美化された表向き英雄
「俺に話?」
「うん、二人が聞きたい事があるって」
「何?聞きたいことって」
寝起きフィルはいつもに比べよりだらし無さがでていた。
「3年前の事とフィルさんが人を殺したっ、、」
「悪ィその話俺じゃなくてアイに話してもらってくれないか、」
やっぱり聞いちゃいけない事だった。
キリヤはまだ相手との距離感を間違える事がよくある、しかし今回に限っては完全に地雷を踏んだ。
自身でもこれを聞くことは流石に大丈夫なのかとは思っていたが、行動に移さないと何も起こらない、と、祖父からの教えでまたも行き過ぎてしまう。
「ご、ごめんねキリヤ君。でもこの話は私がするのは違うと思うの、」
アイもこの話を自分からする事は良くないと思っているという事は本当にフィルは人を殺しているのかもしれない。
キリヤは不安でいっぱいだった。
アイも何も話さないと言って沈黙が続く。
5分後
「…………………」
10分後
「…………………」
30分後
「…………………」
1時間後
「…………………」
「まだ話さないのか?」
いい加減腹が減ってしまったのか、フィルが我慢勝負に負け?て部屋を出てくる。
「自分で話をしなさい。あんたもここは隠し事はしちゃダメよ。」
「分かったよ。じゃあ席を外してくれないか」
アイはフィルの指示に従い、外に用事があると言い席を外し隊員の3人で、話をすることにした。
「どっちからだ?空間戦線からか?」
「3年前の方からでお願いします。」
「します」
二人が頭を下げてから、頭を上げフィルは話し始める。
「この闘いは俺はあまり関係ない事だが、クローシス隊員である以上この話はしないといけないとは思っていた。」
3年前の空間戦線の出来事を分かる限りで話し始める。
「空間戦線が始まる少し前にクローシス隊員が、モンスター達を一度全滅まで追い詰めていた。この闘いの約一年位はほぼポータルの出現報告も受けなくなった。これで我々にも平穏が訪れると思っていた。しかし今から3年前、ユーガ区に今まで見た事ない大きさのポータルが発現した。我々もこれが最終決戦だと確信をし、約95%の隊員を派遣して挑んだ。分かるか?3年前だ」
「クローシスが世間に認められた時ですか?」
「そうだ。あの一件はポータルも閉鎖され一般人からみれば我々はまさに世界を救った英雄の様だったのだろう、、しかし実際は我々クローシス隊員の完全敗北だった。あのポータルから帰還した人の人数を覚えているか?」
「46人です。」
「そう。たったの46人。何も知らない人からすると46人は多いと感じる。実際にはポータルにクローシス隊員を約一万の人員がポータルに入っている。そして、一気に人手を失い、モンスターが、日常的に出る様になり、それを生き残った人で救う形になった。」
「ま、まさか」
「そのまさかだ、完全敗北をしたにも関わらず、世間が我々の敗北を美化したんだ、ただの敗北者に、、それ以降は何も知らない人がモンスターを倒すクローシス隊員の姿に憧れる様になり、真実を知らずに隊員になってすぐ死ぬ、しかし、それを名誉ある死と言って、美しさを保ち続けている。もう後に引けない様になっていたんだ。」
「……っ」
あまりに過酷な仕事である事を知ってしまった、キリヤは息を呑む。
だが、そんなキリヤを気にもせず、フィルは話し続ける。
「さらに生き残った精鋭の46人の半数以上は自分が生き残ってしまった事の罪悪感と世間の対応の違いにサイバーズ・ギルドを引き起こして、実質的引退となっている。まともな戦闘員が少ない俺たちは今、モンスターに支配されていると思え。夢のある仕事だと思うな、これが実態だ。」
「わかりました、、、」
クローシスは想像の何十倍、、いや何百倍もエグい仕事だという事が分かった。