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17 北の冒険商隊

惑星サランに降下して85日、クルミとサニーと暮らし始めて54日が過ぎた。デイが予想する救助隊到着はまだ40日も先だ。今一番の問題点はエネルギーが枯渇しそうなことだ。救命ボートのエネルギー残量は14日分、ドローンのエネルギー残量は10時間。他にも枯渇しそうなものがあるが、この2点は生存の(かなめ)のため、対策を打たないと救助隊の到着日まで生存できないかもしれない。特に浄水器が使えなくなるため、水が得られなくなる。さらに機体監視センサーとレーザー銃が使えなくなるため、監視機能と攻撃機能を失う。


私はデイと救命ボートAIの3人で相談し、太陽光発電ユニットを設置した。この措置で救命ボートのエネルギー切れを4日遅らせることができる。しかしこれ以上エネルギーを増やす方法が無かった。危険だが、ドローンを毎日使用することを止めた。だがドローンは私達の安全確認の要だ。周囲の安全が確認できないとなると、水汲み一つとっても命がけになる。今まで水汲みはクルミとサニーに任せていた。これは周囲に敵がいないことをドローンで確認でき、100%の安全が保証されることが前提だった。


ドローンが使えない場合、水汲みは日課の中で一番危険度が高い。まず、救命ボートから1.5Km離れている。もう1つは水汲みの最後に水浴びをする点だ。水浴び中は周囲への警戒を維持することは難しい。効率は悪いが水汲みは3人で必ず一緒に行くことにした。この決断で、大きな危険を回避することができた。


その日は私の水浴びが終わり、クルミとサニーが水浴びをしている。私は監視所で2人に危険が無いか監視していた。水浴び時の危険回避策として、まず3人一緒に水浴びしない。私とクルミ、サニーの水浴び時間をずらした。私が水浴びするときはクルミ、サニーに監視所で私の周囲に危険が無いか見張ってもらう。もし危険がある時は鳥の鳴きまねで、危険を私に知らせてもらう。クルミとサニーが水浴びする時は私が監視所で2人に危険が無いか監視する。鳥の鳴きまねで二人に危険を知らせる。監視所と言っても施設を作ったわけではなく、水浴び場所を見渡せる藪に、待機できるよう一部の藪を刈り、スペースを作った。外から目立たないよう、木や草でカモフラージュしただけだ。


対岸から二人の男が隠れてクルミとサニーの水浴びを見ていることに気付いた。このあと男二人は怪しい動きをする。男二人は木陰に隠れながら、対岸を川下に向かって移動し始める。そしてクルミ達から見えない地点で対岸から川岸まで下ってきた。私は二人の渡河を見渡せる位置に移動し陣取った。二人の男が川に入った所をライフルで射殺した。私が急いで監視所に戻ると、二人はまだ水浴びを続けていた。ライフルの発射音は小さく、川の流れる音で容易にかき消される。

私の行動はデイが記憶している。デイは私が軍規違反や法律違反をした場合、憲兵部に報告する。だが二人の男を射殺した件は報告されない。私は軍規違反や法律違反を犯していないからだ。人類同盟は千年より前は性善説の軍規や法律を運用していたが、千年前の「悪魔の洪水」を契機に、全てが変わった。軍規や法律も変わり性悪説で運用されるようになった。男二人が怪しい動きをした時点で、私達に敵意アリとして対処した。


クルミとサニーが水浴びを終え服を着終わった。私は釣った魚の内臓を抜き、荷物をまとめて救命ボートに帰った。クルミとサニーには北から冒険商隊が近づいていることを救命ボートに着いてから知らせた。


