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17話・ヴィオラ夫人の孫娘夫妻の来訪



「お祖母さま~」


「いらっしゃい。ユノ、ノルベールくん」


「お久しぶりです」




 わたしがこの屋敷で保護されて、さらに一ヶ月が過ぎた頃。ヴィオラ夫人のもとを、アガリー夫妻が訪ねて来た。夫人が再会を楽しみにしていた孫娘夫婦の来訪だ。孫娘さんの名前はユノで、その旦那さまはノルベールというらしい。




「こちらがミュゲさん?」


「初めまして。こちらにはヴィオラさまのご好意で住まわせて頂いております」




 ヴィオラ夫人の孫娘ユノは、夫人に良く似ていた。年老いても、容貌が整っているヴィオラ夫人は、若かりし頃は相当な美人だっただろうと思っていたが、ユノを見て納得した。


ユノは薄青紫色した髪に、ヴィオラ夫人と同じ紫色の瞳をした美人。素性の知れないわたしを祖母同様に、警戒する様子はなかった。




「わたしは嫁ぐまでお祖母さまと一緒に暮らしていたから、その後を心配していたの。でも、あなたのような人がお祖母さまの側にいて下さって安心したわ」


「ミュゲさんはとても良い子なのよ。朗らかな子で使用人の皆とも仲が良いし」


「それは皆さんが良くして下さるので」


「ミュゲさんは、すっかりお祖母さまのお気に入りね」




 ユノは親しみを込めた笑みを向けてくれた。その隣には、青黒の髪に金色の瞳を持つ美麗な男性アガリー氏がいて、ユノの夫だと紹介を受けたが、彼は黙って彼女の影のように寄り添っていた。そしてわたしを見る目が少しきついような気がした。


 彼が魔法使いのせいだろうか? 鋭い目つきで、心の内まで見透かされてしまいそうで緊張した。




「二人とも長い移動に疲れたでしょう? 中へどうぞ」




 ヴィオラ夫人は二人を応接間へと案内する。そう言えば王都から二人は来たと言っていた。ヴィオラ夫人から聞いた話では、二人が住む王都からサクラメントまでは片道馬車で一ヶ月はかかると聞いている。その移動だけで大変だっただろうと思った。




 出迎えに出ていた他の使用人達は、二人の荷物を客間へと運び出した。その手伝いをしようかと、後を付いていこうとしたら「ミュゲさん」と、ヴィオラ夫人に呼ばれた。




「何処へ行くの? あなたはこっちよ」


「はい」




 ヴィオラ夫人達の後に付いて応接間に行くと、客人の二人と向き合ったソファーにヴィオラ夫人が腰を下ろし、その隣にと呼ばれた。


 ここで暮らすうちにマナーも学ばせてもらったので、この屋敷のご主人のすぐ隣に、腰を下ろすのは恐れ多いと断ろうとしたら、「いいのよ。わたくしが認めているのだから」と、ヴィオラ夫人に言われてしまった。




「どうぞ。お祖母さまのお隣に座ってあげて」




 ユノからも勧められ、ヴィオラ夫人の隣に座らせてもらうことにした。


 ヴィオラ夫人は、使用人達が二人の荷物を客間に運ぶ作業に追われているので、四人分のお茶を自ら入れるとそれぞれ皆の前に置いた。この場には四人しかいなかった。





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