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26話・どうか無事で



 夫人はわたしをロータスに託した。




「ここは任せて。ロータス、ミュゲを私の執務室へ。早く」


「ヴィオラさま」


「ミュゲ、行くぞっ。こっちだ」




 ロータスに引きずられるようにして、わたしは二階にあるヴィオラ夫人の執務室へと連れて行かれた。そしてそこに押し込められた。




「これからこの屋敷は騒がしくなる。すぐにドアの鍵をかけろ。俺かヴィオラさまのどちらかが声をかけるまで、ドアの鍵を開けてはならない。分かったな」


「分かった。ヴィオラさまは大丈夫なの?」


「大丈夫だ。あの御方は魔法を扱える。俺もすぐに戻る」


「気をつけて」




 ドア越しに会話をすると、ヴィオラ夫人のもとへ、ロータスは急いで戻って行ったようだった。部屋に残されたわたしは内鍵をかけると、不安に襲われた。




「これからどうなってしまうの?」




 恐らく騎士達と、ヴィオラ夫人や使用人達は戦っているのだろう。時折、怒声のようなものや、剣がこすれあうような音がして怖かった。元いた世界でも、武器を使っての戦いなど、小説や、漫画、映画など娯楽の世界で、自分の生活とは無縁だった。




 それがこのドア一枚の向こう側で行われている。皆が無事であるようにと祈ることぐらいしか出来なかった。




「どうか無事で……」




 祈ることぐらいしか出来ない自分に情けなさのようなものを感じていると、胸元が熱く感じられた気がした。熱を感じた部分に目をやると、首から提げているペンダントが青い光りを放っているのに気が付いた。アガリー夫妻から御符のようなものと言われて渡されたペンダントだ。




 そのペンダントを握りしめ、「お願い。助けて」と、願うと、目の前が揺らいだ。そして気が付けば、どこかの研究室みたいな場所にいた。




「ミュゲ?」


「ノルベールさん? わたし、どうしてここに? ここはどこですか?」




 目の前にノルベールがいて驚いた。向こうも目を見張っている。自分はヴィオラ夫人の執務室にいたはずなのに、見覚えの無い部屋の中にいた。彼の他にも誰か男性がいたようだが、ヴィオラ達のことで気が急いていたわたしは、ノルベールしか見てなかった。




「ここは王宮内にある俺の研究室だ。きみは何か差し迫った状態に陥り、ペンダントに何かお願いをしただろう? それでここまで転移したに違いない」


「えっ。じゃあ、ここは王都なのですか? サクラメントが大変な状態なのにどうしよう」




 ノルベールは、御符のペンダントがわたしの願いを叶えてここまで転移させたのだと言った。そうなるとサクラメントからは遠く離れた場所に、自分がいることになる。王都からサクラメントまでは、馬車で片道一ヶ月ほどかかると聞いていたのに。



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