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25話・不穏な男




「どこの鷹だと? おまえの目は節穴か? この紋章が目に入らぬか。王宮騎士団所属だ」




 騎士は偉そうに胸を張ったが、ヴィオラはやれやれとため息を付く。




「どうやら話が通じないようですね。あなた方は一体、どなたの命を受けてこちらに来たのかしら?」


「我々に逆らうおつもりですか?」




 騎士達は、腰の刀へと手をかけている。それを見てヴィオラ夫人は眉根を寄せた。




「逆らうも何も、あなた方が陛下の配下ならば、このサクラメントに手出し無用と言われているはず。このサクラメントは秘蹟の地。無駄な争いは己の首を絞めることになりますよ」


ヴィオラ夫人の言葉に、思う所があったのか騎士達は躊躇する。すると騎士達の背後から現れた者がいた。黒いローブを纏った男だ。


「この地が秘蹟の地だろうと、恐れることはありません。あなた方には私や、あの御方が付いています」


「……!」




 騎士達は彼を主人と仰ぐかのように頭を垂れていた。ロータスはあの男に組みしたか。と、忌々しそうに呟く。ロータスは相手に察しがついているかのようだった。黒いローブを深く身に纏った男の表情は窺えなかった。ただ、口元がにやりと歪んでいるのが見えた。その男の指示で騎士らはこちらと向き合った。その行動がどこか機械じみて見えた。




「さあ、目的を果たすのです。サクラメントの魔女など恐れるに足らず」




 男はヴィオラ夫人をねめつけ、騎士を鼓舞するかのようだった。そこまでくるとわたしも何かが始まりそうな気がして、気が気でなくなった。




「ミュゲ。お逃げなさい」


「ヴィオラさまは?」


「わたくしはこのサクラメントの領主です。不当侵入者を前にして背を向けるわけには行きません」


「そんな、危ないです。一緒に……」




 相手は怪しい男に騎士数名。こちらは荒事とは無縁の女領主さまに料理人と、数名の使用人達。どう見ても騎士達に斬りつけられる未来しか思い浮かばない。


 一緒に逃げましょうと言いかけたわたしは、夫人を始め、この屋敷の使用人達が険しい顔付きで、騎士達を見ているのに気がついた。怯える様子はない。今から戦いに赴くような顔をしている。





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