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24 アロキア偵察

サニー「ユート様、服を売ってくれる商人をみつけました」

ユート「そうか、今行くから、待たせておいてくれ」

サニー「分りました」


私はサニー三等兵とリンガハン王国の首都リンガハンに向け実地調査に来ている。大型の(いかだ)を仕立て、拠点から川を下ってきた。この筏は横幅10m、長さ10mの筏を2個縦に繋いで作ったものだ。前の筏の中央に小屋を建て、そこで私達は寝起した。後の筏の中央に調査中に消費する食料と武器、弾薬、エネルギーパックを収納容器に詰め、固定している。私達2人の他、旅のサポート要員として人型ロボット1人とドローンを連れてきた。このドローンは救命ボートに搭載されているドローンだ。エネルギーを充填し、攻撃武器などを追加した。攻撃武器といってもレーザー銃で、大量のエネルギーを積めないため、火傷と痛みを与える程度の威力である。

川は平均時速4Kmで水が流れるので、筏も時速4Kmで川を下る。拠点から目的地のリンガハンまで川を伝って移動すると1500Kmある。ここまで、拠点を出発し、15日かかった。一昨日、竜人界を抜けた。明日はアロキアに着く予定だ。私達は一旦、街道に近い場所に筏を止め、服を手に入れるため、街道を通る商人を待った。


私達はこの国の人間に紛れるため、服を買った。お金は南の冒険商人から得た金貨を持ってきたので、それを使った。私とサニーと人型ロボット用にそれぞれ2着、計6着を街道で出会った商人から買った。服の代金は金貨1枚と銀貨7枚、銅貨5枚であった。金貨2枚でお釣りを受け取る。お釣りは銀貨2枚と銅貨5枚であった。お釣りの銀貨と銅貨を調べると、金貨と同じ印が刻まれていた。サニーによるとこの印は帝国印で、貨幣は帝国が発行している。帝国と属国ではこの貨幣が流通している。服を買ったことで朧気だが貨幣の価値も分ってきた。


私達はアロキアの手前2Km手前で筏を降りて街道を進んだ。泥棒に入られないよう、筏は岸に接しないよう川の中ほどに停泊させた。

私とサニーは徒歩でアロキアに向かう。私達の安全を確保するため、ドローンも連れていく。上空に浮かせ、私達をサポートさせた。

アロキアに行くのはこの国の警察力を調べることが目的だ。

街道が町に入る場所には石造り門があり、槍を立てて周りを監視する人間が二人いる。サニーが衛士であると教えてくれた。事前にミス・アイエナが作成した町の詳細地図に注記を記入した。道路を少し進むと道は広場に出た。広場では露店が商売をしていた。露店の数は4百ほどだった。道路と広場が交わる所に衛士の詰め所があった。衛士が槍を立てて周りを監視していた。マーケットの中でも2名の衛士が巡回していた。

マーケットに入ってからサニーの機嫌が悪い。もう2年も寝食を共にしてる。原因は聞かなくてもわかる。マーケットでは大勢の奴婢が働かされていた。全て少年少女と言っていい年齢だ。成人の奴婢はいなかった。込み合った場所の運搬に動物を使っていない。マーケットで荷運びや車を引くのは全て奴婢だった。人間の尊厳を剥ぎ取り、服も着せず動物として人間を使うのを見せられて、私の気分も最悪だった。


私「飯を食おう。サニー、食べたいものはあるか」

サニー「久々に肉が食べたいです」

私「良く焼くか、煮てある物がいいな」

サニー「ユート様、あの親父さんの店にしましょう。肉を煮たものとパンを出しています」


初めてこの世界の料理を食べたが、旨かった。ここの親父は客と陽気に会話をしていた。私は今日の宿を教えてもらおうと話しかけた。


私「親父殿、今日泊まる宿を探しておる。紹介をおねがいできぬかな」

親父「親父殿って、あっしのことですか?殿は止めてください。恥ずかしい。一人で銅貨7枚出せるなら行商人宿が良いですよ。朝食と水が付くのでお得です。マーケットを東に抜け、200m右側。赤い屋根で目立ちます。行商人宿ですけど、行商人以外でも泊まれます」

私「礼を言う」


私達は屋台の親父に教わった行商人宿で1泊の宿を取った。そこの宿の受付の若者に衛士の本部の場所を聞いた。若者は町の地図を示しながら丁寧に教えてくれた。宿から1Kmほどの貴族町と平民町の分ける通りにあった。地図には守衛署と書かれていた。

宿に荷物を置き、守衛署にむかった。守衛署は大きな建物ではなかった。1時間ほどあたりをうろついて観察したが入り口を出入りする人間もいない。守衛署に軍の本部機能はない。緊急事態が発生しても衛士は役に立たないだろう。


