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【完結済】ラジオの裏側で  作者: ユズ(『ラジ裏』修正版・順次更新中)
第2章:Re:sonance ― 共鳴 ―

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8゜Happy Birthday Yuto & Ao ! 〜色鮮やかで楽しい時間を〜

本日、7月7日は横川の、そして8月7日は西條のお誕生日!


ということで、2人の誕生日デートのお話しになります。

都合上、1話にまとめてしまいました…。

「お疲れ様です!」


技術部のドアを開け、既に口癖になっている挨拶をしながら中に入る。


フロアに横川の姿がないことを確認すると、そのまま隣のマスターへ直行した。


「先輩、お疲れ様です!」


入り口で靴を脱ぎながら挨拶をするが、いつもなら返ってくる声が聞こえない。


今日のマスター勤務は横川のはずだよな?と思いながらも勝手知ったるマスターの中へ入って行くと…


電話の子機を耳に当て、マスター卓の付近で作業している横川が目に入り、こっちに気付いて片手を挙げて挨拶してくれた。


時刻は16を過ぎたところ。時間的に今日のナイターの回線チェックだと気付き、とりあえず完パケを搬入棚に置いて空いてる椅子に座った。



「西條、お疲れさん。完パケの搬入か?」


回線チェックが終わって電話を切った横川が子機を戻しながら聞いてきた。


「そうです。今日の試合って…」


「今日は広島戦だからうちとRCCさんの2局だけ。N本は巨人×横浜でドームだから中止になることもないだろうし」


そう言って俺の向かいに座った。どうやら作業が一段落したのか話し相手になてくれるみたいだ。


「そういえば…。先輩の誕生日の日なんですけど…」


「結構先の話しを出してきたな」


横川が不思議そうにこっちを見てくるが、それもそのはず。まだ5月中旬だ。誕生日まで1ヶ月以上もあるのでそう思うのも無理はない。

俺もさっき完パケを検聴していなかったらまだまだ忘れていたと思うし。


と言うのも、7月7日に担当している番組のアーティストが七夕ライブをやることをすっかり忘れていた。

そこへ顔を出さないといけないため、横川の誕生日当日に祝うことは無理になってしまった。


「うん?別に気にしないけどな。そこまでイベントに興味がない」


「え?」


すごく申し訳ない気持ちになっていた俺とは対照的に、あっけらかんとなんでもないように言う横川にびっくりして一瞬「ぽかん」としてしまったが、言葉の意味を理解して、またしょぼんとした気分になった。


自分と横川のイベントに対しての温度差にショックを受けた。

確かにバレンタインの時もそんな感じだったかも…と思い返していると、顔に出ていたのだろう。目の前で横川が苦笑したのが分かった。


「う〜ん…言い方が悪かったな。なんて言ったら良いかな。イベントはイベントで楽しいだろうから、そういうのに参加する時は楽しむけど、自分自身のことなら別にやらなくてもいいかなって。忘れてることの方が多いしな。

もちろん、西條が俺の誕生日を祝ってくれるのは嬉しいけど、どうしてもその日じゃないと…とも思わないし、何か予定があるなら無理しなくてもいいってこと」


そう言うことか…と理由を聞いてホッとした。

でも、イベントは大切にしたい俺としては当日にお祝いできないのは残念なわけで…。


まだどこかしょぼんとして俯いていた俺の頭を横川がポンポンと軽く叩くと、ふっと笑ったのが分かり顔をあげた。


「俺の誕生日は…まぁ、別にいいとして。西條の誕生日は何かして欲しいことあるのか?俺の1ヶ月後だろ?」


そう聞かれても、何かして欲しいこと…

すぐには思いつかない。


「俺は先輩と一緒に過ごせればそれでいいですし…」


「じゃあ、西條に喜んでもらえるように何か考えておくよ」


「え?なんか嬉しいです。楽しみにしてますね」


優しい笑顔でそう言う横川の顔を見たら嬉しくなるのと同時に元気が出た。

単純だとは思うが、誕生日まで頑張れる気がする。


仕事中だと言うことを忘れるほど横川との話しが楽しくて夢中になっていたが、同報連絡のチャイムがフロアに響いたことで現実に戻された。


「はぁ〜。とりあえず残りの仕事片付けてきます。先輩、お疲れ様でした」





マスターで誕生日の話しをしてから数日が経ち、いつものように番組の立ち合いをしていたとき…。


立ち上げていたノートPCの画面にポップアップが表示され、メッセージが来たことを知らせてくれる。

クリックするとそれは横川からだった。


『お疲れ様

誕生日、何がいいか考えたんだけど夏祭りに行こうかと思って

海の日は祝日だから休みって言ってたよな?

