7゜Happy Birthday Rikuya ! 〜久保、猫を飼う?〜
本日、6月28日は久保のお誕生日!
久保はそういう趣味なのね…。というようなお話になってます♪
相変わらずの瀬田とのイチャイチャを楽しんでいただけたら嬉しいです!
本来はR18用に書いた話なので、Rシーンがありましたがカットしてあります。
スマホで時刻を確認すると18時35分と表示されていた。
5月も中旬に差し掛かり、初夏といってもいいほど気温も高くなってきた。それに伴い日も長くなって、この時間でもまだ明るい。
どこかへ飲みに行きたくなるが、帰る時に編成部を覗いたら瀬田の姿が無かったので今日は寄り道せずに帰ることに決め、コンビニで酒だけ仕入れてきた。
多分、瀬田はもう帰っているだろう。
マンションの部屋の前まで来て、リュックから鍵を取り出す。
慣れた手つきで鍵を開け部屋に入るが、ここは俺、久保陸也の自宅…ではない。
「ただいま〜」
「おかえり」
この部屋の主である瀬田瑞樹が返事をしてくれた。
瀬田は俺の恋人で、ひと月の大半は瀬田の家で生活している。
最初こそ「自宅に帰れ」とよく言われたが、最近は言っても無駄だと思われているのか何も言われなくなった。
キッチンのテーブルで原稿を書いていた瀬田の向いに座ると、チラッとこっちに視線を向けたと思ったら壁に掛けてある時計の方へ視線が移動した。
「もう、そんな時間か。久保さん、晩御飯食べてきた?」
そう言いながらノートPCを閉じ「俺はどうしようかな〜」とか言いながらテーブルの上を片付けている。
「外行くのも面倒だし、デリバリーか作るかするか」
結局、冷凍庫にあった肉を焼き肉のタレで焼いた。付け合わせは昨日、瀬田の実家から送られてきて段ボールに入ったままだった野菜の中からキャベツをスライサーで千切りして、冷凍してあったご飯という組み合わせに。
「そういえば。来月の久保さんの誕生日ってどうする?どこか旅行に行くなら番組誰かと変わってもらうし」
ご飯を食べていたら急に思い出したのか、瀬田がそんなことを振ってきた。
こっちを見て首を「こてん」と倒して聞いてくる姿がかわいすぎる…。
そんなことを言うと機嫌が悪くなるからなんともないフリを装うが…。
「来月、連休取りたいってヤツがいて、もうシフト作っちゃったんだよ。28日って…土曜か。その日は誕生日休暇だから家でまったりするか。瀬田は土曜休みだろ?」
「まぁ、久保さんがそれでいいならいいけど」
残念そうにしている瀬田に「瀬田の誕生日はどこか行こうな」と言うと途端に笑顔になったのを見て今すぐ抱きしめたくなった。
結局、欲しいものもない俺は当日何か一つ言うことを聞いてもらうってことに。
もちろん瀬田からもらえるものはなんでも嬉しいけど、俺としては「モノ」より「記憶」の方がいい。
「じゃあ、当日までに考えておくな。楽しみにしておいて」
凄くニヤニヤしていたんだろう。瀬田が目の前で嫌そうな顔をしてるのが目に入った。
「いくらなんでも限度ってものを考えろよ!」
何をしてもらうか考えるのに夢中で瀬田が何か言っていたが耳に入っていなかった。
「どうせ誕生日は一日中ベッドで過ごすことになるんだろ…?」
結局何をやらされるんだか…とかブツブツと言いながら、誕生日の数日前に瀬田から探りが入った。
まぁ、探りというよりも瀬田の場合は直球なんだが。
事前にバラすと確実に機嫌が悪くなるから当日までは絶対に言えない。
でも、ほぼほぼ核心をついたことを言われ、曖昧に返事を返すと「だったら広いベッドがいいから久保さんの家がいい」と言われ、前日にこっちへやって来た。
完璧に寝る準備を終えた瀬田がベッドに寝っ転がりスマホを見ているが、何をしてるのか気になってピッタリとくっついて隣から覗き込むも画面はホームのままで特に何かしてる…訳でもない。
「瀬田、何してるの?」
「……うん」
ずっと画面と睨めっこしたままこっちも見ずに素っ気ない返事が返ってくるだけだ。
諦めてベッドにゴロンと仰向けに転がったとき…
「3…2…1…28日! 久保さん、誕生日おめでとう!」
「え!?」
瀬田が覆い被さるように俺の顔を覗き込んできて、満面の笑みでお祝いしてくれた。
そんな可愛いことをされると理性が保たない訳で…。
瀬田をギュッと抱き寄せ、耳元に顔を近づける。
「ねえ、そんな可愛いことされるとこの後どうなるか分かるよね?……瑞樹」
ビクッと震える瀬田をさらにギュッと抱きしめると、耳をペロッと舐め甘噛みする。
「…あっ…」
それだけでもう、恥ずかしそうに可愛い声で啼いて俺のTシャツをギュッと握りしめている。
もう、数え切れないほど身体を重ねているにも関わらず今だに恥ずかしがる瀬田が愛おしい。
そんな瀬田に煽られてこのまま続きをしそうになるが、今日はやって欲しいことがあるためなんとか思いとどまった。
「瑞樹、本当は明日やってもらおうと思ってたんだけど…」
もう日付変わったのか。ならもういいか…。潤んだ目で見てくる瀬田が可愛くておでこにキスをすると一言声をかけてベッドを出る。
