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この作品には 〔ガールズラブ要素〕〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

私の歩みを止めるものは~帝国の次期賢帝は世界征服しに行きます~

作者: ルナ

※『リメイアル チート少女は友を探す』四章五十一話までのネタバレが多少含まれています。

 ま、読んでも多分大丈夫!(多分)(保証はしない☆)

「貴様の婚約を破棄するッッ!!」


一世一代の大勝負のような張りのある声が会場全体にとどろいた。まさか自分の代にこの様な喜劇を見ることができるとは、というのが大半の貴族(観客)の心情だろう。

貴婦人はまぁ、と驚くように口元を無駄に豪奢なうちわで隠し、様子見をし始める。

紳士はおしゃべりなマダムをこれ見よがしに誘導する。


大きな円型の広間の中央にたたずむ令嬢と、不敬にも王家両夫妻の座る椅子のある、すこし高い段の上でふんぞり返る王子とそれに寄り添う令嬢に。


「貴様は俺の隣にいるシリアル・マイナー嬢の器物を盗み、破損した容疑がかかっている!証拠も出そろっている状態だ!!」

「…」

「…大丈夫か?シリ」


目の前の令嬢が俯き、沈黙しているというのに声をかける相手は横にいる令嬢だという。

皆が一瞬呆れた。しかし、そんな些細な心情などこの状況では捨て置くものだ。この一挙手一投足にこれからの貴族社会が左右されるのだから。

王子が令嬢に甘い声で聞くと、その令嬢はまんざらでもないように令嬢は瞳に涙を潤ませ、はい、とかすれたような声で言った。

さしずめ悲劇のヒロインといったところだろう。

隣にいるというよりかは抱いているといった方がよいのではないかという突っ込みは誰もしない。

そこまで空気の読めない輩は貴族社会に呑まれて消えていくだけだ。


「そしてなにより!貴様の立場を使い、多くの貴族令嬢、令息を従わせ、集団で彼女に対する心無い言葉をかけ続けることなど、言語道断だ!」

「…」

「聞いているのか⁉貴様ッ」


男の子が何か申しているその間、ずっと中央にいる令嬢は少し顔を俯けていた。

そして、ついに顔を上げた


「やっと聞く気になったか、貴様!さっさと…」

「申し訳ないのですが。」

「なんだ?まだ何か悪あがきをする気か?」


いいえ、とでもいうようにゆっくりと優雅に首を横に振る。

気品あふれるソレは男の子だけでなく会場の人々を震撼させた。

そして一言、



「…あなた()()、誰でしょうか?」

「は…?」


人々は呆気にとられて思わず口を開けた。

男の子は人一倍に間抜けな顔をさらしていた。


「お、お前ついに婚約者の顔すら忘れたのか!?」

「婚約者?」

「おまえぇっぇぇっぇぇ!!!???」


こてん、と首をかしげる令嬢は愛らしかった。が、その言葉がいけなかった。

呆気にとられるのも束の間、わなわなと肩を震わせ、激高しその感情のまま言葉を吐く


「もう許さない。不敬だ!牢屋にぶち込め!処刑にしてしまえ!」

「…それ、できると思いますか?」

「俺はこの国の第一王子だぞ!?できないわけがないだろう!!衛兵、さっさとぶち込んでしまえ!」

「……」

「なぜ動かない!?国家反逆か?」

「はい」

「は??」


衛兵ではなく、平然と令嬢は肯定の言葉を告げる。

男の子は頭を抱えた。なんなんなのだ、こいつ…と理解不能の令嬢(化け物)をみて目に涙をためる。

周りは本当に喜劇すぎて苦笑し始めるモノすら現れた


「国家反逆。はい。私は世界反逆者(リベリオンピリオド)なので」

「りべりおんぴりおど…?」


男の子だけでなく周りもぽかんとした目でこちらを見る。


「私の名は何でしょうか?エルアレ・クロイナー」

「ッ…不敬なッッ!!!…貴様の名前はエリアナ・ユライゼンだろう?」


隠す必要はもうなさそうね…解除


令嬢の姿が変わる。顔は絶世の、傾国の美女。体も妖艶な大人になったが、服はそれを隠すように華やかだ。ここにいるどんな令嬢でも見劣りしてしまう美女が現れた。

少女は迷うことなく前に突き進む。男の子のいる場所…王の座る椅子に向かって。

男の子はその様子にぎょっとして後ずさりし、令嬢を慌ててリードして避ける。

そして、


どん


鈍い音がして王妃の座が蹴り落とされた


「え…?」


誰かが驚いて声を漏らした。しかしそれがこの場にいる全員の総意だった。

王妃の座を蹴り落とす。それがどれだけの重罪で、いや、蹴り落とすなどという発想は恐ろしすぎて誰も予想だにしなかった。目の前で起こるまでは。

そして()()()()()()()()()衛兵は恐怖を感じていた。

あの玉座の重さはとてつもない。毎日鍛えている衛兵が三人がかりでやっと動かせる程度のもの。それを軽々と蹴り倒すことができる少女はどれだけの膂力なのかということを


「私の歩みを止めるモノは」


どんッ!!