誕生日よりも前になっちゃうが…

16時にうちに来て、浴衣着て夏祭りを楽しんで、花火を見よう』


メールの内容にビックリして短い文章なのに何度も読み返してしまった。

横川からまさか外でデート、しかもその内容が夏祭りなんて意外すぎて。


でも、嬉しくてすぐにスマホのスケジュールに予定を入れた。


どうやら顔に出ていたらしく、振り返った瀬田が俺を見て嫌そうに「うわ〜」って反応をしてたらしいが全然気付かなかった。




後日、意外すぎて横川に聞いたら、通勤でバスに乗っていた時に広告を見たらしい。

『有料座席のチケットを購入すると座ってゆったりと花火を鑑賞できます』って書いてあったのを見て、それならと決めたそうだ。


確かに最近の花火大会って必ず有料座席あるもんな。



予定が決まってからは遠足前の小学生か…って突っ込みたくなるぐらい浮かれていた。

まだ1ヶ月以上あるのに指折り数えて楽しみにしている。


ついに瀬田から「いい加減にしろ。そろそろ事故るぞ」と番組前の打ち合わせの時に言われてしまった。そんなに浮かれてるように見えるんだ…と思い気を引き締めようと思うが楽しみなものはしょうがない。


でも、事故をして横川の耳に入ったら中止になるだろうと考え、一旦頭から追いやった。





夏祭りデート当日、朝起きて外を見ると綺麗な青空が広がっていた。ベランダに出ると珍しく湿度が低くて気持ちがいい。今は日陰だからそう思うだけで、これが日向だと…想像するだけでうんざりするが今日は横川と夏祭りデートだ。


それだけでどんなにゲンナリする暑さでも気持ちが上がるから不思議だ。


手元のスマホで天気予報を確認すると今日は一日通して降水確率は0%。


でも…


予想最高気温37度


夕方になれば少し気温も下がるだろうし、花火を見る頃には風も少し出るんじゃないかと予想してスマホをポケットにしまい、部屋の中に戻った。




16時に横川の家に行くと浴衣一式が用意してあった。

それを着せてもらい、鏡の前で自分の姿を確認するとますますテンションが上がる。


やっぱり服装も大事だなって思った。もちろん普段の服装でも楽しめるんだろうけど、行く前からもう夏祭りの気分だ。


いつも思うが、横川はこういった気配りがちゃんと出来る大人なんだって。自分だったらこうはいかない。


「やっぱり先輩はかっこいいな…」


「うん?何か言ったか?」


大きな溜息と共に出た独り言に隣の部屋で着替えている横川が反応したが、「なんでもないです」と言って誤魔化した。




夏祭り会場に着くと、もうすでに4車線ある大通りは車両通行止めになっていて両脇に屋台が所狭しと並んでいる。

パッと見える範囲だけでも定番のたこ焼きや焼きそば、かき氷などの屋台が何軒もある。


例年30万人以上が来る祭りだけあって、メインの花火大会までまだ数時間はあるのにすでにすごい人混みだ。

この辺りでは一番大きな夏祭りとして有名で、中学生や高校生が夏休み前に付き合うと最初に来るデートがこの夏祭りになると言ってもいいほど。


だからか、周りを見渡すと中学生や高校生のカップルがたくさん目に入る。


そんな中に俺たち男2人という組み合わせは浮くかも…と思ったが、人混みが凄すぎて誰も他人を気にする余裕がないので大丈夫だろう。


18時を過ぎるともう少し車両通行止めの範囲が広がり、それに伴いどんどん人も増えるらしい。


これ以上ってことは身動きできないんじゃ…。

今でも気を付けないと人とぶつかりそう。


でも、祭り特有のお囃子のようなBGMが流れ、あちらこちらから楽しそうな声が聞こえるし、風に乗って美味しそうな匂いも漂ってくる。そうなると、ごちゃごちゃ考えていたことはすっかり飛んでいた。


