表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結済】ラジオの裏側で  作者: ユズ(『ラジ裏』修正版・順次更新中)
第2章:Re:sonance ― 共鳴 ―

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/39

9゜Happy Birthday Mizuki ! 〜プレゼントの温度〜

本日11月11日は瀬田瑞樹のバースデー!


誕生日なのに…相変わらずな毎日が愛おしいですね

久保視点→瀬田視点と移り変わります

<< SIDE : 久保 >>


技術部のドアを開けようとした瞬間、ガチャっと音がして内側から扉が開いた。その直後、目に入ってきたのは俺の恋人瀬田瑞樹だった。

思わず抱きつきたくなる衝動を…なんとか抑える。


「瀬田!ちょっといい?」


表情で「よくない」と不機嫌さを現している。それでも、そんなのお構いなしに手を引っ張り廊下を進んで行く。


「おい、どこいくんだよ」


後ろから文句が聞こえるがそんなの無視。


目的の場所に辿り着くと、瀬田を先に部屋に入れ自分も後から入り、後ろ手にガチャっと鍵をかけた。



ガバッと後ろから抱きつき、瀬田の首筋あたりで深呼吸をする。

久しぶりの匂いに抱き締める力が強くなる。


「ちょっとだけ。久しぶりに瑞樹を補充させて」


静かな室内に瀬田の溜息が聞こえたが、文句は聞こえなかった。




「そろそろ離せ。というか、こんな所に連れ込むな」


どのぐらい抱きついていたのかは分からないが、瀬田の文句が聞こえ仕方なく離す。とりあえず少しは落ち着いた気がする。


でも、まだ足りない。


仮眠室のベッドに座り両手を広げるとこっちをジッと睨んできたが、「後少しだけ」というと仕方なく近寄ってきてくれたので膝の上に向かい合わせに抱きあげた。


「もう2週間も放置されてるんだから、少しぐらいいいだろ?」


至近距離で瀬田の目を見つめると、瀬田も放置している自覚があるのか気まずそうに視線を逸らした。


「ねぇ、瑞樹、こっち向いてよ」


甘く囁くと、渋々ながらこっちを向いてくれたその瞬間、キスをした。


逃げられないように片手を頭に、もう片手は腰に。


もぞもぞと体を揺すり抵抗してくるが、瀬田に力で負けるはずがない。


文句を言うためなのか、口が僅かに開いた隙に舌を差し込む。


絡めるように動かしながら、時折瀬田の舌を吸うとギュッと俺のTシャツを握ってくる。


「…んっ」


そんな可愛い仕草と漏れ出る吐息を聞くと抑えが効かなくなるわけで…


腰に回していた手を瀬田のカットソーの裾から忍び込ませ背中を弄る。


久しぶりの生瀬田だ…と感動してたら…



「いい加減にしろよ!」



その直後、頭にガツンと衝撃が走った。


何が起こったのか分からずにぽかんとしてると、さっさと膝の上から降り、出て行こうとする背中が見えた。


「職場でエロいことするなって言ったよな。もう顔見せるな」


そう言って「バタン」と大きな音を立ててドアが閉まった。


