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1『ヘルプデスクは西部戦線とともに』

 ジリリン!

   ジリリン!


 数百の電話が一斉に鳴り始める。


「はい、こちら帝国電電公社お問合せ窓口です」


『無線機が繋がらないんだ!』


 僕が電話を取るや否や、受話器の向こうから、男性の悲痛な声が聴こえてきた。


『俺の部隊と通話できないんだ! このままじゃ包囲されちまう!』


「電源は入っていますか?」


 受話器の向こうからは、戦場の悲鳴や爆発音が聴こえてくる。

 僕は震えそうになる声を抑え、努めて冷静に、相手に問いかける。


『電源が何だって⁉』


「落ち着いてください。電源は入っていますか?」


『落ち着けだって⁉ 敵軍の爆裂火炎岩(メテオラ)がひっきりなしに降ってくるような戦場で、落ち着けだって⁉』


「今は、どうか感情は抜きにして。電源は、入って、いますか?」


『入ってるに決まってるだろ! どうすりゃいいんだよ!』


「エラーランプは赤く点滅していますか?」


『してる!』


「再起動を試みてください。主電源を長押しして」


『再起動だぁ⁉ ンなカンタンなことで直るわけないだろうが!』


「再起動してください。早く!」


『クソ、こうしている間にも大切な部下たちが死にかけてるっていうのに、平和な内勤野郎が――あッ⁉』


「どうされました⁉」


『……直った。暴言吐いちまって悪かったよ』


「いえ。ご武運を」


 通話が切れる。

 バカみたいな話だが、こんなのは日常茶飯事だ。


 ジリリン!

   ジリリン!





   ◆





 剣と魔法の世界。

 戦争と専制政治が支配する世界。


 空では両軍の竜騎兵たちが火炎吐息(フレイムブレス)を撃ち合い、地上では両軍の騎兵と重装歩兵と弓兵と投石兵と魔術師たちが闘っている。

 その、帝国西部戦線の地下奥深くに、『西部第(いち)電算室』はある。


 十台のサーバと、

 数百台のパソコンと、

 同じく数百機の電話機と、

 それを運営する精鋭数百名の技師(エンジニア)たち。


 剣と魔法の世界に不釣り合いな超技術。

 それを管理運用する仕事――ヘルプデスクに、苦労人にしてこの物語の主人公ルー・クロウス14歳は就いている。


 ふわふわな金色の短髪。

 大きな二重まぶたの下にある瞳の色は青。

 栄養が足りていないのか、身長は160センチに少し足りない。

 この世界にパソコンやネットワークなる超技術を持ち込んだはた迷惑な異世界転生者が見れば、こう言ったことだろう。





『金髪ショタっ子キター!\\٩( 'ω' )و ////』





 若きITヘルプデスク・エンジニアのルー・クロウス少年は異世界の超技術に振り回されながら、今日も今日とて苦労している。

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