王の玉座を蹴り落とす

彼女は王の玉座と王妃の玉座があった高台で背筋を張り、立つ。


「いない」

「ッ…」

「あなたたちは私を楽しませることができますか?あなたたちは私が遊ぶに値するモノたちですか?それとも、」


冷え冷えとした視線が彼ら(貴族ども)に向かって向けられる


「ただの玩具(ごみ)ですか?」

「…ッき、貴様は誰だ!?エリアナではない。彼奴は貴様のような人間では断じてない!」


まだ吠えれるのかと、半ば感心した。

そして、その愚直さに敬意に表して答えてやろう、と思った。


「私の名ですか?そうですね。」


ふふ、と笑った。この世界で知らぬ者はいないだろうに、私の行動が衝撃的過ぎて分からなかったのね、と彼らの馬鹿さ加減に、呑気さに少し呆れた。


「アフロディーテ・ローザ」

「ロ、ローザ…まさかッ」


バッと土下座をする

ここまでされて疑うはずもない


「エル、ど、どうしたの?」

「早く、シリも早く!あのローザ帝国だ!!」

「ロ、ローザ帝国…!?」


男の子の言葉に周りもどよめき始める。嘘だろ、と。これまでのやり取りを喜劇扱いしていた貴族ドモ(豚共)は目に見えるほど焦り始める。


…次の(獲物)に早くいきたいのですけど…いつまでこの茶番をやらせるつもりなのでしょうか、この玩具(ごみ)どもは。まぁ、仕方ありませんね。

お父様にも寛大な御心を持つように、と何度も言い含められていますから。この程度、些事なものでしょう。


はぁ、とため息をつく。それを耳にした瞬間何とも言えぬ緊張が会場に広がった。とてつもなく、麗しい仕草だが、今はそれに対して感嘆の息を漏らしている時ではない。この国の人々からしたらそんなことでは済むはずがない。

相手は()()帝国をして傑物と噂される皇女、アフロディーテ・トーカリア・ローザなのだから。





時は数ヶ月前に遡る。


ある日のこと。数十人いる義兄弟姉妹が集う珍しい晩餐会だった。

珍しく久しぶりに会うからと無駄に豪華に施された食事があるだけでこれと言った感慨深さも、感動も何もない


…そんなわけでもない。少なくとも、仲良くしている間柄からすればこれは再会のまたとない機会だ。

一年に何回、あるのかすら定かですらない、皇帝の気まぐれで行われるこの社交会(パーティ)

一部の人間からしたら本当に楽しみな会である。


「あら、ティディ。元気だったかしら?」

「…は、はい、御姉様。」


目元をくっきりと強調するアイシャドーをよくつけるフレイヤ御姉様。アイシャドーだけが目立つのではなく、きちんと御姉様を引き立てるようなものになっているところにそのセンスの良さを感じる。


私も御姉様みたいに堂々と立ってみたいなぁ…


ふふ、と妖艶に笑い、アフロディーテの頭を優しくなでた。


「あなたもいつか、こうなるわ。大丈夫。安心なさい」


流石はフレイヤ御姉様。私の胸の内を見透かしているかのよう…本当にすごい


「お、御姉様」

「どうしたの?具合でも悪い?」


少し緊張した声色になってしまったからか、フレイヤ御姉様がご心配なさってくれた。きっと顔も少し青ざめたものになっているのかな…


「違いますの、あの、えと、おめでとうございます」

「凄いわぁ。物知りね、ティディ。ありがとう。」


ふんわりとバラの香水の香りが広がった。私を御姉様が抱きしめたのだ。最初はうれしさよりも戸惑いが大きかったけど最近は慣れてきた。


御姉様の香り。この香りが私は好きだ。優しくしてくれる御姉様の香りだから好きなのだ。

名残惜しいけど時間も迫ってきている。渡すのなら今のうちに渡さなければならない。


少し、御姉様の身体を押しのけてわきに置いていたモノを持つ。


「御姉様、これ、受け取って。」

「まぁ、綺麗。さすがティディ。やはりあなたは目がいいのね」


その御姉様に私は自分で選んだ薔薇の花の花束を持ってきたのだ。

この国の風習だ。


「ありがとう。…いい香りね」


薔薇の花に顔を少しうずくませて、匂いを嗅いで御姉様はそう言った。


今回は白い薔薇にしてみたの。御姉様は濃い色のドレスが多いからいわゆるギャップ萌えという奴を狙ってみた。

…ぎゃっぷもえ?何かしら、それは…?


