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77話・継子と似ている義母



「でも、確かあの後、お代は頂いたよね? あんたの付き添いの女性から。あんときのあんたの態度はあり得ないって思ったけど」


「どうもすみませんでした。あの時はどうかしていました。お恥ずかしい限りですわ。こちらはほんの気

持ちです。お納め下さい」



 パン屋のおばさんに、ベネベッタ王太后は自分で織った一枚のタペストリーを手渡した。それは綺麗な幾何学模様で出来ていて、おばさんは喜んだ。



「良いのかい? こんなに立派な物を頂いて……」


「立派かどうかは分かりませんが、お気に召したなら良かったですわ」



 ベネベッタ王太后はすました顔で言ったが、照れているようだった。パン屋のおばさんもそれを察したようで、「あんたって、素直じゃないね。でも、ありがとう。さっそくお店に飾らせてもらうよ」と、言ってお会計をする場の正面に飾っていた。


「このタペストリーで、店内が華やかになったよ」


 ご機嫌な様子のおばさんは、そう言えばと言い出した。「ミュゲちゃんは、この人と知り合いなのかい?」



「こちらのミュゲは、近々わたくしの娘になるのですわ」


「ベネベッタさま」



 まだそういう話は、フィルマンともしていないのに。先走りすぎですからと止めようとしたら、おばさんがそうかいと喜んでいた。



「この子は良い子だよ。きっと良い嫁さんになるよ。お勧めだよ」


「わたくしもそう思いますわ」



 本人が目の前にいるのに、二人とも褒めてくるから恥ずかしくなった。居たたまれない思いでいると、背後から救い主の声がした。



「母上。ここにいたのですか?」


「あら。フィル。いつ、ここへ?」


「厄介な仕事を片付けて彼女の元へ向かったら、母上が彼女と一緒に出かけたと聞いて、後を追ってきました」



 フィルマンが慌ただしく店内に駆け込んできて、パン屋のおばさんは驚いた。


「息子さん?」


「ええ。自慢の息子ですの」


「あんたにこんなに大きい息子さんがいるなんて、驚いたよ。あんたに似て美男子だね」



 おばさんに言われて気が付いた。ベネベッタ王太后陛下は金髪に碧眼。フィルマンはプラチナブロンドに青い瞳。彼の髪色や瞳の色は、亡き父王を引き継いだようだけど、顔立ちをよく見て見れば、ベネベッタ王太后陛下に似てなくもない。


 ゲームの中では、フィルマンは継母に嫌われている設定だった。でも、この二人を見ているとそれが全く感じられない。会話からも仲の良さが感じられる。

 おばさんと王太后陛下は、顔を見合わせて笑い合っていたが、謎に感じられた。継子と似るって、有りなのだろうか? 



「では母上。彼女は借りていきますよ」


「仕方ないわね。人の恋路を邪魔する者は、馬に蹴られてなんちゃらと言うし、あなた達の邪魔だけはしないわ。愛息子に嫌われたくは無いもの」


 そう言って、ベネベッタ王太后陛下はパン屋のおかみさんと見送ってくれた。


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