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31話・おすまし王子


「へぇ。おまえ、サクラを前にすると笑えたんだな。それだけサクラにゾッコンということか。おすまし王子というあだ名は返上だな」


「おすまし王子?」


「こいつはさ、見た目と立場で言い寄ってくる女達に嫌気が差していて、いつもすました顔で相手をしていたから、相手にされない女達から『おすまし王子』と、言われるようになってさ」



 つまり表情が崩れなかったということか。フィルマンを見ると、頭を掻いていた。



「そのような話は良いじゃないか。それよりもサクラの今後のことだけど……」


「わたし出来ればサクラメントに戻りたいです。皆の様子が気になるので」



 こちら側の世界に来てからずっと、お世話になってきた人達だ。ノルベールの大丈夫だという言葉を疑うわけでは無いけど、皆の無事な顔を確認したかった。



「分かった。きみの意見を尊重しよう」


「それで良いのか? フィル」


「こちらの件もまだ済んでいないしね」


「そうだなぁ。じゃあさ、向こうとおまえの所を繋げるか」


「サクラがそれで構わないのなら。サクラ、きみは僕がきみの所を訪れても問題はないかい?」


「フィルマンさまが訪ねて下さったら嬉しいです。でも、サクラメントと、フィルマンさまのいるペアーフィールドは距離があるのでしょう?」



 フィルマンがサクラメントまで来てくれるのは嬉しいけど、この世界では遠い場所への移動手段は主に馬車だと聞いている。


 ノルベール達でさえ、サクラメントに来るのに片道馬車で一ヶ月かけて来たのだ。移動するだけで疲れるだろう。フィルマンには会いたいけど、無理はして欲しくなかった。



「それなら大丈夫だ。問題ない」



 ノルベールがにやりと笑う。



「この稀代の魔術師の技をご覧あれ」


 そう言われて、王宮騎士団長の執務室を退出し、連れて来られたのは、さきほどわたしが転移した場所だった。


「ここは俺の研究室。こことペアーフィールドにあるフィルマンの執務室は繋がっている」


 そう言ってノルベールは、ある扉を押した。するとその先には緑色の絨毯の敷かれた部屋が現れた。まるで隠し部屋のように感じられたが、ドアには転移魔法が施してあるそうで、その部屋はペアーフィールドにあるフィルマンの執務室だと教えられた。


 やはりペアーフィールドも、サクラメント同様に馬車で片道一ヶ月以上かかる場所にあるらしく、その移動距離を省略する為に、この転移ドアを作ったのだとノルベールは言った。


 その部屋に入ってからノルベールが「ちょっと待てよ」と、言い出した。





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