「とりあえず屋台を一通り見て回るか。ある程度目星を付けておいて、花火の鑑賞エリアに行く前に買っていけばいいよな」


もう屋台しか目に入ってない俺に隣の横川がそう提案してきたので、その案に賛成し端から端まで歩くことに。


気になるものがある度に足を止めるのでなかなか進まない。


暑さに負けてカキ氷を食べたり、ヨーヨー釣りをしたり、射的もして遊んだ。


横川が射的で欲しいものを全部取っていく様はすごくカッコ良かったが、そもそもあれって倒れないようにしてあるんじゃ…。


え?あれってやっぱり都市伝説なの?



そんな中、信じられない光景が目に飛び込んできて思わず隣にいる横川の浴衣の袖を引っ張っていた。


「先輩!スイカが丸ごと売ってるんですけど!?」


ビニールプールに水が張ってあり、その中に大小様々なスイカが並んでいる。

ビックリして興奮気味に話す俺に笑いながら「結構前からあるぞ」と教えてくれた。


俺、どれだけ夏祭りに来てないんだろうと思ったのと同時に、横川は誰かとこんなふうにデートで来たのかな…と考えてしまい少しだけ胸が苦しくなった。


「うん?スイカ買うか?」


「え?あぁ、食べきれないと思うんで大丈夫です。それよりもそろそろ何か買って移動しますか?」


ぼーっとスイカを見ていたので欲しいと勘違いしたのだろう。


気づいたら辺りは夕焼けが夜を連れてくる寸前だった。マジックアワーという時間帯なんだと思うが、海の方を見ると鮮やかなオレンジ色の上にブルーのグラデーションが広がっている。


