24話・騙し討ちのようなものですが、同意したことになります
「異世界人がいるということは、召喚か何かでこちらの世界に現れたの?」
「俺がある人の願いを叶える為に、彼女を呼び出しました。でも、それは一方的に彼女の都合も考えずに呼び出すのではなく、彼女の同意を得てのことです。それとこの件は、陛下からも一度だけと許可を得て行いました」
「そう。陛下の許可が降りているのなら、わたくしが何か言うことではないわね」
ため息は付かれたが、陛下が認めたことに一領主が何か言える立場でもないと言っていた。お祖母さまにさくらの秘密を明かしたところで、今度は本人が疑問を投げかけてきた。
「同意ですか?」
いつの間に? と言いたそうな顔をしている。あれはやや騙し討ちのようなものだったかも知れないと思っていると、ノルベールが苦笑しながら言った。
「きみがしていた恋愛ゲームだけど、あれに表示が出ていただろう?」
「表示?」
首を傾げたさくらだったが「言われてみれば……」と、呟く。
「もしかして、あれが?」
「きみが選択しやすいように二択にしたんだ。もしも、そこで行かないを選択していたら、こちらの世界にきみが来る事はなかった」
「と、言うことは、こちらの世界は恋愛ゲームの世界?」
さくらは目を丸くしていた。まさか選択したことで、この世界に転移するなんて思いもしなかったのだろう。ストーリー上の展開に繋がるセリフだと思うよねぇ。
「いや、違う。逆だ。あのゲームは、この世界を真似て作ったものだ。きみにこっちの世界に関心を持って欲しくて、俺が作った。そしてきみをこちら側に招いた」
「凄い。あのゲームを作ったのは、あなただったんですね?」
さくらが目をキラキラ輝かせて言う。ノルベールに尊敬の眼差しを向けていた。彼女は純粋にあのゲームを好きでいてくれたみたいだ。
「そうなると本物のフィルマンさまも存在する?」
「ああ。彼がモデルだ。会ってみたいか?」
「はい。是非」
さくらはフィルマンを、気に入ってくれていた。内心、やったあ!という思いでいっぱいになる。これで二人が結ばれてくれたなら万々歳だ。
私達夫婦は早くも、彼女とフィルマンの未来に想いを寄せて盛り上がっていたのだけど、お祖母さまが寂しそうに言った。
「じゃあ、ミュゲさんとはもうこれでお別れになるのかしら? 少し、寂しくなるわね」
その言葉に浮かれていた私達と、さくらは一瞬で静まり返った。ノルベールはその事ですが……と、言いにくそうに切り出した。しばらくヴィオラの元でさくらを預かっていてもらえないかと。しかも、さくらの身元バレを防ぐために今まで通りミュゲとして。
そう言えばノルベールの異世界召喚時に横槍を入れて、彼女をサクラメントまで飛ばした人物について分からないばかりか、どうしてさくらをここに飛ばしたのかその意図もあまり良く分かっていない。
姿の見えない相手をあぶり出す為、ノルベールは、しばらくさくらの記憶が戻ったことを秘しておいた方が良さそうだと判断したようだ。
お祖母さまはお気にいりとなったさくらと、またしばらく一緒に過ごせるとあって喜んでいた。