「はぁ〜。やりすぎたか…。でも、もうこれ以上は限界だったんだよな…」


とりあえず優斗にでも慰めてもらうか…。

愚痴を言うだけでも気が紛れるだろうし…。


そう思い、ポケットからスマホを取り出した。




そもそも、なんでこんな状況になったのかと言うと…

あれは2週間前の9月最後の週末。


いつもの様に仕事が終わり、瀬田の家へ帰ったのだが…。

勝手知ったる瀬田の家だ。鍵を開けて中へ入りリュックを置こうとしたとき。キッチンのテーブルでパソコンを広げて仕事をしていた瀬田がこちらを見ることもなく


「とりあえず当分忙しいから自分の家に帰ってもらっていい?」


いきなり投げられた言葉に、一瞬何を言われてるのか分からなかったが、瀬田を見るとなんとなくイライラしているのは分かった。


「いつまで?たまには来てもいいだろ?」


「忙しいのが終わるまで。邪魔だからいいって言うまで来るな」


「は?」


冗談じゃない。期限も決められずに一方的に来るななんて。瀬田になおも食い下がろうと思った矢先、背中を押され玄関の方へ歩かされる。


「ちょっと待って。せめて期限を決めて…」


言い終わる前に玄関を出され、「じゃあな」と一言聞こえた瞬間、バタンとドアが閉まった。


「はぁ〜…」


こうなったら話も聞いてくれない、連絡しても返ってこないのは過去の経験から分かってる。


再度大きな溜息を吐き、目の前の玄関を見つめるが、こんな所にいつまで居ても入れてくれるわけがないし。

諦めて自宅へ帰るために階段を降った。



あれから何度メッセージを送っても既読にはなるが返信はない。


で、瀬田の顔を見た瞬間、我慢の限界が来たというわけ。




とりあえず手当たり次第カゴに酒を放り込むが、瀬田のことを思う度に溜息が漏れる。


そのせいなのか、手に下げたカゴに視線を落とすと…。


ちょっと多いか?でも、足らないよりはいいよな。


そう考え、レジに向かった。




「なんだ、西條も来てたのか」


玄関まで出迎えに来てくれた優斗の後ろに着いてキッチンへ行くと、帰る時、一緒のエレベーターに乗り合わせた顔が見えた。


「お疲れ様です。って、行き先、ここだったんですね…」


夕食の準備を手伝っていたのか、棚から出した食器を持ったままビックリして固まっている。ほんと西條は思ってることが顔に出て分かりやすい。


「西條、最近瀬田が忙しくて機嫌悪いんだけど何か知ってるか?」


「あ〜…」


瀬田が担当している番組のプロデューサーだ。詳細を知っているだろうと話を振ったらやっぱり。


とりあえず空いてる椅子に座り、話を聞くため手招きをして向かいに座らせるが。


「話は後にして、ご飯できてるから先に食べようか」


テーブルの上に並べられた料理を見た瞬間、お腹が鳴る。


熱々の湯気を立てているグラタン、その横にはトマトの赤色にパプリカの黄色が目を惹くサラダボウル。スモークサーモンのマリネはフワッとディルの香りがする。そしてこちらも熱々のオニオンスープにパリッと香ばしそうなバゲット。