そんな綺麗な景色とは反対に、なんとなくモヤモヤとした気持ちを抱えたまま横川の歩くすぐ後ろをついて行った。


「ほら。はぐれるといけないだろ」


振り返った横川が手を差し出してきた。


周りは人混みでぎゅうぎゅうだし、もう暗くなりかけてる。


今日ぐらいは外で手を繋いでもいいよね。そう思って横川の手を取った。





「え?本当にこの席なんですか?」


横川について有料観覧席に向かい、ここだよと言われた席を見てビックリした。


なんと最前列の中央寄り。高さ50㎝ぐらいと低めのパーティションで区切られているそこは広さ2メートル四方もあるスペースだった。


芝生広場に作られたスペースにはクッション性のあるシートが敷かれており、座って観てもいいし、寝転がって観てもいいらしい。


早速シートの上に座ると爽やかな海風を感じた。夜になり、少し風が出てきたようだ。


目の前には幅1メートル程の遊歩道と、道と海を隔てる柵しかないので遮るものが全くない。

多分、寝っ転がったら花火しか目に入らないだろう。


そんな凄い場所のチケット金額が気になってしまい横川に聞くと「どこかへ泊まりで出かけるよりは遥かに安いから気にするな」って言われてしまった。


こんなにしてもらって俺は横川の誕生日に何もしていない。

もちろん、ゆっくりと時間が取れる時に何かしようとは思っているが、こんなスマートには出来ない。

そんなこともあって、嬉しいのだけど凹んでしまった。


「なんか…俺には勿体無いぐらいです…」


思わず心の声が漏れ出ていた。


後ろでに手を付いて足を伸ばして座っていたが、気付いたら視界に入るのは真っ暗な空だった。

どうやら横川に腕を引っ張られ、バランスを崩して後ろに倒れたらしい。


「西條、こっち見て」


横から声がしてそっちを向くと、優しく笑う横川と目が合った。


「俺は西條に笑ってほしいだけなんだよ。どうしたら楽しんでくれるのか。それだけを考えて今日ここに連れてきたんだけどな」


「先輩…」


「それに…。楽しんでもらいたい。喜んでもらいたい。そう思って心を砕く相手は西條だけなんだけど?」


真剣な目で見つめられ、俺がここに来るまで余計なことを考えていたことなんてとっくに気付いていると言われているようだった。


「…ごめんなさい」


なんだか気まずくて横川から視線を逸らしたら、向かいから大きな溜息が聞こえた。


「そうだな…。今、ここで西條からキスしてくれたら許してあげようか」


え?と思い横川の方を見ると、意地悪そうな笑みを浮かべている。

いくらパーティションで区切られ、自分たちも寝転がっているとはいえ、野外だし誰か立ち上がったら見えてしまう。


迷っていると周囲の照明が消え、その直後に大きな爆発音が聞こえた。


花火大会が始まった。


「ほら、早く。それともここでキスよりももっとイタズラされたい?」


花火が打ち上げられるたびに横川の顔が照らし出され、相変わらず意地悪そうに笑っている。

横川はやると言ったら本当にやる。そのことは俺が一番よく分かってる。


覚悟を決め、横川の方に体を寄せる。


横川の首へ腕を絡めようと伸ばすと、それに気付いて頭を少し上げてくれた。


抱き寄せ、キスをして離れようとしたら横川にギュッと抱きしめられる。

それに気を取られた瞬間、横川の舌が入ってきて口腔内を舐めまわされたと思ったら、そのまま舌を絡められ吸われる。


「…んんっ」


思わず吐息が漏れ出るが、周りの雑踏ノイズと花火の音でかき消されているだろう。


息が苦しくなって頭がぼーっとしてきた頃、ようやく解放された。


「…先輩…。こんなところで…こんなの酷いですって」


暗いから分からないが、多分、顔が真っ赤になっている気がする。


それに…。


そんな俺を揶揄うように横川が耳元で囁いた。


「なんだったらここで抜いてあげようか?」


「…先輩、性格悪すぎ…」


やっぱりバレてた。「そんなの分かってるだろ」と言って意地悪そうに笑っている横川の顔が暗くて見えないはずなのに見えた気がした。




花火は40分にわたって打ち上げられ、オーソドックスな菊、牡丹、柳といったものからハートや星などのいわゆる型物、仕掛け花火に水上花火、スターマイン、最後は大きな尺玉とさまざまな種類があって目を楽しませてくれた。


屋台で買ってきたものを食べたり、スマホで写真を撮ったりもして、こんなにのんびり花火を見るのは久しぶりで楽しい時間はあっという間だった。



花火大会終了のアナウンスとともに周囲の照明がつき、周りの観客たちが一斉に出口へと向かう。


そんな光景をぼーっと眺め、そうだこの混雑が嫌で夏祭りから遠ざかってたんだってことを思い出した。


でも、このままここで座っていてもしょうがないので自分たちも流れにのって歩き出す。


有料観覧席の出口を少しすぎたところで隣を歩いていた横川に手を引っ張られた。


「西條、こっち」


「え?駅は反対ですよ?」


顔だけ駅の方を振り返りながらも横川に引っ張られるまま歩いていく。


「いいから、付いてきて」


そう言われて5分ほど歩いた頃だろうか。

目の前に1軒の店が見えた。


夜ではっきりとは分からないが、白い壁が周りの明かりでぼんやりと浮かび上がっていて、木製のガラス扉の脇に看板が立っていた。



「Café & Bar Lueur」



店内は薄っすらと明かりがついているようだが入り口に「close」の看板がぶら下がってる。


そんなのを気にもしないで横川が扉を開け店内へ入っていく。

訳がわからず足が止まっていたが、慌てて店内へ入るとカランカランと軽快なベルの音がした。


「新、今日はありがとな。他にも誰か来るのか?」


うん?知り合い?


