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71話・王妃の事情


「自供して頂いて助かりました。ごねるようなら薬を盛るところでしたから」



 エリサは第1王子だったフィルマンと婚約解消後、第2王子だった今の陛下と婚姻した。第2王子とはフィルマンの婚約者に決まった頃から親しくさせてもらっていた。彼はエリサへの好意を隠しもしなかったので、それは夫婦となっても変わらず続くものと信じていた。



「あの人が悪いのよ。わたくしを裏切ったから……!」



 結婚して初めのうちは毎夜、愛を囁いてくれていた夫は段々と、執務が忙しいのを理由にエリサを遠ざけ始めた。なかなか王妃が子供に恵まれない事を免罪符に、堂々と浮気するようになったのだ。



「どうしてなの? わたくしの何がいけなかったの?」



 エリサのその言葉は、フィルマンにあの日のサクラを思わせた。エリサは深く陛下を愛していた。その愛を注げば注ぐほど、相手には重く感じられて疎まれてしまうほどに。

 フィルマンには、エリサは愚かで滑稽な女としか思えなかった。陛下に彼女は利用されたのだ。陛下は第2王子であった頃から、周囲の側近らに唆されて、前王妃の子であるフィルマンを一方的に敵対視していた。


 フィルマンのことを、伯爵令嬢如きが産んだ王子と見下し、母親が公国の姫だったことから、自分は産まれながらに王太子になる者なのだと信じていた。

 ところが公の場で、父王に王太子として指名されたのはフィルマンであり、彼は臣下に下るように言い渡された。それに我慢ならなかったのか、第2王子はフィルマンの許婚に決まった公爵令嬢エリサに接近した。


 フィルマンの妻となる予定の女を寝取り、フィルマンの鼻を明かしてやるつもりだった弟は、逆にフィルマンから父王の前で二人の仲を暴露され、遊びだった等とは言えず責任を取る形で結婚した。そのことをエリサは知らない。知らないままでいた方が幸せだろうと、フィルマンは暴露する気はない。


 陛下は王子だった頃から、父に似て異性には惚れやすく飽きやすかった。それでも王太子へと導いてくれたエリサには、それなりの対応をしていたようだ。結婚3年目で妊娠報告を聞いた時には大喜びしていたし、それが流れてもエリサを慰めて、5年目に再び妊娠するまで彼女を支えてきた。しかし、その2度目の流産でエリサは心を病み、陛下に強く依存するようになったことで、陛下の心に変化が起こったらしい。王妃とは少しずつ距離を取り始め、現在では仮面夫婦になりかけていた。


 両陛下はなかなか子供に恵まれない。王家存続の為に、宰相らは陛下の浮気に目を瞑った。

王妃としては、妻である自分を蔑ろにした行為に許せないものがあったのだろう。彼女の気持ちも分からないでは無いが、そこは私情よりも公の立場を優先すべきだった。




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