心の中でこてんと首をかしげながらも、御姉様との歓談でその疑問はすぐに消える。

そんな時だった。


かたん、と音がして明かりがすべて消えた

同時にざわめきが広がる。何があったのかわからない。


御姉様は⁉


パっと手を伸ばして()()()()御姉様の腕をつかむ


「ティディ!」

「お、御姉様!」


私は初めて自分から御姉様に抱き着いた。


「大丈夫よ…私がいる、から」

「御姉様ぁ」


御姉様が少しうずくまったのか、顔が近いところにあった。腰に抱き着いたつもりだったから少し驚いた。だから、少ししゃがんだ。いつもの場所がよかったから。


「ふふ…」


あの、笑い声が少し力なく聞こえたのは気のせいかな

手に、暖かい何かが当たってるのは気のせいなのかな


かたん、ともう一度音がした。明かりが元に戻った。


「え‥?キャァッァァッアッァァァッァ」


鋭い悲鳴があたりに響く。会場にいる人という人の視線がその声の発生源に行き、そして視線の先、私の方へ向く


私は床に座っていた。当然だろう。しゃがんでいるのだから。

そのドレスの膝が真っ赤に濡れていることなど(痛い)、白い薔薇がまだらに赤に染まっていることなど(痛い)、手が液体でまみれていることなど(痛い)、私は見ていない。

(痛い)

知らない。

痛い

違う

痛い

御姉様はッ


御姉様は、安らかに眠っていた。床に大きな赤い血だまりを作ってなお、安らかに目を瞑っていた。

死んでいることは明らかだった。


「誰だッ!!!」


周りが後ずさる。いつも大人しい私が、影のような私が、存在すら認知されていないような私が、こんな咆哮を発したのだ。


世界で一番祝われるべき人間が、なんで、なんで?


私の脳が処理不可能なレベルの処理を求めて昏倒を迫ってくるがそんなものはどうでもいい。

本当に些細でつまらない。些事だ。

どうでもいい。御姉様をこんな目に合わせたやつを吊るし上げるまで、私は


「…これはいったいなんだ?」


ひやりとした汗が背筋を伝う。視られている。何か大きなものに。多くの者どもはこの気配に圧倒されて本能的に竦むか、後ずさるか、精神が脆弱なら自死を選択しようとするだろう。


「御父様、遅かったですわね」


今の彼女の思考回路はもはや暴走(バーサーカー)状態。そんなものに圧倒されるわけでもなく、どこ吹く風といった感じで文句をさらりと告げる。そんな言い方はやめなさいという視線が突き刺さることはない。なにせ初代皇帝の御前だ。誰も口をはさむことなどできない。


「そうか。それでなぜこんな有様になっている?」


皇帝の方は特に気にする様子もなく、アフロディーテと話を続けようという姿勢を見せた。


「お立ちになっているのではお疲れになるのでは?」

「お前は私を舐めているな?」

「ふふ、冗談ですわ。それで御父様、事情説明でしたよね?」

「あぁ」


冗談などいうな!!という周りの面持ちは全く気にせず、親子の語り合いが始まった。

…この殺伐とした空気間で行われているのを気にしなければ親子の語らいとして成立するだろう。


「この会場が停電になって光が差したら御姉様が倒れていたというわけですわ」


少し逡巡したような間があった


「…衛兵」

「ッ…は、閣下」

「貴様らいったい何をしていた?」

「ッッ!!!」


明らかに怒気を含んでいた言葉にその指すような視線を衛兵に向けて放っていた。会場はその様子を見て、たかだか一人の血縁関係にある女の言うことを、今までは影すらなかったような女の言葉を真に受けたことの衝撃を感じていた。

なぜ、という疑問は絶えないだろう。なぜならここにいるものは、今は亡きフレイヤを除いて愛されてなどいないのだから。もっと言えば、興味関心すら持たれていない。多くはただの契約により定められているからここにいるだけである。


数秒立っても衛兵は何も口にすることなく黙り込んでいた。

それを許すほど皇帝は甘くない


「そうか、私の眼が良くなかったというわけか。」

「へ、陛下ッ!」

「言いたいことがあるのならば早く言え。私はそこまで優しくなどない。」


まるでその言葉を希望のように思ったのか、聞いた瞬間、目がきらりと光った。

そして、私の方を指さした


「失礼を承知で申し上げますが、そのこむす…ぎぁ!?!?!」

「失礼を承知で申し上げる?その子娘?そう言ったか?それとも私の耳がおかしいのか?衛兵、貴様は誰を小娘と称したのだ?」


数メートルは離れていようところで血しぶきが出たのが見えた


噴水のようね…どうやってあそこまで()()()()()()()()()()を届かせたのかしら?


面白いものを見た、とでもいうように私はその剣と御父様に見入っていた


「…衛兵が守られる立場の皇族よりも弱いとはな」


落胆の色が見えた。仕方がないだろう、と私は思った。

どちらの意味でもだ。衛兵が弱いのではなく、御父様が強すぎるだけ。そうでなくとも、皇帝から授かるモノが何であれ、逆らえないのだから。


「御父様、どうするんですの?御姉様がお可哀想だから早く結論を言ってくださいまし。」


暴走(バーサーカー)状態の彼女にはそんなこと関係ないのだが。

彼女は慈しむ様にフレイヤの髪に触れる。


もう、御姉様の髪が揺れることはないのね…


自身よりもフレイヤの方に強い関心の向いている彼女を皇帝は、聞いていた像とは違うなと感じていた。というか、結び付かないのだ。


ここまで強く深く愛されていることを、フレイヤ自身が気付かなかったとして、まだそれはいい。そこではないのだ。()()だ?