料理が趣味の優斗の腕はプロ並みだ。彩りに香り、温度、どれも最高の状態で早速フォークに手がのびる。


「とりあえず白でいい?」


こちらが答える前に、グラスにワインが注がれる。もう愚痴よりもお腹を満たす欲望が勝つのはしょうがない。


サーモンのマリネを一口、口に入れる。誰かの手作りなんて…いつぶりだろう。


気心が知れた相手がいる家って…やっぱり温かいな。





「陸也、どうする?まだ飲む?コーヒーでも淹れる?」


テーブルに頬杖を着き、食後のまったりとした時間を満喫していたが、ふと西條が視界に入った。


「コーヒーにするか。このままだと西條が潰れそうだ。まだこれから喋ってもらわないといけないしな」


真っ赤な顔でフニャッと笑っている西條が、急にビクッとして横川に体を寄せた。


「え?なんか怖いんですけど。俺…帰っていいですか」


「ダメ。陸也が知りたいことにちゃんと答えような」


「先輩はどっちの味方なんですか…」


笑顔で言う優斗の顔を見て、さらに怯えた表情をしているが、そう言う反応するからイジられるんだよと思ったが黙っておいた。


「え?もちろん西條の事はかわいいけど、陸也かな」


「先輩、そんなの酷いです…」


だからちゃんと聞かれたことには答えような。と再度念押しされてるのを見て、さっきこらえていた笑いが漏れ出た。


「ハハハッ。ほんとお前ら……仲良くて…羨ましくなるよ」




目の前に置かれたコーヒーの香りを嗅ぐと、どうしても瀬田を思い出してしまう。


家で仕事をしている時はいつもパソコンの隣にコーヒーが入ったマグがあった。

あまりにもコーヒばかり飲んでいるから心配だったが、俺が買ってきたマグで飲んでる姿には癒されていたんだよな。


そんな想いを消すように、コーヒーを一口飲む。


「今日、どうしても我慢できなくなってさ…。仮眠室に瀬田を連れ込んじゃったんだよね…」


その直後、大きなため息が聞こえてきた。俺と瀬田のことをよく知っている2人だ。多分、連れ込んでどうなったかも分かったんだろう。


ま、無言でスルーされるよりマシなんだけど。


「お前が完全に悪いだろ。そろそろ瀬田君が愛想を尽かすんじゃないか?」


2人とも呆れたような顔をしているが、もう我慢の限界だったんだからしょうがないと思うんだよな。


とりあえず優斗の言葉はサラッと流し、西條を睨みつける。


「で、西條、どうして瀬田は機嫌悪いんだ?」


声をかけられビクッとした西條は慌てて俺の方を見るが、やっぱりちょっと飲ませすぎたか?

どこかぽやーんとしている。


「今度の特番担当なんで忙しいんですけど…。実は…。11月単月でスポンサードの10分枠が月、水の2曜日入るんです」


今までのことを思い返すが…。瀬田がやっている昼の番組はかなりの数字を叩き出している。だからスポンサーがつく事はよくあることだ。


「別にそんなの、あの番組なら割とあることだろ」


「そうなんですけど…。今回のスポンサーさん、ちょっと無茶を言うというか、初めて出稿するので心配なのは分かるんです。分かるんですけど、全部の原稿を10月中に欲しいって言い出して」


「それは無茶だろ」


それでか。と納得しかけたが…。


「で、瀬田って仕事は完璧に熟すやつだから、直しの事も考えてこの前出したんですよ。かなり余裕を持って」


まぁ、瀬田の性格を考えたらそうなるだろうな。西條も思い返してちょっと怒っているのか、だんだんと早口になっていく。


「そうしたら、最初言ってたことを180度ひっくり返してきたんですよ!で、また全部書き直し。だから、かなりイライラしてるんだと思います」


「はぁ?」


「俺に文句言われても…」


俺もちょっとムカついたから言い方がキツくなっていた。西條はビクッとして隣の優斗の背中に隠れようとしている。


その横で優斗は楽しそうにしている。


思わずため息が漏れた。またしても西條がビクッとするが、そんなのは無視だ。


とりあえず理由は分かったが…。


「理由は分かった。分かったけど…。でも、殴ることはないよな」


同時に溜息を吐く2人が目に入った。






優斗の家で愚痴を溢してから少し経った頃だった。


仕事終わりに編成部を覗くと、まだ残ってどこかに電話をしている瀬田の姿が目に入った。


とりあえずこの前のことは謝っておいた方がいい…よな?


