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70話・貴女はやり過ぎた


「彼はなかなか良い働きをしていましたよ。あなたが扱い方を間違わねば……、実に勿体ない」


 フィルマンはしゃがみ込み、後ろ手に縛られたゲッカの顎を持ち上げた。



「良い面構えをしている」


「ゲッカをどうする気? 彼はわたくしの子飼い。あなた方の法に従う術はなくてよ」



 エリサは庇うように声をあげたが、その声には勢いが無かった。



「確かにその通りです。彼はあなたが連れ込んだ公爵家で育ててきた者。我が間諜の者ならその場ですぐに始末出来たものを」


「彼を……、どうする気?」



 フィルマンにねめ付けられて、エリサは青ざめた。フィルマンは温厚そうに見えるが、それは表向きの顔だったようだと嫌でも知ることになった。

 婚約者だった頃は、彼のこのような姿を一度も目にしたことは無い。今まで上手く彼は周囲を欺いてきたのだろう。以前、王太后陛下から忠告されたことがあった。そのことが今更ながらに思い出された。



──クロウにはお気をつけなさい。



 クロウの長は彼らの王のようなものだ。そのクロウの長の機嫌を損ねるような事があれば命がない。

王宮での間諜達は、そのクロウの長から借りているようなもの。と、教えてくれたのも確か、王太后陛下だった。それを王太子妃となったばかりの頃に聞き、不安を覚えて実家からゲッカを呼び出したのだ。



「以前から我らの行動を疎外する者がいて、統率に乱れが生じておりました。陛下にはその相手が特定できれば、好きなようにして構わないと承諾を得ております。もしも、妃殿下がそれを邪魔立てなさるのならば、容赦は致しません」


「まさかあなた、わたくしを──?」



 淡々と話す彼は、氷のように冷え切った瞳を向けてくる。エルサは鋭利な刃物を、押し当てられたような冷たさを首に感じて手で摩った。



「あなたはやり過ぎました。陛下はお怒りです」


「何故わたくしが? 何もしていないわ」



 そう否定しつつも、王妃は内心落ち着かなかった。



「分かりませんか? 陛下のご寵愛するシールズ伯爵令嬢が身籠もりました」


「……! 嘘よ。だって彼女には孕むことがないように薬を……!」



 目を見開いた王妃は、反論しようとして慌てて口元を押さえた。



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