28話・さくらが何者かに狙われた?
さくらが見つかったという気持ちが急いていたせいか、帰りは思ったよりも早い帰宅となり、3週間で王都に着いてしまった。屋敷に着くとすぐに、ノルベールはフィルマンにさくらのことを伝えてくると屋敷を飛び出して行った。これでフィルマンに良い報告が出来ると、浮かれて出て行った彼だったが、帰宅時にはゲッソリやつれていた。
「どうしたの? 何があったの?」
「さくらが何者かに狙われた……」
「えつ? 彼女は無事なの?」
「大丈夫だ。フィルマンに託した」
「良かった……」
さくらの身の安全が知れてホッとした私に、ノルベールは今日一日で起きた事を詳しく教えてくれた。フィルマンにさくらのことを報告すべく、王都の研究室に彼を招き、話をしていたところに、さくらが転移してきたのだと言う。さくらに防犯の為に渡していた、御符のペンダントが発動したらしかった。
「サクラメントに王宮騎士を名乗る者が現れて、俺にある疑いがかかっている。その疑いを晴らすために、さくらに同行を求めたらしい」
「ノルに疑い? まさか異世界召喚の? どうして?」
「さあな。でもヴィオラ夫人が相手方に不審を抱き、さくらを渡すのを断ったら攻撃してきたらしく、彼女が転移して助けを求めてきた」
「それでお祖母さま達は?」
「ご無事だ。すぐに転移して助太刀に向かったら、ヴィオラ夫人と、料理人ぶっている騎士や、腕の立つ使用人達によって怪しい奴らは伸されていたよ。凄いよな。サクラメントの屋敷の者達って。何かやっていたのか?」
「あの方達は、お祖母さまがお爺さまと婚約していた頃からの忠誠を誓う使用人達で、見た目は普通の使用人ぶってはいるけど、実は凄腕の元冒険者だったと聞いているわ。少年の頃やんちゃだったお爺さまが、こっそり王宮を抜け出して密かに冒険者をしていた頃の仲間だとか」
「ひえぇ。0羽根の騎士がいるってだけで凄いと思うのにその上、元冒険者揃いか」
「でも、皆に何も無くて良かったわ。でも、ノルに言いがかりを付けてさくらを攫おうとした者達は、誰の指示で動いていたのかしら? ユグラート騎士団長は関与してないのでしょう?」
「ああ。騎士団長は真っ直ぐな気性だからな。曲がったことが嫌いな御仁だ。王宮騎士を名乗った奴らは拷問にかけると言っていたから、今頃死にそうな目にあっているかも知れないな」
彼はやれやれと言った。幾ら稀代の魔法使いでも、王宮からサクラメントに飛び、再び王宮まで不審人物を連れての転移にはかなりの魔力を使う。かなりの力を使ってヘトヘトの状態なのだろう。