そう思い向かいに座って電話が終わるのを待っていたが…。


さっき一瞬目があったから俺に気付いているはず。

なのに、そんな事はなかったかのように無視してパソコンに向かっている。


「瀬田」


呼びかけるけど無視される。耳元を見るが、今日はイヤフォンはしていない。ちゃんと聞こえてるはず。


「瀬田」




「瀬田!」



あまりにも無視されるから、遂に実力行使に出てパソコンを取り上げた。


「…………」


無言で俺の手からパソコンを取り返すと、何事もなかったかのように元の位置に戻して原稿を書き始めた。


それにイラっとして、またパソコンを取り上げる。


「はぁ〜…」


大きな溜息が聞こえ、目は合うものの無表情で、俺の知っている瀬田ではないように見えた。


「なにするんだよ。顔を見せるなって言っただろ。パソコン返せ」


それだけ言ってパソコンを俺の手から再度ひったくってまた何もなかったかのように仕事をしだした。


「あぁ、そうかよ。分かったよ!もういい」


机をバンっと叩いて立ち上がると足早に編成部を出た。



自然と足は優斗の家に向かっていた。


「謝ろうと思って、編成部にいた瀬田に話しかけたんだけど、見事に無視されて…。顔も見たくないって拒絶された」


「あのな…。この前西條が言ってたけど、忙しくて気が立ってるだろうから、しばらくそっとしておいてあげな」


優斗は心底呆れたという顔をして大きな溜息を吐いている。


「もう1ヶ月近くも放っておかれてるんだぞ。そろそろ無理…壊れるかも」


向かいから、今日何度目かの大きな溜息が聞こえた。




そんな矢先、俺はやらかしちゃったんだよな。





<< SIDE : 瀬田 >>


いつもの様に昼間の番組が終わって一息ついた時、スタジオにプロデューサーである西條が顔を出した。


そういえば今日は放送中に見なかったな。


そんな事を思いながらも、少しだけ固い表情をしながら入ってきたのが気になる。


「何か問題でも起こった?」


「あれ?もしかして久保さんから聞いた?」


この番組のことではないと分かり、ホッとするが__今、久保さんって言ったか?


西條は俺の向かいに座ったと思ったら、手に持っていたパソコンを開き、画面をこちらに向けてきた。


そこに表示されていたのは…


「久保さん、昨日、放送事故したみたいなんだ。正確には不体裁止まりになったみたいだけどね。今日報告書が回ってきた」


どうやらTRAFFIC INFOの際にジャティックの音声フェーダーを上げるのを忘れて頭の部分が欠けたらしい。


普通なら事故案件だけどな。


さらにスクロールして報告書を読むと詳細が分かった。


「はぁ〜。何やってるんだよ」


思わず大きな溜息が出た。昨日家に来た時に少し元気がないなとは思ったけど、来るなって言ってあったから玄関で追い返しちゃったんだよな…。


「これって、もしかして…瀬田が久保さんを放っておいたから…とか?」


「はぁ〜?なんでそこで俺が出てくるんだよ」


西條がじーっと俺のことを見てくるが、俺は関係ない。事故の理由が『ぼーっとしていた』って?本当に俺のせいなのか?違うよな、俺は悪くない…。


うん。俺は絶対に悪くないぞ!


「だって、久保さんこの前先輩の家で愚痴ってたけど、相手するの大変だったんだからな」


向かいから大きな溜息が聞こえ、若干の申し訳なさは感じるが、それはそれだ。


「そんなことよりも。この前やっと11月単月コーナーの原稿が終わったのに、まだ24日の祝日にやる特番の素材編集が残ってて…。おれ、もういつ倒れてもおかしくないんだけど…」