「…さっさと葬儀を開こう。この話の続きはそれが終わってからだ」

「わかりましたわ、陛下」


自分で御姉様を抱えて連れていきたいと思った。けど、流石に筋力がなくて無理だった。

多少は武芸に励んでいるのに、と自分の力を不甲斐なく思った。

御姉様が乳母に抱えられているのを見て、横に付き添うように歩いた。

そして、自分で初めて戸を開けた


「今日はお開きだ」


皇帝の一言が扉の閉まる直前聞こえた。

廊下はひんやりとしていた。御姉様が死んだことを暗に告げてくるようなするどい冷たさだった。


「…ティディお嬢様」


乳母が話しかけてきた。まさか乳母から話しかけられるとは思っていなくて驚いた。


「私から貴方様に話し始めること、貴方様の御名前をこうも軽々しく呼んでしまったことは不敬だと存じておりますが、この一時だけよいでしょうか?」

「構わないわ。…私の乳母でもあったのに、そうよそよそしくされると寂しいわ」


素直な気持ちを伝えてみた。フレイヤ御姉様以外にはそんなこと言ったことない。昔は乳母との距離も近かった。でも、私の性格がああだったから長らく距離も開けてしまっていた。


「そうですか、それはありがたい御心です。」


この少しゆっくりとした話し方が大好きなの。安心させてくれるテンポだから。


「ティディお嬢様は知っておられましたよね。今日、フレイヤお嬢様が立太子されることを。なぜ、今日かお分かりになられていますか?」

「いいえ」

「フレイヤお嬢様の御母様の命日だからです。そして、ティディお嬢様の御母様の命日でもあります」

「…そうだったのね。でも、命日だからと言って今日にする明確な理由にはならないわ」

「…殺された日なのです。」

「そうだったのね」


先ほどの命日を告げられた時とは明らかに違う、自分でも驚くほど淡々とした声だった。


乳母が少し止まった気がするけれど、きっと気のせい


「…お嬢様、どうか、お願いします。」

「…?……わかりましたわ」


いつの間にか、乳母の顔が見えないぐらい後ろにいた。どうやら、私の気付かないうちに乳母の足のスピードが速くなっていたらしい。


…もしくは私が止まっていたのかしら

自分でもわからないって怖いわねぇ


「では、御姉様をよろしくお願いいたします」

「もちろんです、皇女様」


少しこちらを振り返ってこちらに小さく会釈するとそのまま進んで行った


…少し違和感があったのだけれど気のせいよね


私はそのまま部屋に帰った。

また自分で部屋の扉を開いた。開くことに対し元々忌避感があったわけではない。けど、ここまで抵抗なく開けるとは思えなかった。


やっぱり、()()が原因ですのね


令嬢ならしてはいけないとはわかっている。しかし、これに関しても特に忌避感も嫌味も感じない。だから、ゴロンと寝具に寝転がって、未だに続く自分の頭痛の原因に向き合った。


寝間着に着替えずにやってしまったのは拙かったかも知れませんわね…

さて、この頭痛はいったい何なのでしょうかね…まぁ、大方分かってはいますわ


処理能力を超える情報量が一気に流れ込んだことで防衛本能が働き、他の機能を停止させて容量を開けようとした。しかし、私が気合でそれを破ってしまった。


気合というか怨念かしら…?


その一連のせいで、私の脳は処理し終えれなければ最悪精神的に死ぬので、仕方なく、処理能力を上回る情報を処理した。処理をし続けることでヒートアップし、(頭痛)に至る、と。


…なかなかやばいことをしていましたわね…頭痛もそろそろ収まる気もしますし、さっそくちらりと情報を見てみましょうか。それに、ここまで私の脳を圧迫するものなんて想像もできませんから少し…いえ、かなり気になっていますからさっさと確認いたしましょう。

最初は、浅いところから


ッうァ…まだ、痛い…マジで言ってますの?

?…「まじ」って何かしら…まさか、これ、異世界転生という奴なのでは…?

ギャップ萌えとやらもこの影響だったのかしら?

