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25 リンガハン偵察

アロキアの警察機構の偵察を終え、筏をリンガハンまで進めた。川が左に曲がる位置は川幅が増し、大きな池のようになっていた。川の流れも緩く、錨を1個落とすだけで簡単に停泊できる。池の広さも十分あり、本隊の停泊地として申し分ない。私とサニーは筏を降り、町に向かった。サニーが緊張していることが言葉遣いから伝わってくる。アロキアと同様に街道を進みリンガハンの東門から町に入った。門は立派だが、城塞があるわけでなないので、何の為の門か分からない。門を入るとそこはマーケットだった。マーケットの商人に町の様子を聞くと、丁寧に教えてくれた。街道は500mほど西に進むと丁字路となり、丁字路の北は北門にぶつかる。南に進むと貴族街、その先に王城がある。北門の西側にはキャラバン商達の商店が並んでいる。キャラバン商は町の北西に広がる大草原を旅して遊牧民と交易をしている。

北門の東側には奴婢市場と奴婢商、傭兵の本部がある。宿は北門の街道沿いにあるそうだ。宿には奴婢商専門の宿と一般商人用の2種類があると教えられた。違いを聞くと、奴婢商専門の宿では奴婢を監禁する小屋を借りられる。街道の東側に奴婢商専門の宿があり、西側に一般商人用の宿があると教えてくれた。

私とサニーは一般商人用の宿に泊まり、そこを拠点に偵察業務を行う予定だ。


私達の偵察には5つの目的がある。


1つ目は月の神殿の召喚堂にあるカルマ結晶の正確な位置と設置状況の調査。

2つ目はリンガハン接収の告知。

3つ目は進軍の前日に破壊する軍事拠点を5つ選択。

4つ目は町の破壊作戦の作成。

5つ目はリンガハンの上水路の寸断ポイント調査


1つ目のカルマ結晶の正確な位置と設置状況だが、リンガハン到着した日の夜、ドローンを使い調査した。ドローンを召喚堂まで飛ばし確認している。カルマ結晶は召喚堂の中央の床下20cmの位置に埋められている。床は大理石製で厚さは20cmであった。このデータは軍事リンク経由でマチネ少尉に送られている。この情報を元にマチネ少尉は大理石を削ってカルマ結晶を取り出す為の治具(ぢぐ)を作成する。カルマ結晶の電磁波黒体内部では電気、電子機器は動作しない。人間も電磁波黒体内部では突然死するため作業できない。カルマ結晶を取り出すとなると、電磁波黒体の外から機械的に力を歯車やカムで伝達し作業する道具が必要になる。


2つ目はリンガハン接収の告知だが、周知はドローンで行う。このため、ドローンには拡声器が取り付けてある。接収の周知は15日前から毎日行う。それも毎日朝、昼、晩、夜中の計4回、ドローンで町全体に告知する。リンガハンで暮らすもので、この告知を知らないものがいないようにする。告知の内容も考えてある。以下がその内容だ。


『リンガハンに暮らす者よ。我は魔王である。リンガハンを我の領土とすることに決めた。よって、この地に、何人も住むことを許さない。何人も立ち入ることを許さない。15日の猶予をくれてやる。猶予は我慈悲である。猶予を過ぎれば王族、貴族、平民、奴隷、身分に関係なく、この地に立つ者は全て殺す。我、慈悲があるうちに、この地をたちされ』


私のことをこの世界では魔王と呼んでいる。そのことに便乗し、接収部隊を魔王軍とした。結構、私は魔王、魔王軍が気に入っている。


3つ目は接収部隊の進軍の前に破壊する軍事拠点を5つ選択することだが、リンガハン接収の告知を聞いても信じない者が大半だろう。住民に信じてもらえるよう、5つの軍事拠点を爆破する。多少の戦術的な要素はあるが、真の目的は住民に恐怖を与え、町を逃げ出すよう仕向けることにある。住民にとってシンボル的な場所として西門、北門、傭兵の本部、警察署、王宮の入り口を選定した。


4つ目は町の破壊作戦の作成だが、破壊することが目的ではない。住民のリンガハンへの執着を絶つのが狙いだ。建物が破壊されれば、衣食住の住が絶たれ、リンガハンに固執する理由が1つ消える。しかし、町全体を破壊するには接収部隊では戦力が足りない。そこで見た目の破壊感を優先した。

破壊計画だが1日目は西門から入り、1日かけて街道の両側の建物を破壊しながら北門に抜ける。北門の外で3日待機する。この待機で住民がアロキア方面に退避する猶予を作る。

この猶予が終わった時点で、住民の7割をリンガハンから追い出す。これを中間目標としている。

5日目は北門から入り、半日かけて王宮の前まで進み、王宮の正面を破壊する。半日かけて北門に戻る。そして北門で2日待機する。

この猶予が終わった時点で、住民の8割を町から追い出す。これが最終目標となる。

デイの計算ではこの時点でリンガハンには平民が300人、奴婢が1100人いる計算だ。


5つ目はリンガハンの上水路の寸断ポイント調査だが、恐怖や住環境が破壊されたとしても、リンガハンに固執する人間は一定数必ずいるだろう。そういった人間も退避するしかないよう、リンガハンの水を絶つ。リンガハンで水を確保できなければ、避難するしかなくなる。リンガハンの上水路の寸断ポイントは明日から岩石地帯へ調査に向かう予定だ。2泊3日で岩石地帯にある貯水池と町へ水を引き込む水路の確認を行う。元々、岩石地帯に降った雨が南に流れる川があったのだが、その川をせき止め、貯水池を作ったようだ。リンガハンの上水路はその貯水池から町まで引かれているが、殆ど地下に作られている。宇宙からの調査では上水路の寸断ポイントを特定できなかった。地上を歩いて直接確認する。サニーは私とキャンプができると喜んでいる。


私「マチネ少尉、本隊を運ぶ筏の作成は順調ですか」

マチネ少尉「作成は順調です。既に筏11台は完成、1台は作成途中です。明日には完成します。予定通り、明後日には基地を出発できます。本隊に同行させる兵力ですが、空中C型ドローン2機、空中E型ドローン4機、土木B型ドローン2台、汎用B型ドローン2台、輸送B型ドローン、自律人型Eロボット2人、自律人型Bロボット2人です」

私「リンガハン接収の宣言なんだけど案を考えました。マチネ少尉の意見を聞かせてください。接収の宣言の中で、私達のことを魔王軍と言うことにしました。こちらの世界では私は魔王と呼ばれていて、それを利用しようと考えました。15日のところは毎日更新します。朝7時、昼の12時、夜の6時、夜中の12時の4回、30分聞かせます」

マチネ少尉「異論はありません」

私「あと、私達は魔王軍なんで、来る時、マチネ少尉とクルミ二等兵は陸戦戦闘スーツと戦闘支援ヘッドセットの着用をお願いします」

マチネ少尉「私も着るのですか?」

私「魔王軍の正装なので」

マチネ少尉「異論がありますが、仕方ありません」


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