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74話・お飾りならお飾りらしくしていろ



「何しにここへ?」


「王太后陛下に毒を盛った犯人を追っていたら、ここに行き着いた」


「たかが一領主がそれを知って、どうしようというのだ?」



 陛下は、フィルマンの発言に睨み返した。余計な詮索をするなと言いたいらしい。



「そうだねぇ。どうしようか?」


「余はこの国の王だ。一声命じただけでおまえなど拘束される。大人しくあの田舎の領地に帰ったらどうだ? あの果実が、この国一番の収穫高を誇るからどうしたと言うのだ? この国で一番偉いのは余だ。余に従え」


「きみは全然、成長しないね」


「馬鹿にするな。立場を弁えろ。兄だと言っても容赦はしないぞ。おい、誰かこいつを摘まみ出せ」



 陛下の感情的になってフィルマンを罵るその姿は、見苦しいものだった。



「立場を弁えるのはそちらの方だ」



 フィルマンの言葉に、反応して黒装束の者達がわらわらと姿を見せ、陛下を取り囲む。陛下は東屋の中で逃げ場が無く怯えた。



「なっ。なんで、誰も応じない?」


「それは僕が彼らの主人だからだよ」


「ま、まさか──、義兄上がクロウの長?」



 陛下は顔色を変えた。クロウの長と言えば、間諜のトップに位置し、彼らを従える王のような存在だ。正体不明のその王が自分の兄だった事を知り、驚愕していた。



「気が付いていなかったのか?」


「そんなこと、知っていたら……」


「ここまで愚かだとはな。宰相、どう思う?」


 フィルマンは自分の手の者に、陛下を取り囲ませている状態で後方を振り返った。そこには好々爺とした宰相が控えていた。



「宰相。助けてくれ。いま、この不届き者が──」


「申し訳ありません。フィルマンさま。何とか立場を分からせようとしましたが……」


「まあ、いい。こちらで何とかしよう」



 陛下は助けが来たと思い、宰相に手を伸ばしたが、宰相はフィルマンに深々と頭を下げていた。その態度を訝る陛下にフィルマンは向き合った。



「ここまで無能だったとはな。残念だよ。フルバード」


 この場をフィルマンは制していた。自分の名を呼ばれて陛下は呆けていた。



「お飾りならお飾りらしく、余計な事はせずに王妃と仲良くしていれば問題なかった。それなのに……」


「余がお飾りだと?」


「おまえのような無能な王を抱く、臣下の苦痛が分かるか?」


「余が無能だと? どこまで愚弄する気だ」



 フルバード陛下が喚くと、フィルマンはどこからか小刀を持ちだし、陛下の首に押し当てた。フルバードはひぃっと声を漏らした。今まで母親のおかげで、暗殺とは無縁で暮らして来た温室育ちのフルバードだ。まさか自分が身の危険を感じるような状態が起きるとは、想定していなかったのだろう。


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