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42 魔国の将来像

ヒムガム魔国の弱点は工業生産力がない点だ。まず、鉄が生産できない。次に鉄を加工できない。つまり、武器が生産できないのだ。次に荷車が生産できない。荷車がないので輸送力がない。布は農家が副業で生産するが、衣服に加工する技術がない。これら生産力は技術の蓄積なので、元奴婢であるヒムガム魔国の市民では無理がある。ヒムガム魔国の市民は官吏または軍人として育てる予定だ。

ヒムガム魔国を支える農業生産力だが、恭順する町と村から税として徴収する。他国を併合すれば自動的に町と村は増えるので、農業生産力は今のところ問題ない。

次は工業生産力だが、町と村には農業生産を支える小規模な工業力があるが、この工業力は農業用として当てにしない。ではヒムガム魔国の工業生産力は何処に求めるのか、答えはダイスタン帝国となる。

ダイスタン帝国は大国だけあって、分業化が進み、工業の生産拠点の規模が大きい。ダイスタン帝国の工業生産力をそのままヒムガム魔国に取り込む。ヒムガム魔国は軍事力、農業生産量力、工業生産量力の3本柱が整った国になる。

そのためにダイスタン帝国を併合する。当然、マチネ姉さんからダイスタン帝国を2年以内に併合することを命じられている。

ダイスタン帝国は大国なので、併合は簡単ではない。段階を踏む必要がある。まず軍事力を完全に破壊する。軍事力を持たない帝国は魔国に抵抗できなくなる。この時点で帝国および帝国の属国に奴婢の解放を要求する。帝国と属国はこの要求を飲まざるを得ないだろう。

奴婢が解放されていないのはハルタ教国のみだが、帝国に奴婢の解放を要求すると同時に、ハルタ教国にも奴婢の解放を要求する。ハルタ教国はこの要求を拒否するだろうが、現行の軍事力をハルタ教国に向ければ、6か月でハルタ教国の奴婢の解放は完了する。

残るはダイスタン帝国の併合だけとなる。帝都以外の属国、町、村を個別に恭順させていく。ダイスタン帝国は税収を失い、自然と消滅し、ヒムガム魔国が残る。

この段階で、第2大陸の奴婢制度は完全に破壊できたと言えるだろう。


現在のヒムガム魔国にはハルファンを攻略する武器や食料といった軍事物資がない。

しかし、ここにきて、返書でダイスタン帝国の皇帝を怒らせたことや、帝都で、月の神殿の破壊と勇者を殺したことによる効果が現れてきた。

嬉しいことにダイスタン帝国はヒムガム魔国に大規模な軍を派兵してきた。サー・マチネクの予想では、ダイスタン帝国の軍は後半月後にヒムガム魔国の領内に到達する。派遣軍の規模は2万、補給部隊と工兵隊を合わせると全部で2万5千、ダイスタン帝国の軍事力の65%に相当する。

この派遣軍の武器と装備、補給物資を最大限略奪する。略奪した武器と補給物資を使い、ハルファンを攻略する。これはマチネ姉さんが考えた軍略であり、現在、マチネ姉さんの予想通り、進んでいる。

私は士官教育課程で軍略を学んでいるが、教科書の軍略よりマチネ姉さんの軍略の方が優れている。


マチネ姉さん「サニー1等兵、派遣軍の武器、装備、補給物資の略奪計画の状況を報告しなさい」

サニー「アロキア校外の難民への告知は完了しました。難民たちは狼煙を待っている状況です。北東方面に1万を東方面に5千を振り分けました。死体処理の土木B型ドローンと汎用B型ドローンの6台は所定位置に移動後、迷彩ネットで隠しました。1カ月間、ヒムガム魔国市民は教育を停止し、物資運搬の監督と指導、難民への報酬の支払い業務を命じました。ヒムガム魔国軍にはハルファン国境付近で待機を命じました。後は派遣軍が所定位置に到着し、拠点を構築するのを待つだけです」