宿に戻るともう夕食の時間だった。夕食を食べながら行商人達の話に耳を傾けた。


行商人1「ハプ平原の遊牧民の野営地は金になった。ガンドラに売ったら銀貨4枚になった」

行商人2「兄じゃ、銀貨4枚とは、本当か?俺も前、ガンドラに連中の野営地を売ったが銀貨2枚だたぞ」

行商人1「前も教えたろう。場所だけじゃなく、子供の人数を数えろと。奴婢は子供に限る。だから、ガンドラの番頭には場所と子供の人数を一緒に教えろと言ったろう」

行商人2「子供はすばしこくて数え切れん」

行商人1「飴玉を配れと教えただろう。並べば簡単に数えられる。ハゼアメなら10個で銅貨1枚だ」


どうやら、遊牧民の子供を捕まえて奴婢とする組織があり、その組織に行商人が情報を売っているようだ。遊牧民も行商人が情報を売っているとは考えていないようだ。


サニー『エド少尉、後の連中が魔王の話をしています。どうやら魔王はエド少尉のことみたいです。面白そうなので聞き出しませんか』

私『この酸い酒をおごってやれ。私も興味がある』


私達は後の3人組に酒をおごり、魔王の話を聞かせてもらった。どうやら私は魔人から魔王に出世しているようだ。そしていつの間にか帝国の属国の王にもなっていた。


サニー「旦那方、その魔王の話、面白そうなんで私達にも聞かせてください。お酒をおごります。給仕、酒4杯追加だ」

行商人「お前さん達、魔王の話は初めてか」

サニー「はい」

行商人「相当田舎から来たのようだな。ここらじゃあ子供でも知ってるぞ」

サニー「山奥から出てきました。初めて聞きます。あ、この酒、飲んでください」

行商人「ありがとよ。じゃあ、最初から話してやるよ。2年前、冒険商人のベルクが皇帝陛下の命令でドラゴンツリーまでの冒険に出かけた。ダイスタン帝国からドラゴンツリーまでは遠くて、ベルクが初めての成功者だ。ドラゴンツリーには魔王がいる。以前から魔王の噂はあったが誰も行ったことがないから確かめようが無かったが、魔王は居た。ベルクは皇帝から預かった葡萄酒と奴婢2匹を魔王に献上した。この2匹の奴婢は、この国の王子と王女だった。それを皇帝陛下は難癖を付けて、奴婢として献上させた。まあ、希にみる残虐皇帝と言われるだけあるって話だ。魔王も残虐さでは皇帝陛下に引けを取らん。命令に逆らった部下の竜人は首をはね、城の周りに杭を打ち、首をさらすそうだ。そんな竜人の首が城の周りには何百本も刺さっている。

ベルクは魔王から返礼の品を預かって帰って来た。返礼の品はなんと竜人の刃だ。それも1揃え。葡萄酒と奴婢2匹はせいぜい金貨20枚、金貨20枚で金貨2万枚の返礼を受けた。つまりだ。魔王から朝貢を受けたことになる。魔王を配下にできたと皇帝陛下は大喜びしたそうだ。その功績でベルクは皇帝陛下の相談役になった。

魔王の国が帝国の属国になった噂は北のハルタ教国にも伝わっていたが、それを確かめようとハルタ教国の冒険商人がドラゴンツリーまで冒険に出かけたそうだ。だが、その冒険商隊は帰ってこなかったそうだ」

サニー「魔王は竜人なのですか」

行商人「形は人型、背の高さは4m。そして頭がなく、頭の場所には飾り物の頭が刺さっているそうだ」


まあ、噂とはこんなものだろう。しかし、ベースとなる真実は捕らえている。それに私が魔王とは驚きだ。そして、少し嬉しかった。


西の大草原の遊牧民の子供が奴婢にされているのは分かったが、不思議なのは遊牧民達の態度だ。子供を奴婢に取られても抵抗しないのだろうか。私が大学で習った史観学では、この惑星は封建時代で銃器発明未満である。一方、遊牧民は原始共産制と推測される。封建制民族と原始共産制の民族が戦った場合、封建制民族が一方的に勝つなどありえない。逆に、機動力にまさる遊牧民が封建制の農工民の土地を侵食する例が山ほどある。私は気になり調べることにした。

理由は直ぐに分かった。その昔、北の大国であるハルタ教国は遊牧民達の侵食に悩まされていた。ハルタ教国は侵食に武力ではなく教化で対抗した。ハルタ教国から出発する行商人には学士が同行し、遊牧民の子供に紙芝居を見せ、楽しませる。紙芝居で演じられる物語は武力を悪としてえがく。武力による問題解決は武力による悲劇をもたらすと説いている。このハルタ教国の教化は5百年も続いている。遊牧民達はいつしか、武力を嫌うようになっていった。こうして、一方的に搾取される遊牧民が出来上がってしまった。しかし、これに反発する者たちが定期的に現れる。つい10年前にも、ある部族が奴婢狩りに武力で対抗しようとしたが、大敗北を喫し、大草原の奥に隠れたという。


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