憶から、彼らがたどり着いた村の場所をぼんやりと思い出していた。そこは小さく貧しい村だったが、住民たちは温かく、二人を受け入れてくれた場所だ。そして、襲われてレンを亡くした村だ。あの襲撃からレンを救う。それが、2人が幸せになり、助かる方法だと信じている。


「ここに行こう」


カナは地図の一点を指差す。レンはそれを見て頷き、計画が具体的になっていくのを感じた。


「よし、準備は整ったな」


レンの言葉にカナも小さく微笑んだ。この計画が運命を変える第一歩になると信じて。




計画が進む中、カナたちは新たな問題に直面した。それは、村の人々の目だ。二人が頻繁に行動を共にしていることで、周囲の疑念が強まりつつあった。


「最近、あの二人妙に仲がいいわね」


「もしかして、この村を出るつもりなんじゃないか?」


噂は徐々に広がり、村の大人たちの耳にも届き始めた。


「カナ、少し慎重にならないとダメだ」


レンが真剣な顔で言う。


「分かってる。でも、焦らないとこの計画が台無しになる」


そんな中、村長が二人を呼び出した。


「お前ら、最近妙に動き回ってるな。何を企んでいるんだ?」


村長の目は鋭く、二人を試すような視線を向けてきた。


「いえ、特に何も。ただ……村に迷惑をかけたくなくて、ちゃんと働こうと思っているだけです」


カナは必死に笑顔を作りながら言い訳をするが、村長は納得した様子ではなかった。


「まぁいい。だが、変な真似をするんじゃないぞ」


村長が立ち去ると、カナは力なく溜め息をついた。


「危なかった……」


「もう少し慎重に行動しよう。これ以上目立つのはまずい」



次の日、二人は再び村の外れで落ち合った。村を出る日程を決める必要があったのだ。


「来週の満月の夜に出よう」


レンが提案する。夜なら誰にも気づかれず、村を離れることができるからだ。カナもそれに頷き、準備を急ぐことを決意した。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