4話・あなた魅了しているの?って何の話ですか?
私は地方領主であるお祖母さまの孫娘ではあるものの、一応王家の血筋を引く為、王宮に招かれた時は王宮内で宛がわれている部屋で過ごすことになる。
事情を知らない令嬢達には、それも妬みになっていたのだろう。最近、王宮で出くわすと絡まれることが多くなった。面倒ゴトは避けたいので、なるべくそういった人達からは距離を取ることにしていたのに、その日、グリモード公爵令嬢エリサが部屋を訪ねて来た。
彼女はいつも会うと、不機嫌そうに睨み付けてくる。出来るだけ彼女との接触は避けたいところだったのに、訪問してきたとなると、下手に断れない。断った所で悪く言われるのは確実だし、王宮内で無駄な騒ぎを起こしたくない気持ちもあった。
陛下が強く私を王子妃にしたがっていて、何か揉め事が起こると、だから王家にさっさと嫁いで保護を受けろと言い出すが目に見えていたからだ。
お祖母さまは、私がそれを望んでないことを一番良く知っているので、何とか拒もうとはしているけど、どこまでそれが抗えるか分からない。
婚約話が浮上してから、こちらはずっとお断りしているのに、陛下が諦め切れずに保留にしてしまい、こちらがウンと言うまで頑固にも引き下がる様子はないらしい。
問題ごとがやってきたという思いで、彼女を部屋に通すと、開口一番に言われた。
「あなた、皆を魅了しているの?」
「はあ? 魅了ですか?」
何の話なのか分からない。唐突に言われて何の話かと思った。
「あなたには何か特殊な力でもあって、王宮に勤める方々を洗脳しているとか?」
「わたしにはそのような特殊な力はありませんわ」
「誤魔化さないで。あなたは皆を魅了しているのでしょう? だから皆が心酔してあなたを見るんじゃない。そんなあなたがフィルマン殿下と婚約するなんて、わたくしは認めないわよ」
「じゃあ、あなたがなったらどう?」
彼女は王子妃になるのを切望していると聞いたことがある。それは他の高位貴族達の中でも必死めいていた。恐らく家族にでもけしかけられているのかも知れない。
──陛下もこういうなりたがっている女性を選んであげれば良いのに。
エリサ嬢は性格には難ありだけど、美人だし黙っている分には問題ない。そこそこ優秀だと聞いているしね。
ゲームの中では彼女も私と同じく悪役令嬢で、王子と親しくなったヒロインを虐めていた。
私の言葉が投げやりに聞こえたのか、彼女は眉を顰めた。
「そう言う言い方は殿下に失礼ですわ」
「では私に失礼な口調で話しても良いと?」
彼女の失礼さに腹が立っていたので言い返すと、彼女は目を剥いた。まさか私に反論されるとは思ってなかったようだ。