横川がカウンターの内側にいる人物に声をかけた。


「優斗、いいって。今日は営業するとトラブルも多く発生するから面倒で休みにしてた。というか、まぁ、知り合いで花火見に来た奴らの退避場所にって思ってたんだけど、まさか優斗が来るとは思わなかったからびっくりしたよ。他はみんな夏よりも冬の方が空いてるっていって夏にはあんまり来ないな。暑すぎるし…」


ニコッと笑いながら説明してくれた人物は佐々木新ささきあらたというそう。大学時代の同級生で3年で社会人を辞め、調免を取ってこの店をやっているらしい。


そんな佐々木の話しを聞いてなるほどって思った。ここに来るまでファミレスやカラオケ店の前、コンビニなど色んな店の前を通ってきたがどこも人で溢れていて、ファミレスに至っては入れない人で列が出来ていた。

普段来ない客層だとトラブルも起きるだろうから、正解なのかもと思った。


「お腹空いてるなら何か作るし、何か飲みたいなら言ってくれたらお酒も出せるよ」


「う〜ん、西條はお腹空いてる?」


横川が入り口に立ったままだった俺を振り返って手招きをする。


「え?あ〜。屋台の食べ物結構食べたんでそこまでは」


「そう?了解。それにしても優斗が花火大会に来るなんてな。メールもらったときびっくりしすぎて声出た。しかも、誰かと一緒って…」


佐々木がカウンターのスツールに座った俺の方を見てくるが、なんだか横川を見る目と温度差がある感じがする。


「あぁ、まぁたまにはイベントごとも良いかなって」


横川はなんとも思っていないようで、佐々木と笑顔で会話をしている。


「ふ〜ん、君の影響かな」


そう言って佐々木が俺の方をじーっと見てきた。


「え?なんですか?」


「いや、なんでも?ふ〜ん、優斗の好みってこんなんだったんだ」


「え?」


ぼそっと小声で聞こえた言葉になんとなく敵意を感じたんだけど…気のせいだよね?

俺にしか聞こえないぐらいの声の大きさだった。


多少の違和感を感じたものの、それ以降は何にも無かった。

佐々木は横川と主にしゃべってはいるものの適度に俺にも話を振ってくれ、さっきの敵意は感じられない。




「結構長居しちゃったな」


横川が腕時計を確認すると23時を回ったところだった。


「優斗って今も同じ場所に住んでるの?」


「あぁ、ずっと変わってない」


「じゃあここからだと乗り換えあるよね。そこまで車で送るよ。その格好、疲れるでしょ」


そろそろ駅構内も空いてるだろうと帰ろうとした時、佐々木が乗り換えの駅まで送るといってきた。


「そうか、ありがとう」


佐々木に車で2駅先まで送ってもらうことに。




横川の自宅に帰ってくると、佐々木のことで少しモヤモヤしていた俺は後ろから抱きついた。


「うん?どうした?疲れたか?」


「少し疲れましたけど、なんとなく先輩に甘えたくなりました」


「ははっ、西條はかわいいな。顔を見せて?」


そう言われ横川から一旦離れると、横川がこっちを向いて頭を撫でてくれるので、またギュッと抱きついた。


「本当に何かあった?」


ふるふると頭を左右に振ると、横川の大きなため息が降ってくる。


「ほら、言ってくれないとわからないだろ?」


「……。佐々木さんって…先輩と…」


それ以上口にしたくなくて俯いてしまった。

またしても頭上から大きな溜息が降ってきたと思ったら、横川の手が顎にかかり上を向かされたが…。


目に映った横川はニヤッと笑っていた。


「なんだ、そんなことか。ほんと西條はかわいいな。

でも、花火の時に解決したと思ってたんだけど…。

うーん…。何度も疑われるのは…楽しくないな」


なんか今、部屋の温度が一気に下がった気がした。実際にはエアコンが聞いているから適温なので気のせいなんだろうけど…

なんとなくイヤ〜な予感がする。


「え、やっぱりいいです。聞かなかったことにしてください!それより、俺、先に風呂入って良いですか」


そう言って横川から離れると脱衣所に駆け込んだ。


後ろで横川の笑い声が聞こえたが、無視してバスルームに入り扉を閉める。


その後は横川が風呂から出てくるのを待たずして寝てしまった。


どうやら思った以上に疲れていたらしい。


朝起きて何か忘れているような気もしたが、思い出せなかったので気のせいだと言うことにしておいた。



後日、横川が「誕生日プレゼント何がいいか決めたから、俺と休みの合う日を教えて」と言われ、8月最初の日曜日に横川の家で会うことに。


そこで「最近西條が俺のことを疑ってばかりいるから、1日かけて分かってもらわないとね」と言って抱き潰されたらしいです。


機会があればR18サイトの方で書きたいな…と思ってます。

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