異世界転生ってなんですの…?先ほどすんなり出てきましたけれども。ろくなものじゃなさそうですわ…。

…なにか否定的な視線を浴びせられた気がするけれど…気のせいに決まっているわ。この部屋に人なんて私以外いないもの。


とりあえず浅いところは見れたわね

まず、私は前世でも皇族的立場にはいたみたいね。

あら、海がきれいね。表面層に残るほどということは本当に心に残る景色ということね。庶民的と言ってしまえばそれだけだけれど。…これは


胸糞が悪いですわね。まさか、最期の数日以外こんなのだなんて。最期は…よかったですわ。楽しそう。でも詳しくは見ないでおきましょう。私はこの子に影響されたくないから。記憶も、映画とやらのように見ておきましょう。他人事のように。

…さて、いつの間にか思ったよりも時間が流れていたみたいね。

でも、有意義な時間だったわ。これ以上は時間はいらない。もう決めましたから。


御姉様の後を私が継ぎます。御姉様の敵を討ってから。

この前世(リメイアル)を使って。




数日後


「あなたですね」

「ッ⁉…お前は誰だ」


質問が短すぎて理解できなかったらしい。これは自分の過失だと少し反省しつつ、逸る気持ちを抑えながらもう一度、問う


「私の御姉様を殺したのはあなたですね」

「お前の姉?」

「えぇ。フレイヤ・ローザのことですわ」

「あいにく皇族の方は知らないものでな」

「そうでしたか。では、もう用済みです。いりません。」


諦考平穏_________#$%&’O


「あなたが御姉様を殺しましたか」

「_____はい」

「そう…」


少し、俯いたかと思うと、またその貌を見せてほほえんだ。


「海に向かって歩き続けて帰ってこないでくださいな」

「かしこまりました。皇女様」




数ヶ月後


「…」

「…」


高級な調度品が並ぶ応接室。その中で出された紅茶を次期皇太女として恥じぬ礼節を持って、小さくこくりとのどを鳴らして飲む。その間、静かな時が流れる


「…」

「…」


ことり、とティーカップを丁寧に戻す。目前にいる相手を静かに見据える。

当然、この間も沈黙が流れている。

相手もまた焦ることなく、こちらを見据える。


最近、王族がしっかりしていながら貴族がだらしない国が多くある中で、珍しくこの国は王族がだらしなく、貴族がしっかりしているらしい。そのどうにか国を支えている貴族の筆頭は宰相でもある公爵。公爵は宰相としての仕事だけでなく、王族のしていない部分まで仕事を行い、公爵としての業務である自身の領地の管轄の確認も他人にすべて任せるのではなく、執事長や秘書たちと共に必死に捌いている。そして、自身の足で毎年ランダムに領地を訪れ情勢を確認する、という人外のような働きを見せている、らしい。それだけでなく、周りの貴族とも協力して財政をどうにかもたせているとか。

その情報はどうやら嘘ではなかったらしい。

噂程度の信用しかもっていなかったけれど…と、この情報を与えてくれた情報屋に多少の信頼を寄せることに決めた。


礼節が伴っている。それに加えて賢く、リーダーシップもあると見える。なのになぜ王族(塵芥)に政権の中心を渡したままなのかしら?

まぁ。いいわ。


「ユライゼン公爵」

「っは。失礼ながら、この度はお忍びで何用で当家を訪れたのでしょうか。アフロディーテ・トーカリア・ローザ様。」


賢い。いい、いいわぁ。

お忍びでとわざわざいったのは今回不備あっても許せよ?っていう圧かしら。ここまで完璧なのにどこに文句をつければよいのかわからなくて逆に困りますわ。私の名前をフルネームで呼んだということはあなたの正体知ってるけど、それでも引くつもりはないよ。ということかしら?もしくはその程度の情報はつかめる程度の力があるぞという主張(アピール)かしら?

とにかく、賢いのは今ので十分にわかったわ


「いえ、別に大した用なんてないのよ」

「はぁ…では、なぜでございましょう?」

「__そう。ただ、あなたの娘が困っていると、少し風のうわさで耳にしまして。」

「まさか。別に貴方様に気にしてもらうほどの事ではありませんよ。」


ふざけた話だとでもいうように、失礼にならないレベルで一笑する。

その様子を見て、隠すのが上手いなと、少し感心した。

今までの相手は私と駆け引きしようとする人は稀だったからだ。それも、王族だというのに、だ。公爵の方が身分が低く動きやすいのもあるだろうが、それでもここまで大胆に、緊張した様子も物怖じした様子もなく、会談が続くとは思っていなかった、というのが、アフロディーテの本音である。


「そう。あなたの娘、エリアナ・ユライゼンとその婚約者であり、この国の王太子でもある、第一王子エルアレ・クロイナーの中が不仲だという話は嘘なのかしら?」

「えぇ。まぁ、若気の至りでしょうから。数ヶ月あとには王子もきちんとご理解なさるでしょう。王がどういうものなのかを。」


公爵が激高しそうなところに触れましょうか


「…あら?聞いている話と違うわねぇ。あなたの娘が力及ばず、エルアレ・クロイナーがたかだか平民にかどわかされているらしいじゃない。この国も大変ねぇ。」

「…そうですな。それを知って貴方は何をするおつもりで?」


おっと、話を切り上げましたわね。これは不利だと感じたから、ということでしょうかね?まぁ、ここまで情報もっている相手に、これ以上話されてしまえば、状況は一向に不利になるばかりで得られるものなどありませんから。彼にとって最善の道。即ち。この状況下における正解の道、でしょうね。