「あ〜…。お疲れ様…。俺にはその言葉しか…。まぁ、頑張って」


憐れみのこもった視線を向けられ、余計に疲れた気がする…。

テーブルに突っ伏し、小さなため息を漏らした。




編成部に戻って残りの仕事をしないと…とは思うが、頭を占めるのはさっき聞いた事故のことだ。


やっぱり…少しは俺にも原因があるのかもな…。


そんな事を思ってしまい、慌てて頭を振った。



やっぱり俺は悪くない。



考えを振り払うようにパソコンを立ち上げた。





番組中、使う予定のCDを編成部に置きっぱなしだったことを思い出した。

ADに頼むことも考えたけど、他曜日の素材と混じっていたら厄介だ。

結局、コーナーのパケを流している間に自分で取りに走った。


1階下にある編成部から階段をかけ登り、スタジオのあるフロアに戻って来た時。

前を歩いている久保さんの背中が目に入った。


明らかに元気がない。


急いでるはずなのに、思わず足が止まってしまった。


ギュッと胸を締め付けられるような…なんとも言えない感覚に襲われ、久保さんがスタジオに入っていって見えなくなるまでただ見つめていた。




あの後も何となく番組に集中できなくて…。気付いたら終わっていて自分でも驚いた。


IORIさんからトークバックがきて、思わず「え?」って返したら「瀬田くんどうしたの?」って心配されてしまった。


番組に集中出来ないなんて最悪だ。


局に残っていても仕事なんて手につかない。そう思い、すぐに荷物を纏めてスタジオを出た。



11月。午後3時を過ぎた街はもう陽が傾き始め、ひんやりとした風が頬を撫でていく。


ぼんやりと歩いていると、長く伸びた自分の影が何となく寂しく見えた。


なんで…隣にいないんだろうな…。



ポケットのスマホが震え、慌てて取り出すが…ただのニュース速報だった。



「今日って…」



日付が目に入り、ハッとした。

このところ、忙しくて曜日しか追っていなかったけど



「俺の誕生日か…」



雑踏にかき消されてしまうほど小さな声が漏れた。


いつもなら久保さんが張り切って何かしてくれる。でも今は…喧嘩してるようなもんだしな。


「はぁ〜…。やっぱり俺も、悪かったか…」


手に持ったままだったスマホを操作する。



『今日の夜、そっち行くから待ってろ!』



送信した瞬間、なんだか吹っ切れた気がした。さっきまで寂しく感じた影さえも楽しそうだ。


夜までに仕事を片付けよう。顔を上げ、家へ急いだ。





「……三日月か」


空には白く輝く細い月が雲の隙間から顔を出していた。


空を見上げるのなんて……いつぶりだろうな。


このところ、仕事に追われていたせいで全く余裕がなかった。



夜の空気はもう、冬のようだ。寒いと感じる日も多くなってきて、今も人気のない路地を冷たい風が吹き抜けていく。



「……コート着てくるべきだったかな」



思わずパーカーの襟元をギュッと握りしめる。


こういう時、必ず久保さんが「寒くないか?」って聞いてくれるんだよな…。

いつも「別に」って返すけど、その一言が…どうしようもなく温かかったな。


「はぁ〜…。寒い!」


背負っているリュックのショルダーをギュッと握り、足を早めた。




今日中に片付けておかないといけない仕事を終わらせたら、もう21時を回ってたんだよね。


慌てて戸締りをして、必要なものを全て仕事用のリュックに詰め込んで出てきたけど…。



「ちゃんと待っててくれてるのかな…」



さっきまで強気だった気持ちが、久保さんの家が近づくと急に小さくなっていく。


それと同時に足が止まった。



ん?



ポケットのスマホが震えた。


『何時でもいいから。ちゃんと待ってるから、気を付けて来るんだぞ』


気付いたら駆け出していた。







顔を見た瞬間、もう、止められなかった。


ガバッと抱きつくと、嗅ぎ慣れた柔軟剤の匂いが鼻先を掠める。


その匂いに思わず涙ぐんだ。

いつもならこんな事で感情を掻き乱されたりしないのに…。


久保さんの溜息が降ってくるのと同時に、優しく頭をポンポンとされる。


「瑞樹、冷たいな。ちゃんとあったかい格好してこないとダメだろ」


「急いでたんだよ。そんなことより…。久保さんは黙って俺の気が済むまで抱きつかれてればいいんだよ!」


顔を上げると涙ぐんでるのがバレる。

久保さんの服に顔を埋めたまま悪態を付く。


「どうして俺の瑞樹はこんなに可愛いんだろうな」


すごく優しくて柔らかい声に、なんだかホッとして安心した。


だって…。


俺は仕事が忙しいって言って、久保さんのことをずっと放置していたのに。

なのに、こんなに優しく抱きしめてくれる。


「でも、瑞樹…。俺はもっと瑞樹の顔を見たいんだけどな」


「そんなの知るか。久保さん、今日は俺の誕生日なんだから、黙って抱きつかれてればいいの!」


「ハハハッ。しょうがないな」







気が済むまで抱きついて、ふと久保さんの顔を見ると目が合った。


「…俺だって…我慢してたんだからな」


「…!」


固まっている久保さんの胸に飛び込むように、背伸びして腕を回した。


その勢いで、キスをする。


触れるだけの子どものようなキスだったのに、心の奥まで温かくなった。

この二人はやっぱり喧嘩してないと!

って思って誕生日なのにこんな話になりました


でも、相変わらず糖度は高めだと思ってます♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