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プロローグ


彼女を見つけたのは、ほんの偶然だった。


彼女は独り静かに泣いていた。大声を上げるでも無く、泣き喚くでも無く、隅の方でひっそりと。

まるで泣いていることを、他人に隠しているかのようで、自分の感情を押し殺したような泣き方が気になった。


 彼女は夢の中だというのに、思い切り泣けないでいた。それはこの場にはいない、誰かのことを気遣ってでもいるようで、見ていてせつなくなった。


 自分には夢渡りの能力がある。


 夢の中を行き来出来る力。就寝すると不可抗力で他人の夢に入り込んでしまうので、今まで厄介に思っていた。 他の人から見れば、夢を勝手に自分に見られている状態だ。知られたら嫌がられるのは当然だと思い、その場に留まる事はせずにさっさと通り過ぎる事にしていた。


  しかし、彼女のことは放っておけない気にさせられてしまった。そこでうっかり声をかけてしまった。「どうしたの?」と。


 顔をあげた彼女は、真っ赤に目を腫らしていた。


「どうしてわたしじゃ駄目だったの?」



 傷つき過ぎた彼女は、自分という予想外の存在が目の前に現れても警戒することはなかった。答えを求めるように聞いてきた。その彼女は濡れ場カラス色の髪に、アカシアの花の蜂蜜を固めたような琥珀色の瞳を揺らしていた。


それは長雨に打たれ打ち震える可憐な花のようで、思わず抱きしめたい衝動に駆られたが、理性でもって打ち消した。 こんなにも可憐な存在を誰が傷つけたというのか。彼女が不憫に思えた。



「僕はフィルマン。きみの名は?」



 自分で良かったら相談にのるよと言えば、彼女は目元を拭ってポツリポツリと語り出した。その声も見た目に添った可憐な響きで、彼女のことが気になりだした。






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