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52話・嫁は立てるものらしいですよ


 先の王太后陛下は朗らかな御方で、ヴィオラ夫人がお腹に子供を抱えてサクラメントの領主となってからも、色々と気に掛けてくれて、お忍びでこちらに訊ねてこられたこともあったと聞いた。


 ヴィオラ夫人の子供の名付け親は、その先の王太后陛下だったとも聞く。その話に聞いた先の王太后陛下は、心優しい女性で使用人達にも優しく接していたと聞くから、嫁いびりなどする人には思えなかった。


 王太后陛下ベネベッタの「猫かぶりしていてもいつかは姑に、それがバレていびられる羽目になる」と、いう言葉は、その先の王太后陛下を馬鹿にした発言にも聞こえて、腹が立ったのだ。


 ヴィオラ夫人は、先の王太后陛下のことを人徳者として敬っていたのだ。その相手をもベネベッタ王太后陛下は馬鹿にしたのだ。この場にいたらヴィオラ夫人も不快に思ったことだろう。



「あの御方は確かにお優しかったわ。後妻であるわたくしを、責めるような発言もなさらなかった」 


「そのような素晴らしいお姑さまの見本のような御方がいるのですから、わたしのような者に訊ねるよりも、お手本になさったら如何でしょう?」



 王太后陛下に対して、不敬に取られるような事を言っている自覚はあった。でも、黙ってはいられなかった。


 顎髭男の目線は凄みを増し、その場に殺気のようなものがみなぎったような気がする。王太后陛下は何やら思案し出した。不快を買った? 斬られる?


 内心ハラハラしながら判定を待つような気分でいると、王太后陛下が口を開いた。



「あなたの言う通りよ。わたくしは視野に欠けていたようね」



 陛下を挟んで、王太后陛下は、王妃と嫁姑問題で悩んでいたのかも知れない。夫を亡くしたことで、王妃ではなくなり、愛息子や実権を嫁に握られて、住み慣れた王宮を追われる。

 年老いてからのそれは、何もかも奪われたようで辛く寂しいものなのかもしれない。ほんのちょっぴり同情した。わたしを馬鹿にする発言がなかったのなら、全面的に同情したかも知れないのに。



「人徳者の先王太后陛下は、息子に嫁を迎えた高位貴族のご夫人方に、良く言っていたことがあるそうです。『嫁を立ててあげなさい。賢い姑は嫁のすることに一々、目くじらを立てるものではないのよ』と」



 ヴィオラ夫人から聞いた話を披露すると、王太后陛下は目から鱗が落ちたような顔をしていた。顎髭男の眼光からはやや鋭さは抜けていた。少しだけ警戒は緩んだようだ。


 それにしてもいつになったら、ヴィオラ夫人達は戻って来るのだろう。急に王太后陛下は大人しくなってしまうし、気まずいことこの上ない。

 少し言い過ぎたような気もするけど、謝る気にはなれなかった。不敬を問われるのなら、それで受けるしかないだろうなと腹を括っていると、侍女が晩餐の用意が出来たと呼びに来た。





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