マチネ姉さん「よろしい。サニー1等兵に物資略奪作戦の指揮権を与えます。C型高機動艦アイエナも貴君の指揮下に入ります。成果を最大化しなさい。以上」


2週間前、ダイスタン帝国から派遣軍が出発していた。派兵軍は最初から2隊に別れていた。帝国は2方面から攻撃を仕掛けるように思われる。両軍は進行速度や隊の構成が異なる。命令系統も別のようだ。先行した1隊は北にコースを変更し、アロキアの北側を進んだ。もう1隊はアロキアの南側を進む。

北側を進む1隊はアロキアから北東に行軍した。そしてヒムガムの真北に到達すると、今度は真南に進軍し、首都の北6Kmの地点に集結し、陣地を構築した。部隊の規模は1万2千。

南側を進む1隊はアロキアから東に進み、ヒムガムの東方4Kmの地点で、陣地を構築した。隊の規模は8千。両隊の中間地点にも要員が配置された。両部隊の連絡用部隊だろう。

先に築陣が終わったのは東の部隊で、築陣が終わると同時に、昼夜関係無く威力偵察部隊がヒムガムに侵入を試みてきた。全てドローンが返り討ちにしたが、死体を片付けるのが手間なので止めて欲しい。

北の部隊は東の部隊より2日遅れて築陣が終わった。派遣軍が陣地を構えてから3日が過ぎた。明日あたり、派遣軍が攻撃を仕掛ける頃合いだろう。

私は今夜先手を打って派遣軍を攻撃することを決定した。C型高機動艦アイエナに午前0時にヒムガム上空を通過するように軌道を調整を命じた。本日、午前0時にC型高機動艦アイエナから北および東の部隊を同時に攻撃する。


今夜の派遣軍への攻撃には、衝撃波発生弾を使用する。軌道上から地上に発射する弾薬だが爆発はない。爆発する代わりに地中に埋まる。弾薬は高速で大気圏を抜け、地上に到達するため、強い衝撃波が発生する。衝撃波は敵兵を殺傷するが武器や装備には損傷を与えない程度に調整される。1発の有効範囲は半径200mに調整した。


C型高機動艦アイエナは21発の衝撃波発生弾を投下管制装置に装填した。北の部隊の野営地をくまなくカバーするよう衝撃波発生弾を発射した。

続いて15個の衝撃波発生弾を投下管制装置に装填した。東の部隊の野営地に向け、発射した。

衝撃波発生弾は30秒で地表に到達する。ヒムガム周辺では衝撃波による大音量の爆発音が2回した。

ヒムガムおよびアロキアの住人や避難民には事前に知らせていなかったので、爆音に驚いて皆飛び起きることになったが、被害は出なかった。

サー・マチネクの観測では、この攻撃で2万人を殺戮した。生き残ったのは野営地を離れていた15名だけだった。この15名も野営地に戻ったところを待ち構えていたドローンが射殺した。魔国境近くに配置した魔国軍で、残った兵站部隊が逃げてくるところを殲滅する予定だ。


私は北と東の帝国派遣軍の野営地で、仕事の始まりを示す狼煙をあげた。アロキア周辺に暮らす避難民はその狼煙を見て仕事にかかる。ヒムガム市民を2つの野営地に分けて配置した。市民は臨時の官吏となってもらった。作業は大きく分けて2つある。1つは死体の運搬で、もう1つは武器の回収だ。死体を埋める穴はドローンが掘り、避難民達が100体ほどを穴に投げ込むと、ドローンが埋めていく。

避難民達にやる気を出してもらうため、死体の金品は取り放題とした。

1日の作業が終わると、給金と軍事物資から食料を配布した。この軍事物資の回収作業は1カ月続いた。

ここで大きかったのは弓と矢を入手できたことだ弓は1万張、矢は15万本に登る。2カ月後にはハルファン併合に取り掛からければならない。この攻略のためマウ隊に与える武器は短槍と弓と決めていた。現在、ヒムガム魔国は300人のマウ隊を持っているが、これでハルファンを攻略するための武器と軍事物資が手に入った。


嬉しい知らせが入った。クルミの子が生まれた。女の子でユート様がカリンと名付けた。クルミもユート様の子を産むことができ、幸せをかみしめていることだろう。


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