33話・侯爵夫人の謝罪
「ご不快にさせてしまったようで、申し訳ありません」
「侯爵夫人が謝るような事でもありませんわ」
「でも、私のお茶会でアガリー夫人に対し、あのような発言を求めるような不届き者がいたとはお恥ずかしい限りですわ」
「彼女は見かけない顔だけど、今回が初めての参加者だったのでしょう? 私は特に気にしていません」
「いえ。彼女は出禁にします。我が家が面倒を見ていた男爵家に最近嫁いで来たのですが、あのような無作法を働くとは思いませんでした」
このお茶会のメンバーは、お祖母さまを慕う者が多い。その孫娘である私も恩恵を受けている。王家よりも大事にされているかも知れない。
本来ならばお爺さまが亡くならなければ、今頃、私達は王家の者となっていた。私には王家の血も流れている。それを良く知る今は亡き前陛下は、躍起として第1王子との婚姻を結ばせようとしていた。それは私を王家に迎え入れることで、私達の間に生まれた子に王位を──、正統な血筋の者に王位を返す意味もあったのではないかと思う。
そのような事情は、高位貴族の一部の者しか知らないことだ。大概の者はああいった子爵夫人のように、未婚で身籠もり地方領主となったお祖母さまをどこか馬鹿にしている節があり、その孫娘である私を貶めても良いような発想を持っているようだ。
それがこのお茶会に集っている方々には許せない行為となり、後に自分の首を絞める事になる。
貴族とはそう言う者だ。彼女は言葉の選択を間違えた。並みいるご婦人方の前で余計なことを言ってしまった。それは将来にも影を差す。きっと嫁ぎ先でこれからいい思いはしないだろう。もしかしたら陛下の愛人である従妹にもその影響は出るかも知れない。
そういったことはだから秘さねばならないというのに。どこを勘違いしたのか、彼女は陛下の愛人となった従妹がいる限り強気でいられると思ったようだ。
もしかしたら今の王妃を追い出して、従妹がその座に座れるとでも思ったのだろうか? 両陛下には離婚は認められないと言うのに。
でも、私には関係ないことだ。あとは彼女はそれなりの報復を受け、従妹どのももしかしたら表舞台には出られないような身になるのかも知れないと漠然と思った。