そう来るのであれば、さっそく本題に入りましょうか。


「いえいえ。そんな大それたことは致しませんのよ。ただ、あなたの娘と社交界(パーティ)の日、入れ替わりたいと打診したいまでで。」

「…我が国も堕とす御積もりですな?我ら貴族はよいですが。平民はただ従うしかなかったまで。そこにも手を出そうものなら、帝国と戦争を始まることとなっても、討ち死にしてでもあなたを止めましょう。」


本当に肝が据わっているのね。でも


「他の貴族はどうなのかしらね?貴族としての在り方をあなたのようにきちんと覚えたままなのかしら?私はとてもそうとは思えないのだけれど。」

「我々は先代の貴族と違いますので。貴方様でもそこは舐めないでいただきたい。」


あら…本当に素晴らしいわ。どうやら本心のようだし、この国は取り込みましょう。

まさか、ここまで貴族としての本懐を忘れていない国があるとは夢にも思いませんでしたわ。


「あなたをこの作戦の中枢に落とし込むことにしますわ。構いませんわね?」

()()()()()()()()()()()、もちろんです。」


ふふ。大人しく従うつもりはないのね。まぁ、構いませんわ。それぐらいの意気込みの方が使いやすいもの。


「よろしくお願いしますわ。ユライゼン公爵。」

「こちらこそ。」

「では、さっそくなのですが、ちょうど一ヶ月後にに王侯貴族会を開いてくださらないかしら?」

「かしこまりました、皇女殿下。良ければ理由をお聞かせ願っても?」

「あなたたちの王を、少し…楽しい社交会(パーティ)のために借りるわ」

「流石、と申したいところですが、このような言葉はもう聞き飽きましたかな?」


流石、ですか。初めていわれましたわ。申し訳ないことに、私、その言葉を言われること、好きではありませんの。それに、すぐにその考えを抱ける実力のあるあなたの頭脳の方にそれを言うべきではありませんこと?


「いいえ。…私からすると、貴方に対してこそ流石というべきだと思うのだけれど。」

「そうですか、お褒めに預かり光栄です。」

「なら、話はそれだけよ。それじゃあ、また炎の燃ゆる日に会いましょうね」

「契約などは結ばなくてもよろしいので?」

「ふふ」


公爵は私のほほえみを聞いてびくりと肩を揺らすことはなかった。しかし、少し、動揺したのか、一瞬空気が揺らいだ。


「その必要はありませんわ」


私はその足で次の(獲物)に罠を仕掛けに行った。




一ヶ月と一日後。


昨日の王侯貴族会で学園の、年に一回行われる大規模な社交会(パーティ)の日程が決定された。

その次の日。

アフロディーテは国王の私室にいた。

正妃と側妃たちはまとめてこことは違う場所に監禁した。

城は既に帝国に堕ちた。

手に持つナイフを大事そうに眺め、その辺の調度品で切れ味を確認すること数回。

その目の前に座る国王が声を出した。


「な、何が御望みですか」


キラリと刃の鋭さを確認し、数歩ずつ噛締める様にして国王に近づく。そして、その怯える国王の首にひたりと当てた。

そして刃を微妙に立て、押し込む。血は流れないが、首の薄皮一枚ギリギリ切れたぐらいだろうか。


「っひぃ…御止め下さい御止め下さい、どうかご慈悲を…」


まだわからないのかと、少しいら立ちを昇らせて、胡散させる。

もう見てきたではないか。この王族()共の醜悪さと醜さは。礼儀すらなっていない傲慢な態度は。

あら…?言葉が少し矛盾したかしら。私としたことが。


「…この国の国王(トップ)は最低限の礼節もわきまえていないのね」


顔を近づけ、怒りに満ちた目をちらと見せた。

それだけで、今にも卒倒しそうになっていたが、耐えたようだ。


「っ申し訳ございません!!!」


椅子に縛り付けられているため、土下座すらかなわないこの状況に国王はいつもは回さない頭を必死に働かせ、どうにか突破口を探した。

残念ながら、そんなものは存在しないが。


「我が愚国の愚民共が何か御国で粗相をしてしまいましたでしょうか!!?」


自分ではないと考えているのね…と怒りを通り越してもう呆れだった。

仕方ないと思い、少し答えてあげることにした。

もう、死ぬことは決定しているわけだし、冥途の土産を授けてあげようという小さな良心である。


「粗相?えぇ。確かにしたかもしれないわ。今ここで、だけれど。心あたりがあるようなら、詭弁を弄す機会の一つぐらい少しは与えてあげるわ。」

「やはり、今日貴方様のお気に障った者どもがいるのですね。いやはや、本当に申し訳ありません。」


ん?と頭の中が一瞬真っ白になりかけた。わざわざ強調して「今ここで」と言ってあげたはずなのだが、それを無視して語り始めるのだ。言語能力すらないのか、と呆れを通り越し、話の通じない異生物と話している気分だった。


