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24話・王宮騎士の来訪




  それから数週間が経ち。何事もなく平穏な日々を送っているわたし達の元へ、王宮騎士団を名乗る騎士数名が訪れた。


 ヴィオラ夫人から聞いた話によると、王宮騎士団はその名の通り、王族に仕えていて王族の護衛や、王宮警備などを行い、地方に足を運ぶことは滅多にないと言う。




 その王宮騎士団がなぜこちらに? と、皆が不安を覚える中、ヴィオラ夫人が玄関先で対応した。普段は調理場にいるロータスも珍しく顔を出してきた。他の使用人達も姿を見せている。ゲッカは身内の不幸があったとかでしばらく屋敷を開けていたので、この場にいなかった。




「王宮騎士団長から、こちらに身を寄せている女性ミュゲさまを、迎えに行くようにと命じられて参りました」


「騎士団長がミュゲを? 書状はありますか?」




 応接間で騎士達を前に、ヴィオラ夫人は困惑していた。使者から書状を受け取るとため息を付く。




「これは確かに王宮騎士団の鷹の紋章ですね。書状に間違いはないように思います。しかし、なぜミュゲさんを登城させなくてはならないのでしょう?」


「実はアガリー魔術師長にある疑いがかけられています。その疑いを晴らすために、彼女にご同行頂きたい」


「疑いとは?」


「それはあなたさまもご存じだと思いますが? ミュゲなる娘の素性について」




 使いの者は無愛想に言い放った。異世界人であるわたしを、素直に差し出せと言ってきているのは分かった。ヴィオラ夫人は相手を注視した。わたしの素性については、アガリー夫妻がきた時に判明したばかりだ。しかも人払いし、防音魔法をかけていたので、誰かが話さない限り王宮騎士団に伝わるはずも無い。




 あの場にいたのは、わたしを含め、ヴィオラ夫人とアガリー夫妻の4人だけ。ヴィオラさまも口が堅いし、アガリー夫妻も話す訳がない。


 そうなると誰かが、わたし達のあの話をこっそり聞いていたことになる。姿の見えない敵を前にしているように思えて、背中がゾクリとした。




「あなた方、ここはどこかご存じ? サクラメントですよ。私が許可しない限り、王族でも足を踏み入れるのを良しとはしません。それは先王陛下の、いえ、先々王陛下から厳命されているはず」


「今回は特別な事例です。素直に従って頂ければ、手荒な真似は致しません。断ればあなたさまも我々に逆らったとして、拘束させてもらいます」


「夫人に対してずいぶんと横柄な物言いだな。王宮騎士団も質が悪くなった。どこの鷹だ? 羽を示せ」




 ヴィオラ夫人の横にいたロータスが腕組みをして聞く。王宮騎士団を前に、一介の料理人がそのような態度を取って大丈夫なのかと、彼らの後ろで控えていたわたしは心配になった。





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