すぐ横に置いてあった袋を持ち瀬田に渡すと、首を傾げながら訝しげに中を覗き込んでいる。
「それ着て欲しいんだけど。誕生日何か一つ言うこと聞いてくれるって言っただろ?」
ニヤッとした顔でそう言うと、瀬田が袋の中身を順番に取り出していく。
が…。
「はぁ?ちょっと待て。俺は限度ってもんを考えろって言ったよな?なんだよコレ…」
深夜の静かな部屋に瀬田の大声が響き渡る。
袋の中身は「黒猫コス」のセットが入っていて、猫耳カチューシャ、鈴の付いたチョーカー、ファー生地のチューブトップとホットパンツ…
「流石にコレは…ドン引くわ…」
瀬田が手に持っているのは黒猫には無くてはならない尻尾だった。
ただの尻尾ならここまで冷たい目で見られることもなかったんだろう。
長い尻尾の先には尻尾より一回り太いアレがくっ付いている。
「でも、それがないと黒猫にならないだろ。一ヶ月かけて瑞樹に似合うものを探したんだから」
ウキウキで言う俺の目の前で大きな溜息を吐いて「無駄な労力使うな…」とか文句が聞こえてくるが何でも一つだけ言うこと聞いてくれるって言ったのは瀬田だ。
「……」
「瑞樹、とりあえず尻尾は置いといて…。それは着てくれる?」
瀬田が持っていた尻尾を引き取り、目を合わせてお願いをすると「しょうがないな…」と大きな溜息を吐きながらも着替え始めた。
瀬田は俺がなんだかんだお願いすると、文句は言うが渋々ながらもやってくれる。
でも、絶対に無理な時は「嫌だ」ってちゃんと言ってくるのでこのパターンは…。
うん、着替えさせたら何とでもなる。
瀬田が着替えている衣ずれの音を聞きながらそんな事を考えていると…
「…うわ〜…。マジかよ…」
いつの間にか着替えた瀬田が嫌そうにお尻の辺りを触っている。
尻尾のためにスリットが入っているのに着てから気付いたらしい。
そんなことよりも…
「ヤバっ、めっちゃかわいい!瑞樹に黒猫は似合いすぎ!」
チューブトップにホットパンツだから、瀬田の華奢な肩に鎖骨のラインもバッチリ見えるし、形のいい小さなお臍やウエストのくびれからお尻にかけてのラインも綺麗に見える。
恥ずかしいからなのか、それとも多少興奮してるのか、既に肌が薄っすら桜色になってるのもそそられる。
あと、なんと言っても猫耳カチューシャ!ちゃんと付けてくれて、もう完璧。やっぱりこのコスは正解、瀬田のためだけに存在してると言っても過言ではないはず。
思わずギュッと抱きしめた時、「チリン」と澄んだ鈴の音がして、それがなお猫っぽさを倍増させてる気がした。
あとはやっぱり…。
「ねぇ、瑞樹。やっぱり尻尾があった方が完璧だと思わない?」
耳元で囁くと俺のTシャツを掴んだまま俯いている。
耳が真っ赤になってるから、多分尻尾のことを想像して恥ずかしくなってるんだって分かった。
あと一押ししたらいけるな。
そう確信した。
「誕生日に可愛い瑞樹の姿が見れたら最高のプレゼントだと思うんだ。ダメかな?尻尾をつけた姿、見せて欲しいな」
再度、耳元で囁き瀬田の返事を待ってると…
「…はぁ〜…分かったよ。尻尾付けた姿見たいんだろ?」
さっきまで恥ずかしがって俯いていたと思ってたのは俺の気のせいか?
なんとなくこの一瞬で瀬田の雰囲気が変わった?
いつもとは違う強気な発言が聞こえてきてぽかんとしてしまったが、こっちを向いた瀬田は目を潤ませながらもまっすぐこっちを見てくる。
「え?瑞樹?」
いつもならこういうことには顔を真っ赤にして恥ずかしそうにしているんだが…。
今日はとっても大胆になっている瀬田に戸惑っていると、手に持っていた尻尾をひったくるように奪って俺の目の前に「ぷら〜ん」と掲げている。
ジリっと片手を付いて近寄ってくると、ぺろっと舌で唇を舐めニヤッと笑うが、その姿がすごく艶っぽい。
「はぁ〜。ヤバい。かわいい…」
本当に猫のようだ。
今日は長い夜になるな…。そう確信した。
「え?もうこんな時間?お昼過ぎてる…」
目が覚めた瀬田が枕元のスマホを見て溜め息混じりに呟いたのが聞こえた。
明け方までイチャイチャしていたからしょうがないと思うんだけど。
「昼過ぎか…。瀬田、お腹空いてる?」
「お腹空いてるけど、午前中にケーキ買いに行こうと思ってたんだよね…まだ残ってるかな…」
どうやらケーキだけは前日に買うよりも当日の方がいいからってことで、店のオープンと同時に買いに行こうと予定していたらしい。
昨日言ってくれたら…って聞いたところで多分無理だったな…。
隣の瀬田を見るとガッカリした顔をしている。
「じゃあ、今からケーキ買いに行って、その帰りぐらいに何かデリバリー頼んだら時間的にもちょうどいいんじゃないか?」
これからの予定を簡単に頭の中で組み立てて瀬田に聞くが、瀬田はスマホを操作していて聞いてない。
「ちょっと待って…」
そう言って瀬田がどこかに電話し出した。
「あっ、ハチさんこんにちは。小さめのホールケーキってまだ残ってます?