「えぇ、そうね。今も気に障っているわ。」


仕方ないので、話を終わらせてあげることにした。きっと生まれる世界を間違えたのだと思うことにし、相手を憐れむことにした。


「そうですか、そうですか!ならば私めが処分しておきますので、どうかご容赦を…」

「あら、お気遣いはありがたいのだけれど、帝国(こちら)で処分することにするわ。」

「あぁ、そう仰るのならば、それはもう。有難い御申し」

「そう。ならよかったわ。騎士団長?」


もう声すら聴きたくもないため、無理矢理話を切り上げて、第8部隊の騎士団長を呼んだ。

今回、第1部隊ではなく第8部隊の騎士団を使っているのにはきちんと、理由がある。


「お呼びでしょうか、皇女殿下」


扉の外にいたはずだが、超人的な動きでアフロディーテの前にひざまずいていた。

そその動きに満足したような顔を見せ、そしてそのまま命令する。


「この不届き者を処刑なさい。方法は…貴方が最善だと思う方法で構わないわ。」


理由は、彼が一番、この役に適していると感じたからだ。

我が国に亡命する者はたいてい、その国の統治者に不満があって泣く泣く来ている。

そんな人たちの中には自分でその苦しめた統治者を殺したいと思う人間が何人も存在する。


「はい、かしこまりました。…機会を設けていただきありがとうございます。」

「そう思うのなら、きちんと役目を果たしなさい。」

「この命に代えても。」


そこまで気負う必要はあるのかしら、と少し心配になりつつもとりあえず、えぇ、と答えた。

それ以上の最適解が何なのか、アフロディーテにはわからなかったからだ。


「な、何をする気ですかッ、こ、皇女殿」

「貴様の口で皇女殿下に話しかけるな。」


ずるずるとゴミ袋のように引っ張られて部屋の外に連れていかれた。


「はぁ…あと、少し。」


社交会(パーティ)の行われる日は後一週間後。もともと仮決めされていたものが、そのまま可決されて、正式に通知されただけなので、混乱などは生じなかった。


「計画もやっと半分といったところね…構わない。えぇ。上等という奴ですわ。」


私は。


「アフロディーテ・トーカリア・ローザなのですから」



一週間と数時間後


眼前にはひざまずく大勢の貴族共(塵芥)。まぁ、彼らにとっては災害のようなものかもしれない。

ここでエリアナが断罪(笑)されること。そして、本来だったらその後にシリアルとの勝手な婚約発表が行われること。その両方がもともとは計画の中だったはずだからだ。


「あら…貴族の方々(皆さん)。」


そう話しかけるだけで、空気の揺れがそれは半端ないこと、半端ないこと。

…可哀想になってきましたわ。

弱者にとっての必然の理というものでしょうか。

まぁ、弱者になったことが一度もない私には想像のつかない代物ですわね。


「そのようにお堅い表情でこちらを眺めなくてもよろしくてよ」


私は優しいので相手の気を遣えるんですの。

なーんてね。

私が優しくないのなんて、とうの昔にに知っておりますわ。


「私はあなた方を害すつもりなど一つもありませんから。安心なさって欲しいわ。」

「そうですよね!アフロディーテ・トーカリア・ローザ皇女殿下」


は?と素で言いかけてしまった。アフロディーテは危ないところだったと胸をなでおろすと、その元凶に瞳を向けた。


まさか、王子(こちら)の方も馬鹿でしたか。

いえ、猿という方がよろしいでしょうか?

平民が多少礼儀がなって無くても仕方のないこと。経験や、そもそも教えてもらえない人もいるのですから。しかし…


冷たい視線を男の子に向けた。


この方は、違ったはずなのですけれど。あの()によって教師がつけられていなかったわけでもありませんし、この方自身が王族の義務(勉強)から逃げ出しているというわけでもなかったはずですが。


「…衛兵、男の…あなた方の国の王子がご乱心召されているようですわ。丁重に牢にぶち込んでくださいませんこと?」


思わず、男の子と言ってしまいそうになってしまい、自分の思考の制御があまりうまくいってないことに気が付いた。これは、反省ね、と思った。

衛兵の方も方で、頼んではいるが完全な命令だと悟っていた。


「…かしこまりました。申し訳ありません、王子殿下」

「おい、お前何をするッ私はこの国の王子だぞ!?」


煩く喚き散らしながらも、扉が閉まればその声は一ミリたりとも聞こえなくなった。

流石の防音ね、と感心した。


「さて、皆様。」

「っは。不敬ながら、私が代表してご挨拶申し上げます、アフロディーテ・トーカリア・ローザ皇女殿下。」

「えぇ」

「私は、このクロイゼン王国の公爵の地位を賜っております、ルドアーナ・トリカットでございます。この度は、皇女殿下のお目にかかれて光栄にございます。」

「さすがね。なぜあなた方の国の王族(トップ)がああなってしまったのか本当に疑問だわ」

「…お恥ずかしい限りでございます」


本当に貴族はきちんとしているのね、と少し悲しくなってしまった。

王族さえきちんとしていれば例外として属国の扱いにしてもよかったのに、と思わず思ってしまったからだ。


「皆さんの地位に関してですが…変えませんわ。領地も今のように各々治めていただいて結構ですわ。ただ、税に関しては帝国法に従ってくださいまし。その他は、納める場所が皇家に変ってしまっただけのことだと思っていただければ結構ですわ。王家直属の地域は皆さまで振り分けてくださいな。こちらからは口出しを一切いたしませんわ。」