『ドローン発進、水汲み場付近とその北を探索』

デイ「了」


私「クルミ、サニー、北から冒険商隊、向かってくる。対処する。必要」

サニー「魔人様、冒険商隊は敵でしょうか味方でしょうか?」

私「敵と危険因子」

クルミ「怖いです」

私「二人に聞きたい。南の冒険商隊と北の冒険商隊、話し言葉、同じ、違う?」

クルミ「私達の話し言葉は宮廷新語なので、北の冒険商隊に通じましょう」

私「理解」

デイ「救命ボートより5Km地点、水汲み場より北3.5Kmに約160の生物反応。生物の詳細は1分後に分ります」

私「冒険商隊は2時間半後、ここに着く。私は対処する。なので冒険商隊、ここには着かない。私、求める。冒険商隊引き返す。」

サニー「魔人様、私にお供させて下さい」

私「だめ。クルミ、サニーは救命ボートの中で待つ。私、帰るまで、二人、外出ること禁止。トイレもだめ、私がここに居るうちにトイレ済ませろ」

デイ「生物は人間種です。裸の男女100、武器持ち被服38、被服20の計158です。隊列の長さは60m、移動速度は時速2.2Km時」

私「私、10分後に出発する。理解したかクルミ、サニー」


私は陸戦戦闘スーツと戦闘支援ヘッドセットを装着した。マガジンに先ほど使って減った分の2発を追加する。予備のマガジンにも40発を詰め、ポーチに入れた。拳銃は1丁、腰のカセットに装着した。私は冒険商隊を救命ボートから、できるだけ遠くで反転させたい。さあ、出発時間だ。クルミ、サニーはもうトイレを済ませていた。

『救命ボートAI、私が帰るまでクルミとサニーの外出を禁止する。私が死んだ場合、外出制限は解除、二人に私の死を伝えろ。私は出る』

救命イボートAIは了承の意を伝えてきた。


私「私、出る」

クルミ、サニー「魔人様、ご武運をお祈り致します」


まず、水場まで走る。6分で着いた。川を渡り、15分走ると冒険商隊の先頭が見えた。距離は50m。私は大声で話した。


私「止まれ。我は魔人、ここは魔人の地。引き返せ」


冒険商隊の行進は止まらなかった。私は先頭の武器持ちの一人をライフルで撃ち殺した。先頭の武器を持った二人が武器をかざして走って来る。その二人もライフルで撃っていく。

さすがに冒険商隊の行進は止まった。


私「もう一度だけ言う。ここは魔人の地。引き返せ。進むなら、武器持ち、服を着た者の順で殺す」


冒険商隊は大混乱している。先頭の服だけ着た者が隊列の後に走り出す。武器持ちは武器を構えながら後にゆっくり後退していく。裸の男女は荷物を下ろし、その場でうずくまっていた。

皆声を発しない。一瞬の静寂が訪れる。


「待ってくだされ、魔人殿」


いかにも意志の強そうな青年が最後尾から歩いてくる。


青年「私はこの冒険商隊の隊長、ガシムと申します。我らは魔人殿に敵対致しません。我らの目的地はドラゴンツリー、その種を欲しています。魔人殿には手を出しません。種を採取した場合、直ぐに帰ります。お通し下さい」

私「お前達の仲間二人が先ほど、我の子分を襲った。その二人は殺した。ガシムよ、お前達は既に我に敵対している。だが、今すぐ引き返すなら、お前達の罪は問わない。引き返せ」


その時、前方から矢が10本放たれた。デイが私の筋肉を制御し、全ての矢を避けた。惑星サランに降下して、私は初めて矢を見た。もう飛び道具は発明済みか。

私は近場の武器持ちにライフルの照準を合わせ、射撃を再開した。1秒で一人のペースで撃ち殺していく。


ガシム「魔人様、これは間違いです。矢を射かけた者は罰を受けさせます。それに通行料をお支払いします。奴婢を、魔人様の気に入った奴婢を5匹お渡しします。どうか、どうかお気を鎮めください」


人類同盟に加盟する星の軍人にその言葉は通用しない。攻撃しておいて、攻撃が通じず、戦況が不利になると、攻撃自体が間違いだと弁明する。なぜ、そんな甘い言い訳が通じると思うのだろう。不思議だ。

私は武器持ちを順に射殺していく。裸の女の間に隠れている武器持ちがいたが、上空ではドローンが戦況を監視していた。ドローンは誤魔化せない。武器持ちを全員射殺した。私はボーチにしまった装弾済みライフルマガジンをライフルのマガジンと交換した。ガシムを含め、服を着た者20名が残った。


ガシム「魔人様、降参いたします。我らは武器を持っていません。なにとど命だけはお助け下さい」

皆が一斉に手のひらが見えるよう両手を挙げた。

一度敵対しておいて、戦況が悪化すれば、謝れば済むと思っているようだ。甘いという以外に言葉がない。私は全員、射殺した。


最後に100名の裸の男女が残った。強制的に連れて来られた者たちだ。この人達に罪はない。殺せば私は犯罪者だ。しかし、連れ帰ることもできない。この人達は今は敵ではないが、間接的、直接的に私やクルミ、サニーを害する可能性がある。この者たちの過酷な運命には同情するが、私が助ける事はできない。

私「奴婢達よ。そなた達は罪を問わない。しかし、これより南に入ることを禁じる。南に入った者は殺す」

私はそう言い残し、救命ボートに帰投した。


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