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 4 サバイバル

サラン活動記録。7日目、記入:エド少尉


避難初日から7日までの状況を記述する。


水の確保について

 北方1.5Kmを流れる川で水を確保している。3日に1度、16lの水を汲むため往復している。河ではタンパク源となる魚Aを1匹又は魚Bを3匹を釣る。名を付けるのが面倒なので、捕獲した順にABとした。釣り糸は制御ウイングのロープから取り出した。また釣り針は冷凍庫を作るときに外した乗員シートのソファにあったコイルから作成した。魚は警戒心がないのか簡単に釣れる。


食料の確保について

 タンパク質源として魚Aと魚Bを利用する。カエルは狩るのが難しく、今は利用していない。

炭水化物は植物の種子か地下茎、根を調べる必要がある。種子については、木の実を3種類調べたが、毒成分を含み、食べられるものは無かった。ただ、毒は水溶性であるため、川で水にさらすなどの手を加えれば食べられそうなのだが、手間がかかり過ぎるので却下。根を調べるには植物を掘り起こす必要がある。調査に時間がかかりすぎるので却下。炭水化物は、現時点では諦めている。


食物繊維とビタミンおよび糖、微量元素について

 川付近に生える植物Aは若芽や若葉が食べられる。シュウ酸を含むので、ゆでこぼす手間がいるが野菜として食べている。また竹に似た植物Bはタケノコを食べることができる。アクが強いため、煮てアクを取り除く手間がいる。植物Aも植物Bは何処にでも自生しているので採取が簡単にできる。このためほぼ毎日食べている。


救命ボート周辺の探索状況

 東西南北5kmの範囲を探索した。動物であるがトカゲ類をよく見かける。大きさは10cm位から50cm位までで、虫や植物を齧っているのを見かけた。生息数も多い。半日の周囲探索で何十回もトカゲ類に遭遇する。トカゲ類には特徴がある。見かけたトカゲは皆、2足歩行をするのだ。私の育ったサルカンドラではトカゲは4足歩行であった。一方、哺乳類はこの7日間で一度も見かけていない。夜行性で夜に探索を行わないため見れないだけの可能性もあるが、惑星サランには哺乳類が生息しない可能性もある。 

 北には東から西に流れる川がある。川幅は15m。水量は十分ある。流れは速くないので、泳いで渡ることができる。川では魚が泳いでいる。沢山の足が生えたナマコやサソリのような生物もいる。カエルもいる。カエルは種類が豊富で大きいものから小さいものまで、色も緑や赤、青や黄色、オレンジにピンクと沢山の種類を見かけた。

 西と東は特徴がなかった。地形は平坦で、木や下草の種類やパターンが画一的なので目印がなければ進んだ距離も分からない。大木が見えるので、自分の居場所が判別できるが、もし大木が見えない場所まで進むと迷子になり、簡単には拠点である救命ボートに帰れなくなるだろう。

 南は大木周辺を重点的に探索した。根元の幹の太さは直径30mある。大木の麓は昼間でも薄暗く、苔が地面を覆いつくしていた。ホタルのような発光性の昆虫が舞うファンタジーの世界があった。以降、この大木は世界樹と呼ぶことに決めた。


サバイバルの現状分析

 食料問題は炭水化物と塩の問題があるが、カロリーでは自活が可能な状態になった。衣類はセットの衣料キットと生活キットを独占できるので、洗濯等の保守をしっかりやれば5年は大丈夫だ。

衛生面ではトイレを救命ボート近くに掘った。今は穴を掘っただけだが、現状はこれで十分だ。風呂については水汲みがてら、川で体を洗っている。体は毎日洗いたいが、この頻度で我慢する。

 まだ、私の生命を脅かす敵なり、災害に遭遇していない。もし、敵がいるのなら早めに認識し、対処を考えたいのだが、私一人の労力では捜索範囲は徐々にしか広げられない。


これからの課題

 節約に務めているが、救命ボートのエネルギー残量が96日分しか残っていない。救命ボートのエネルギーが切れた場合、生きるための労力は大幅に増える。探索や安全面に割く労力が取れなくなる。エネルギーの節約に励むとともに、生きることに割く労力を合理化などで減らす工夫が必要となる。資源では炊事用燃料が来週には使い切る。代替として木を切り、薪を作っているが、1本の木を切り、薪にするには1日の作業時間が要る。薪であれば、持続的に入手できるが、入手には労力という対価が必要となる。

武器の弾薬や工具セットに含まれる消耗品、医療セットの薬や注射器は使えば無くなってしまう。節約を頑張るしかないが、使い惜しんで死んでは元も子もない。使いどころは正確に判断しなければならない。


目標

 安全面に配慮し、半年以内に救命ボートを中心に半径50Kmの地図を作成する。1年以内に半径50Kmの地図の範囲を探索する。

 救命ボートのエネルギー枯渇後に備え、生活に掛る労働を合理化する。具体的には生活に掛る労力と探索など安全面にかかる労力を50:50になるように生活コストを下げる。


以上


『デイ、輸送団の捜索は何時頃来るだろう。捜索隊は私を見つけて救出してくれるだろうか。現状の事実から推測してくれ』

デイ「わかりました。宙軍本部のある惑星サルカンドラから植民星デランまでの航路には超光速通信ステーションが1光日毎に設置されています。輸送船団の司令船は毎日定刻に航行日誌を最も近い超光速通信ステーションに送信していますので、輸送船団の遭難は定時報告の途絶として1日以内に宙軍本部に伝わります。宙軍本部が捜索隊を組むのに7日、捜索隊が事故地点にワープするのに215日かかります。捜索隊が輸送船を見つけ、事実を解明するのに1日かかります。巡洋艦マチネクが助かったか否かは不明ですが、サー・マチネクは航行日誌のコピーを輸送船に送っています。エド少尉を乗せた救命ボートを惑星サランに向け射出したことは間違いなく捜索隊に伝わります。捜索隊が惑星サランに来て、救命ボートを見つけるのに1日かかります。合計で224日です。既に遭難から108日が経過していますので116日後にはエド少尉は救助されると思われます。エド少尉がこの通りに救助される確率は95%ほどです」

『デイ、本当に嬉しいよ。今夜は久々に、いい夢が見られそうだ』

デイ「良い夢をお楽しみください」


時刻は01:50、デイは救命ボート内の音響センサーが外部からの音を拾っていることに気づく。即座に、音響センサーのデータの録音を救命ボートAIに依頼した。その微かな音は、ノイズと言ってもよいが、音と音の間隔に不思議なリズムがある。デイは暫く考え、音のリズムが人間の歩く時のリズムに近いことに思い至った。リズムから身長を推測する。身長は3mほどか。船内には音響センサーが5か所設置されている。届く音の時間差から人物の場所を調べた。更に人数が複数なことにも気づいた。4人いる。方向は東南東、距離100m。4人は5mの間隔を開け、10歩進むごとに6秒の休止を挟み、救命ボートに近づいてくる。これ以上近づくのであれば、エド少尉を起こそうと考えた時、東、距離200m付近から高周波が発せられた。同時に近づいてきた4人は(きびす)を返し、引き上げていった。4人が400m遠ざかるまでは音響センサーで捕捉できたが、これ以上はノイズで追跡できなかった。危機が去ったことで、デイはエド少尉を起こさなかった。報告は明日、エド少尉が目覚めた時に報告すればいいだろう。明日まで、録音データを更に精密に分析し、見逃した事実が無いか調べよう。


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