「…この国は今から帝国の一部となるという認識で構いませんか?」

「えぇ。」

「帝国の税率を教えていただきたいのですが」

「大体は皆さまに配った紙の通りですわ」


配った紙?と疑問を持つ彼らの近くのテーブルには帝国法の重要だったり、注意せねばならないことだったりを抜粋し、まとめた紙があった。


「………ありがとうございます。では、もう一つ。我らの国の民の扱いはどうなりますでしょうか」

「もちろん、帝国民となったのだから対応は変わらないわ。」

「本当にありがとうございますッ」


トリカット公爵はアフロディーテに近づき、跪いた。


「あら、何が感謝されることなのか私にはわからないのだけれど。…まぁ、ここも帝国領地となるのだから、最低限の礼儀の一つや二つ程度は平民にも身に着けさせてくださいまし。」


そう言って、アフロディーテは広間から出た。

外へとつながる扉に向かい、そこで待っていた馬車に乗る。

中にはひとりの令嬢がいた。


「シリアル、お疲れ様」

「えぇ。全く本当にお疲れ様な件ですよ。なんです?あの頭がぱっぱらぱーな王子サマは。あれがドッキリで皇女殿下の仕込みだといわれても驚きませんよ?ていうか、それを望んでました。」


アフロディーテ・トーカリア・ローザはその様子を見てクスクス、と思わず笑みをこぼした。

確かに今回の相手は酷いにもほどがあったと感じていたからだ。


「ユノ」


私は彼女にそう呼びかけた。


「ありがとう。」

「まぁ、この程度ならお安い御用ですよ。」

「今度もよろしく」

「またやるんですかぁ!?」


お安い御用だといったのも束の間、もう嫌だと泣いて抱き着かれそうな勢いの返事だった。しかし、きっと、彼女はほとんどそんなに落胆していない。


彼女はユノ・ユンフェリア。私の…なんでしょう?わからないけれど、あえて言うとしたのなら、自慢の右腕とやらかしら?


「はぁ…皇女殿下も相変わらず人使いが荒いですよねぇ。今度、帝都にあるあの行列ができるお店のスイーツ全部奢ってください。」

「あなたも本当に人の御金遣いが荒いわね」

「あんな王子に約二ヶ月も振り回されてあげたんですよ?これぐらいしてもらわなきゃ収支が崩壊します。」

「あなたは私の家臣のはずなのだけれど。」

「家臣を労わる御心を発揮してください。それこそが賢帝ですよ?」

「いつもあなたの口車に乗せられてる気がしてならないわ。」

「そんな、皇女殿下を?罰が当たるどころか一瞬で死刑ですよ」

「最近思うのだけれど、決まり文句になって無いかしら?それ」

「…なんのことでしょうかね?」


まぁ、構わないわ。彼女は私の家臣の中でも群を抜いて働いてくれている上に有能だもの。

仕事与えて放り投げたら勝手に完遂して戻ってくるのだから。それに人付き合いも上手。諸外国に放り投げた後に外交を任せると良い方向に進むのよね。

いいように使っている?家臣の能力をきちんと見極めて使える賢帝だと仰ってくださいな。


「さて、皇女殿下。先ほど仰っていた『次』とは何処ですか?」


こちらを見る紅い瞳は、どんな宝石にも負けない輝きと美しさを持っている。

私はその瞳の輝きに応えるように『次』の(舞台)についての概要を彼女に話し始めた。


馬車は少しの揺れを少女たちに与えながらも進んで行く。

彼女たちの次の舞台(シナリオ)のために。

彼女たちに与えられた二回目(チャンス)をより良いものにするために。









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御姉様の御葬式まで残り6ヶ月。トーカリアを名乗り始めてから11ヶ月。

周りの国々(ごみ)を清掃し始めてから11ヶ月と22日。

御姉様がお亡くなりになってから12ヵ月。


そして、

立太子する日まで残り6ヵ月。


今日はまた一つ、(獲物)を堕としました。

御姉様とは違って卑怯な手を使わないとこの速さで堕とすことは私には不可能でしたわ。

最近いつも、能力が発現してくれて助かったと思っているの。

御姉様、明日も一つ堕とす予定です。

天国で見ていてくださいな、御姉様。きっと私が死んでもそちらには行けないから。

少しばかり、こちらを見守ってください。


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