60話・尋問
連行された男は、どんな拷問にも耐える気でいた。所詮、王子さま育ちの領主に何をされても無言を貫く気でいたのに、彼に問われると何故か答えてしまっていた。
「きみは何者だ? 神父ホドリーと名乗っていたが、本当の名前は? それといつから魔法を使っていた?」
「俺はフォリーだ。物心ついた頃には魔法が使えた」
「きみの母は魔法使いだったのか? きみが魔術を扱えるのは母親の影響か?」
「母は少しだけ魔法が扱えた。でも、それを隠して生きていた。だから俺にも、それを誰にも明かさないようにと言っていた」
「きみの母の名は? 何をしていた人だ?」
「母はマーガレッタ。以前は亡き先王陛下の女官を勤めていたが辞めさせられた」
スラスラとフォリーと名乗った男は告白した。実は彼は気が付いてなかったが、喉の渇きを覚えて口にしたコップ一杯の水の中に自白剤が入れてあった。無味無臭の為、飲んだ者には気が付かれない。
「どうしてきみの母親は、女官を辞めることに?」
「亡き先王陛下の子供を身籠もったからだ。王太后陛下にそれを知られて、王宮から追い出された」
フォリーはずっとその言葉を、現王陛下にいつの日かぶつけてやりたいと思っていた。自分は亡き先王陛下が、おまえの父親が、お付きの女官だった自分の母に手を付けて生ませた子供なのだと、真相を明かしてやりたかった。亡き先王陛下は善政を敷いたと民に慕われているが、実際にはとんでもない男だ。自分達母子を認知もせずに、後妻の実家の大公家の心証を悪くするわけにも行かず、なかったことにしたのだから。
「そうか。今までよく生き残ったものだな。賞賛してあげよう」
「なに?」
フィルマンの反応は、フォリーの考えるものとは違った。パンパンと両手を打ち鳴らす。フォリーは彼の異変にあ然とした。




