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3話・彼女が応じるか応じないかは神のみぞ知る


「ごめん。おまえの話が気になっていたから、この間、おまえの夢に勝手に潜り込ませてもらった」


「いつの間に? 全く気がつかなかった」


「悪い。事後報告になってしまったが、それで確認が取れた。彼女は異世界人だ」



 ノルベールの言葉に、やはりそうだったのかと納得した。道理でいくら捜しても国内で見つかるわけがなかった。国外でもまだ、救いはあっというのに、住んでいる世界が違っただなんて。


「……では会えないのか?」


 フィルマンは真相を知り胸元を押さえ込む。今までは同じ空の下、きっと彼女もどこかで見ているのに違いないと信じ込もうとした。でも、彼女が異世界人だったなんて。問題しかない。


「まだ諦めるのは早いぞ。フィル」


「ノル」


「だから言っただろう? 異世界召喚出来るって」


「でもそれは大丈夫なのか? ここ最近は誰も成し遂げていない。しかもそれは300年前に、こちらの都合で勝手に相手を呼び出すことになり、犯罪のようなものだと批難して封じられた術ではなかったか?」


 その昔、この国は大きな瘴気に見舞われ、魔物が闊歩していたという。この世の終わりだと絶望していた当時の王を救ったのは、「この瘴気を祓う為に異世界人を召喚するべし」と、いう神託だった。半信半疑で神官達と異世界召喚を行い、召喚された女性の神聖力によって害悪は遠ざけられて、瘴気は消滅した。


 その後、異世界から召喚された女性を妻に迎え、この国は栄えていくことになる。それがこの国マキューシの成り立ちだ。


 しかし、異世界召喚は一方的なもの。こちらの世界に召喚された者は、元の世界に帰ることが出来ない。その上、当然のように異世界人の聖神力を王家に引き入れるべく、相手の保護を名目に婚姻を結んでいたので、異世界人は心を病み、早死にするようになったらしい。その危険性をといた王は、異世界召喚を禁じていた。


「まあ、そうだけど。でも、それがもし、相手の承諾を得た上でのことなら?」


「どういう意味だ?」


「相手も承諾してこちらの世界に飛んでくれるなら問題ないよな?」


「……そんなこと出来るのか?」


「陛下には一度きりだと許可を取った。来月ドイスの月の満月の深夜に行う。とにかくこちらから門扉を開いてみる」


 異世界召喚は簡単にできる術でもない。数百年が経ち風化しようとしていたものが、ノルベールの目に留まって解禁されようとしている。


 そんなに上手く行くだろうか? 不安でしかない。


 魔術の使用権限は魔術師長にあるが、本当ならば陛下の為に使用されるべきもの。それを自分のような者の為に使って良いのかと思うが、すでに陛下には許可を取ったとノルベールは言った。


「陛下もおまえに幸せになって欲しいと願っている。15年前のこともあって、おまえはあの二人にとっては、キューピッドのような者だからな。おまえの為になら目を瞑ると言ってくれた」


「ありがとう。感謝する」


「感謝するのはまだ早いぞ。あとは彼女次第だ。彼女が応じるか応じないかは神のみぞ知るだな」


 陛下への説得も根回し済みのノルベールには、頭がさがる想いだ。礼を言えば頼もしい友人は照れ隠しなのか軽く背中を叩いてきた。





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