やっぱりもうないか…。
じゃあ、ハチさんのオススメで…う〜ん…3つ取り置きしておいてください。
今から準備していくので…30分後ぐらいには取りにいけると思います。すみませんがお願いします」
そう言って通話を終えた瀬田は着替えるためにさっさとベッドから出ていく。
「瀬田、どこに電話してたの?」
いまいち状況が分からない。
「いつも俺がケーキ買いに行くお店。局から歩いて5分ぐらいのところにあるんだよ。だって誕生日なら、やっぱりケーキ欲しいだろ?」
「…そう言うことか。瀬田が食べたいんだろ?」
思惑が分かって自然と笑みが溢れた。そんな瀬田はすでに着替え終わってこっちを振り返ると、今だにベッドに寝転がったままの俺を睨みつけ、近づいてきたと思ったら勢いよく布団を剥がしてくる。
「ほら、早く服着て。置いてくよ!」
「へぇ〜。こんな所にケーキ屋なんてあったんだな」
ビルの合間にポツンと三角屋根が特徴的な洋風の一軒家が建っていた。赤い屋根に白い壁、ウッドデッキのテラスの周りは庭になっていて綺麗に手入れされている。
そんな庭の真ん中に石畳の小径があり、中へ入っていけるようだ。
小径の入り口に小さく「Honey×Honey」と木製の標識のような看板が建っているが、瀬田からケーキ屋だと聞いていなければ普通の民家にしか見えない。
本当に一見してケーキ屋だと分からないので、初めて来たら入るのに躊躇うだろうと考えていたら入り口で足が止まっていた。
そんな俺を気にすることなく瀬田は小径を歩いて店の中へ入って行ったので、慌てて後を追った。
「ハチさん、こんにちはー」
瀬田が挨拶と共に扉を開けると、澄んだベルの音と店員の挨拶の声が返ってきた。
「瀬田君いらっしゃい。ホールケーキ売れちゃっててごめんね。事前に連絡貰えてたら取り置きしておいたんだけど」
店員が申し訳なさそうな顔をして瀬田に話しかけているが、なんか距離が近くないか?
物理的な距離がなんとなく近んだよ…。
「ケーキこれでいいかな?」
そう言って瀬田に箱へ入れてあるケーキを見せている。
「あっ、そうだ。ハチさん…」
瀬田が手招きして、店員にだけ聞こえるよう顔を近づけ何か話しているが、こっちまでは聞こえない。
なんかやっぱり距離が近くないか?
「うん、わかった。ちょっと待っててね」
店員が裏へ行った隙に瀬田に文句を言うと目の前で大きな溜息を吐かれてしまった。
ものの数分で店員が戻ってきたので、モヤモヤとしたまま口をつぐんだ。
店を出た瞬間、文句の続きが思わず口から出ていた。
「なぁ、さっきの店員、距離近くなかったか?」
そう言った瞬間、隣を歩いてる瀬田が大声で笑ったのを見て何か的外れなこと言ったか?と考えるが、あの距離感は俺的に面白くない。
そんな俺の正面に回り込んで、下から見上げるようにニコッと笑った瀬田が可愛すぎてドキッとしてしまった。
土曜の昼間で周りに歩いてる人もいるのに、思わず抱きしめてキスしたくなる。
「ハチさんのことなら心配しなくても大丈夫だって。相手いるし。う〜ん…、変に誤解されたままだと後が怖いからな。詳しくは言えないけど、久保さんも知ってる人だよ」
「へ?俺も知ってるって…」
思いもよらない返答にぽかんとしてしまった。
俺も知ってる相手?
「そんなことより、早く帰って食べよ。誕生日だから特別に俺が食べさせてあげる」
自分の言った事が恥ずかしかったのか、プイッとそっぽ向いたと思ったら俺の手を引っ張って歩き出した。周りに人がいるのに珍しい。
「瀬田、今日どうしたの?なんか可愛すぎなんだけど」
「誕生日だからな。たまには優しくしてあげてるんだよ」
絶対に真っ赤になっているだろう瀬田の顔が見れないのは残念だけど、いつもとは違う瀬田が見れて今日は最高の誕生日だなって思った。
今回、この話をこちらにUPする予定はなかったのですが、今後始めるアナザーストーリーに出す予定のキャラに触れておきたかったので。
最後の方に登場したハチをメインに進んでいくお話になりますので始まりましたらよろしくお願いします!




