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2話・王宮にあるノルベールの執務兼研究室



「フィルマン!」


「どうした?」



 それから半年後。転移ドアが唐突に開きノルベールが興奮した状態で訪れた。自分が住む古城から王都までは馬車で大体、片道一ヶ月ほどかかるが、王宮にあるノルベールの執務兼研究室と、辺境の地にある自分の執務室は、転移術が施されたドア一枚によって、数秒で行き来が出来る。


 このドアのおかげで王宮に用があるときは、すぐに移動できるので重宝していた。


ノルベールは、ここの所、顔を出さなくなっていたので、仕事に忙殺されているのだろうと思っていたが、熱心に研究していたらしい。その成果を伝えようとしてか、彼は暖炉脇の転移術の施されたドアを開けて、こっちへ来いと手招きしていた。


「見てくれ。こっちだ」


「なんだい?」


 と、訝りつつ転移術の施されたドアを通って向こう側に渡れば、彼の研究室はキラキラとした魔石の板が中央のテーブルに立てて並び置かれ、カラクリの鳥が空中を飛び鳴いて時報を告げる。

壁際には天井までの高さの書籍棚があり、沢山の古書が詰め込まれていた。ここはもともと先代魔術師長のノルベールの父親所有の部屋だったが、今や息子である彼に代替わりしていた。


幼い頃、彼らはこの研究室の、魔石が埋め込まれたカラクリ鳥や他の動物たちに興味があって、良く遊びに来ていた。前魔術師長が在籍中は、この研究室には沢山の猫や、犬、狼、ウサギ等の魔石動物がいて、物珍しさに遊びに来ていたものだが、現在、それらは隠居した前魔術師長の屋敷へと移って行った。残ったのは時報を知らせるカラクリ鳥のみだった。



「なあ、フィル。子供の頃、異世界召喚の話をしたことを覚えているか?」


「それがどうした? でも、あれはかなり昔の話で300年ほど前に、この国でも普通に行われていたというが、実際には術は複雑で実現は不可能とか言うものだよな?」


「ああ」



 ノルベールの父は、この研究室に息子やその友人のフィルマンが出入りするのを禁じなかった。彼がいる時間帯でならと大目に見てくれていた。そのおかげで彼らは前魔術師長が魔石を研究している脇で、古書を広げてよく壮大な夢物語を繰り広げていたものだった。


「それを解読して扱うことが出来ると言ったらどうする?」


「……! ノル。本当か?」


「勿論だ。フィル」


 目を剥くフィルマンに、ノルベールは頷いた。


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